学生の頃、小説を読んでいて、ちょっとよくわからないという部分に出会ったことはないだろうか。言葉はわかる、シチュエーションもわかるのだが、意味がわからない、なぜそういう解釈になるのかがわからない、というような。その後年齢とともにいろいろな経験や知識を積み重ね、あの頃の本をふと読み返してみると、ああ今ならわかるなあ、という経験はないだろうか。読書好きの人ならきっとあると思う。一方で、若さならではのみずみずしい感性は年齢とともにどうしても乾いてしまうので、文章からダイレクトに受け取る力にほころびが生じているのに気づくこともある。昔はこの部分を読んだだけで、心があんなにも打ち震えたものだったけどな、と。
本作を拝読して、そんな経験を思い出した。何歳のときに読もうと、刺激を受け取ることはできる。同じ本からでも、読み手の年齢によって受け取れるものが変わってくるくらいだから。
そんな刺激を発する文章が、小説が、書きたい――作者様の情熱が垣間見えた、ような気がした。書き手として、至高の望み。カクヨムにいる多くの人が、共感してくださると思う。