第39話 ゲッチュー‼ スパイダーネット‼
「目玉焼きって卵料理の基本であり完成形よね」
宿屋の朝食は目玉焼きとトースト、ベーコン、オニオンスープであった。
「なんか眠い…うなされちゃった」
クイとココが向かい合って朝食を摂っている。
部屋に戻り身支度を整える。
朝から、よく喋る鞘と剣が喧嘩している。
うるさいのでシャキッと剣を鞘に納めると剣の方は黙る。
鞘を黙らせる術はない。
「胃もたれする感じ…この剣…ホント、無理無理のムリ」
どんな魔剣も黙らせる呪われた鞘『キクりょ』こと『キクリ』正式名称は『封呪菊理姫』と言うとか…言わないとか。
あまつさえ、(無理やり)魔石をはめ込んだ納刀状態では『アンデットキラー』として不死族を昇天させるという、お得な鞘である。
「とても吸血鬼(不死者の王)から、ぶんどったとは思えない機能」
ココが満足げに腰に挿す。
納めた剣は『魂喰らい』の異名を持つ『ソウルイーター・ダレヤネン』そうとは思えないが強い遺恨を剣を封じた自我を持つ魔剣である。
うっかり掠めただけでも命が危うい危険な代物。
JC『ココ・ドコデスノン』のアナルに、しっかり刺さってことで主と認め血の契約は交わされたのである。
「そのことは…語りたくない…」
「ココはJCのくせにアナル・バージンと引き換えに主従関係を結んだんだ」
「うるさいキクりょ‼」
そんな女子ーズの旅は強も続く…。
「たりなくね?」
「………」
『キクりょ』だけは覚えている。
もう一人、あの城に居たことを…。
そして『キクりょ』は知らない、昨夜、何が起こったのかを…。
『ナ・ポリタン王国』の騎士団長であり、仕える『ヒマン王』からココの護衛を仰せつかった男『トマ・トアッカイ』
ココの迷いなき性格にダレヤネンの能力が無双する旅路の道中で、金目当てで仲間となったクイの手加減のない魔法、彼の活躍の場は皆無であった。
しかしながら、その存在感は主にキャンプ飯で発揮され、パーティに無くてはならないはずであった…。
しかし、うっかり吸血鬼に噛まれた彼は昼間に活動できないという身体に…。
昼間は残り物か乾燥した肉となり不満爆発の女子ーズ。
「夕飯遅い‼」
ほぼ夕食は夜食となり、一晩かけて朝食を用意し昼でも食べられる物を用意する生活。
乾いた喉は調理中の動物の血で潤し凌ぎ、その人を凌駕する吸血鬼の能力を発揮するまでもなく、鏡にすら映らない自分の不甲斐なさ。
「せめて処女の血でも飲めれば、あるいは?」
女子ーズの片方はロスト・アナルバージンだし、もう片方の血は、なんか飲んだら毒っぽいし、そんな日々を過ごしていたら…。
「おお…騎士トマよ…昇天するとは情けない…しなくても充分情けない」
腐葉土からの復活に失敗したトマ、暗闇の中にいた。
「………ここは? 暗いだけならまだしも、なんか臭いし‼」
漆黒の世界、漂う腐臭。
「トマよ、ここは不死者の行きつく先…虚無」
「虚無…ってわりに…臭いけど?」
「トマよ、臭いのはオマエだ…皆、迷惑している、ゾンビですら鼻をつまむ始末…ハッキリ言って迷惑です」
「そうか…スメルハラスメントか…仕方ないアンデットだから」
「違いますよトマ、貴方個人の問題ですよ、腐葉土から復活に失敗したからですよ、きっと」
「そっちか…」
トマの脳裏に邪悪な笑みを浮かべたクイの姿が浮かぶ。
「貴方の、お仲間もなんで腐葉土を選びましたかね~?」
「フッ…愚門ですよ、そういう人たちなのです」
「そうですか…トマ、ひとつ聞きたいのですが?」
「なんでしょう?」
「貴方…人に戻りたいですか?
「……はい?」
「ですから、人間に戻りたいですか?」
暗闇に響く声の主が何者なのかも解らぬままのトマに奇跡のクモの糸が降りた。
「戻れるのですか?で、あればぜひ‼」
スムースクリミナルされたけどリボーンできたからナックルパンチをお見舞いしにいくことにした 桜雪 @sakurayuki
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