第2話

 2度目は、大学3年生の夏休みにオートバイで北海道まで旅に出た時に起こった出来事である。この時は、群馬県桐生市から国道50号で栃木県小山市まで出て、国道4号で宮城県白石市に入った。既にこの時、日も沈んで身体も疲れていたので、野宿することにした。農道にオートバイを止めて、寝袋に入って寝ようとしたのだが、安心して眠ることは出来なかった。そういうことで、午前1時に白石を出発することにした。再び国道4号を走り仙台駅を目指した。夜が明けるころ仙台駅に到着、眠気に襲われたので駅のベンチで仮眠をとった。数時間後、目を覚ますとお腹が空いていたので、コンビニで弁当とお茶を買ってきて黙々と食べた。そして、どこにも寄らず仙台駅を後にして、北上して青森を目指した。疲れがピークに達したころ峠道が非常に多い山道に入り込んでしまって、少し不安になっていたところで十和田湖に出た。特に感慨はなかったが、ここで休憩できたので僕は非常に嬉しかった。が、明るいうちに青森のフェリー場に着きたかったので、短時間で十和田湖を後にした。

 薄暗くなったころ、漸く青森のフェリー場に着いた。この日は、ねぶた祭りが行われていて、オートバイで引き返してねぶた祭りを見に行った。辺りは、かなりの人でごった返していた。その人ごみの中から、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。僕は、空耳ではないかと疑った。横に目をやると、見覚えのある顔を僕は見つけた。こんな偶然があるのかと、我を疑った。高校時代の友人I君だった。話してみると、I君もオートバイで一人旅をしている途中だと言う。こんな見知らぬ場所で、しかも混雑している人の中で知り合いと出会うなんて、偶然という言葉では語り切れないものを僕は感じた。I君と出会うのは何年ぶりだろうか?

 このI君との邂逅で、僕達2人は高校時代の頃の2人に戻り、お互いが話す言葉も高校の自分たちがいた教室の中で話しているような錯覚にとらわれながら昔を懐かしんでいた。熱の籠った話は、時間の流れを忘れさせフェリーに乗ったのは午前3時過ぎだった。辺りは漆黒の闇と化していた。

 フェリーの中で仮眠をとった。北海道に近づくに連れて寒さを感じた。函館に着いた時は、明け方だった。天気は、曇りだったが北海道という未知の土を踏んだという感慨は二十歳を過ぎたばかりの僕の胸には熱く、人生の大きな出来事の1つであった。

 その後、僕たちは函館の朝市で空腹を満たすため魚介類が沢山入っているラーメンを食べた。それ程美味しいものではなかったが、お腹いっぱいになった。その日は、I君とオートバイで函館巡りをした。五稜郭が一番印象に残っている。歴史に弱い僕にはどういう場所なのかさっぱり分からなかったのだが、歴史に強いI君が僕に一生懸命、五稜郭とは何ぞやと語ってくれたので、日本の歴史を語るうえでもかなり重要な場所だと僕の頭にインプットされたのを覚えている。多分、僕一人で函館を巡っていたら五稜郭には足を運んでいなかったと思われる。

 そして、函館のライダーハウスに泊まった。夜はロープウェイに乗って函館山を登った。そこから観る夜景は筆舌に尽くし難いほどの美しさだった。

 この僕が企てたオートバイでの北海道一人旅は、その後は大沼でI君と別れ、美唄、留萌、稚内、宗谷岬、紋別、網走、羅臼、根室、納沙布岬、屈斜路湖、摩周湖、阿寒湖、層雲峡、美瑛、浦幌、塘路湖、釧路、襟裳岬、支笏湖、札幌、余市、積丹半島、函館と約二週間を費やして達成された。


 この旅で、色々なことを僕は学んだ。でも、一番インパクトがあったことというと青森のねぶた祭りで再開した高校時代の友人I君なのである。本当に人人の山の中でよくもまあ会えたものだと思う。あそこで、会う約束をしていても会うのはかなり難しいことだと今になっても僕は思う。あと、I君と行った五稜郭と夜の函館山はかなり強い記憶となって残っている。


 こうして大学時代に企てたオートバイ一人旅で二度知らない街で、知り合いに出逢うという嘘みたいな出来事が僕の身に起きたわけだが、こういうことは他の人にも起きることなのだろうか? よくあることなら、話しを訊いてみたいと僕は思う。

 

 最後に、言っておきたいことがある。旅に出るということは、普段の生活では感じられない出来事が沢山起きて、自分が試されるわけなのだが、それを乗り越えると喜びに変わる。楽しいことばかりではない。辛いことの方が本当は多いのかもしれない。でも、時間のある人には旅を薦めたいと僕は思う。自分の限界を試せるのは旅をするのが一番手っ取り早いからである。

 

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旅で起こった面白い出来事 沈黙は金? @hyay

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