三
私は次の日も同じ時刻に浜へ行って先生の顔を見た。その次の日にもまた同じ事をくり返した。けれども物を言いかける機会も、
ある時先生が例のとおりさっさと海から上がって来て、いつもの場所に脱ぎすてた
次の日私は先生のあとにつづいて海へ飛び込んだ。そうして先生といっしょの方角に泳いで行った。二丁ほど沖へ出ると、先生は後を振り返って私に話しかけた。広い青い海の表面に浮いているものは、その近所に私ら二人よりほかになかった。そして強い太陽の光が、目の届くかぎり水と山とを照らしていた。私は自由と歓喜にみちた筋肉を動かして海の中でおどり狂った。先生はまたぱたりと手足の運動をやめて
しばらくして海の中で起き上がるように姿勢を改めた先生は、「もう帰りませんか」と言って私をうながした。比較的強い体質をもった私は、もっと海の中で遊んでいたかった。しかし先生から誘われた時、私はすぐ「ええ帰りましょう」と快よく答えた。そうして二人でまたもとの道を浜辺へ引き返した。
私はこれから先生と
それから中二日おいてちょうど三日目の午後だったと思う。先生と掛茶屋で出会った時、先生は突然私に向かって、「君はまだだいぶ長くここにいるつもりですか」と聞いた。考えのない私はこういう問に答えるだけの用意を頭の中にたくわえていなかった。それで「どうだかわかりません」と答えた。しかしにやにや笑っている先生の顔を見た時、私は急にきまりが悪くなった。「先生は?」と聞き返さずにはいられなかった。これが私の口を出た先生という言葉の始まりである。
私はその晩先生の宿を尋ねた。宿といってもふつうの旅館と違って、広い寺の
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