第19話 男の娘?
放課後 生徒会室
〈優斗〉
「巻き込んで本当にすみませんでしたぁぁぁ!!」
〈利奏〉
「私も自分のことでいっぱいいっぱいで...謝れなくてごめんなさい!!」
〈如月夏〉
「えぇ!?謝らなくていいよ!結局私もノっちゃってたし...」
〈優斗〉
「いや、悪ノリが過ぎた。肝心の式は大失敗だし、俺に責任がある。何でも、言う事を聞きますので!」
〈利奏〉
「私が如月夏を巻き込んだんだし...私だって...なんでもします!!きさな様!」
〈如月夏〉
「ん〜、じゃあ...私からのお願いは、二人とも、もう謝らないこと。はい、これでおしまい!」
如月夏は"ぱん"と両手を合わせて、この話の終わりと合図をする。
〈利奏〉
「きさ〜!!」
〈優斗〉
「如月夏様〜!!」
女神様だ...!女神様がいるぞ!!
〈旭葵〉
「甘いわね〜、そんなに優しいからそこの二人につけあがられるのよ?如月夏」
もう一人、部屋で俺たちの謝罪を見ていた人物...旭葵に口を出される。
〈如月夏〉
「あはは...そうですね。でも、本当に謝られるようなことはされてないので...」
〈旭葵〉
「この二人に何かされたら、いつでも私に言っていいわよ?」
〈如月夏〉
「そう...ですね。そうさせてもらいます!旭葵先輩、ありがとうございます!」
〈旭葵〉
「私は先輩なんだから、どんどん頼ってくれていいからね!」
〈如月夏〉
「はい!」
〈優斗〉
「ぐぬぬ...」
〈旭葵〉
「有海くん、なにか?」
〈優斗〉
「なんでもないでございます!」
旭葵に睨まれ撃沈。旭葵め...いつ俺を追い出すか分かったものじゃないな。まぁ、その場合100%悪いのは俺だから文句は言えないが。
〈優斗〉
「北条先輩はまだ来てないみたいだけど...今日は来ないのか?」
〈旭葵〉
「胡依美先輩なら、家庭の事情で急遽来れなくなったみたいよ。連絡来てたはずだけど...」
〈優斗〉
「俺、連絡先知らない...」
〈旭葵〉
「あら、そうなの。それは残念ね」
〈如月夏〉
「私から教えるのは...あんまりよくないのかな?」
〈優斗〉
「そうだな。俺的には北条先輩以外から貰いたくない...かな」
〈旭葵〉
「その心掛けは立派ね」
〈優斗〉
「あのー水倉さんの連絡先も知らないんですけど...水倉さん知らないですかね?」
〈旭葵〉
「知らないわね」
〈優斗〉
「...ぐすん」
〈利奏〉
「先輩には、私が居ますよ。ほらほら、いい子いい子〜」
〈優斗〉
「それはそれで恥ずいわ!」
利奏に飛びつきたい気持ちが無かったかと言われると、否定できないがさすがに無理。
〈優斗〉
「そうだ。俺この後用があるから手伝える仕事があったら、早めに言ってくれ」
〈如月夏〉
「お兄さんが用って...今日何かあったっけ...ゲームのイベント?」
〈優斗〉
「いや、ちょっと散歩みたいなもん」
〈旭葵〉
「今日は特に仕事は無いわ。張り切ってるところ悪いけど」
〈優斗〉
「マジか...今日はやらかした分働くつもりだったんだが...」
〈旭葵〉
「じゃあその気持ちは別の日にとっておくこと。そうね、今日はやる事もないし...解散にしましょうか」
〈優斗〉
「了解。じゃあ、用事あるから帰らせてもらおうかな。みんな、お疲れ様!」
挨拶もほどほどに、生徒会室を出た。これから向かうのは、例の入学早々に不登校となってしまった子の家。
住所をスマホで調べてみると...定食屋?が出てきた。名前は『紅葉』と書いている。読み方は...そのままもみじ呼びでいいっぽいな。
場所は...うわ、完全に家の方向と逆だ。
どうやらその子の名前は、
俺はこれから定食屋の息子さんに会いに行くことになる。
実はちょっと楽しみだったりする。もしかしたらこの
そして今日は説得...というより、偵察のつもりで行くことにした。
なので生徒会メンバーは連れていかず、とりあえず俺一人でどこまで進展できるか試してみることに。
俺だけで連れ出せたら万々歳。ムリそうなら早めに引いて、一番ぶつけたいと思えた生徒会メンバーを切り札として後日連れて行く...という算段だ。
そもそもだ。女子トイレに入るようなヤツだ。ヤバい性欲モンスターの可能性もある。
初対面で女の子を連れて行く訳にはいかない。
俺が一人で行くのはそういった相手の査定的な意味もある。
作戦と言える程のものではないし、結局はその場次第だが。さぁ、どうなるか。
⭐︎★⭐︎★⭐︎
電車で10分程揺られ、そこからまた10分程歩き、スマホの地図の場所へと辿り着いた。
〈優斗〉
「おぉー雰囲気あるなぁ」
店前からも美味しそうな良い匂いがする。
定食屋というより、和食屋っぽい感じの店構えだ。外国の人が好きそうな"和"って感じ。俺も好き。
本当にここであってんのかねぇ。しかも客として来たと思われそうだ。
とりあえず立ち止まっていては始まらないので、紅葉の絵が描かれた暖簾を潜って店の中へ。
客はまぁまぁいるみたいだ。用意された席の半分近くが埋まっている。
〈店員〉
「へいらっしゃい!」
〈優斗〉
「すみません、あの...
〈店員〉
「隼人...って大将の坊っちゃんか!大将、おい、大将!坊っちゃんのお友達でっせぇ!」
お友達ではないんだけどなぁ。学年も違うし、まだ会ったこともないし。
まぁでも、いろいろややこしくなりそうなので、とりあえず黙っておくことにした。
と、厨房から大将と呼ばれた頭にバンダナを巻いている強面のガタイの良い人がやって来た。
恐らく隼人君のお父さんだろう。結構ビビる。
〈大将〉
「おぉ、隼人のダチか!来てくれてありがとな!」
〈大将〉
「隼人のヤツ、学校でやらかしたみたいでなぁ。オレが話しかけても部屋から出てこねぇんだ。...本当は、優しくて芯のあるヤツなんだけどな」
〈優斗〉
「俺に任せてください!...とは簡単に言えませんが、話ぐらいは聞いてみたいんです。お部屋に伺ってもよろしい、でしょうか?」
〈大将〉
「おうよ!隼人の部屋は奥の階段から3階に上がったところだ。ダチにしか話せないこともあるだろうしな。隼人の事、頼んだぜ...で、兄ちゃん名前は?」
〈優斗〉
「有海優斗です」
〈大将〉
「頼んだぜ、優斗!」
大将に背中をバシバシと叩かれた。
とりあえずこれで、隼人君の部屋に行くことはできるだろう。
⭐︎★⭐︎★⭐︎
この部屋か。階段を上り、それらしい部屋を見つけた。
ドアを開け...って鍵が掛かってるな。この部屋で間違いなさそうだ。
さぁ、こっからどうするか...って、呼びかけるしかないか。
ドアを3回ノックした後、
〈優斗〉
「すみませーん!蒼桜高二年の有海優斗と申します!隼人さんに会いに来ました!どうか開けてください、お願いします!」
とりあえず部屋越しにご挨拶。
中の反応は......無い、か。
〈優斗〉
「多分知ってると思うけど、始業式に青春宣言とか言ってた恥ずかしいヤツです!君と話がしたいんだけど、開けてくれないかなー?」
...。ダメか。寝ているのか?部屋からは何も聞こえない。
まぁちょっとやそっと話しかけたぐらいでドアを開けてもらえるなら、こんなに問題視されていないだろう。
〈優斗〉
「先に言っておくが、俺は君を笑いに来たんじゃない。これからに向けて、話し合いがしたいんだ」
話しかけると、今度は微かに物音が聞こえた。
俺の話を聞いてくれているのだろうか。まぁ聞いてくれていると思って話すしかないけど。
〈優斗〉
「部屋に一人で閉じこもるよりも、もっと楽しいことがきっとあるぜ?それが君に想像出来ないのなら、俺と一緒に考えよう」
〈優斗〉
「だからさ、話し合ってみないか?俺と面と向かって話し合うのが怖いなら、ドア越しでもいい」
相手の返答を待つ。
すると、人の気配がドアのすぐ前まで来て、ドアの鍵に手をかけ、鍵を...開けなかった。
まだ迷いがあるらしい。でも、もう一押しだ。きっとドアを開けてくれる。
じゃあ、俺からはそうせざるを得ない理由を作ってあげれば良い。
〈優斗〉
「あ〜!なんか隼人の過去のことが知りたくなってきたな〜!下にいるお父さんに聞いてみようかな〜!"小さい時はどういう子だったのー"とか"何歳までおねしょしたのー"とか–––」
–––ガチャッ
〈
「...は、入って、ください」
〈優斗〉
「お邪魔、します」
ドアから出て来たのは、あの大将とは似ても似つかない程に小柄な茶髪の少年。
女の子と間違える...程ではないが、高校生というよりは、中学生と言われた方が信じそうな少し幼い印象を抱いた。
正直どんなヤツが出てくるのかと思ったが、男にこの表現が適切かは分からないけど可愛らしい子だった。
とりあえず、第一の関門は乗り越えれたな。
⭐︎★⭐︎★⭐︎
部屋に入らせてもらい、テーブルを囲んで隼人君の対面側に座らせてもらった。
自分の事でいっぱいいっぱいだろうに、わざわざクッションまで敷いてくれた。いい子、なんだろうな。
〈隼人〉
「なんで...先輩がここに来たのか、聞いてもいい...ですか?」
〈優斗〉
「まぁいろいろとあるんだが、先生に頼まれて、だな」
変に嘘をつくのは良くないと判断した。
〈隼人〉
「そう、なんですか...先輩は、当然あの事を知ってます...よね?」
〈優斗〉
「あぁ、そうだな。でも一つ君の口から聞きたい。わざと、じゃないんだよな?」
〈隼人〉
「っ!はい!!あんな事...わざとしないです!!」
声を荒げて、感情的にそう主張した。まだ隼人君の事を何も知らないけど、その様子からはウソをついてるとはとても思えなかった。
〈隼人〉
「...でも、間違えて入っちゃったのは事実ですし...何より、その...」
急に、もじもじとしだす。
〈隼人〉
「女の人が、怖く、なっちゃって...」
〈優斗〉
「...学校で何か、されたのか?」
〈隼人〉
「直接的には何もされてない...のですが、その、教室に入った時、みんなから視線を向けられたり、女子同士小声で喋ってたり...」
〈優斗〉
「じゃあちゃんと、みんなに謝れたのか?」
〈隼人〉
「謝れて...ないです。女子トイレの個室で、間違って用を足した後、個室から出てすれ違った女の子に叫ばれて...僕も頭真っ白になって...」
〈隼人〉
「その後駆けつけた先生に連れて行かれて、事情を聞かれて...教室に戻されたら、その、さっき言った状況になってて...逃げ出しちゃい、ました」
ポツポツと、小さな声でその時の様子を話してくれている。
確かに、そうなったら逃げ出したくなるのも、トラウマになるのも分かる。だって俺でも逃げるもん。めっちゃダッシュで。
〈隼人〉
「走って、走って、走って...気がついたら、自分の部屋に閉じこもってました。...情けない、話です」
俺も、旭葵を襲った...という表現が正しいかは分からないが、故意でなくても胸を揉んでしまった。
もし旭葵がもっともっと鬼畜な女で、これを大きな騒ぎにしていたら、俺もこの子と同じ様な立場だったかもしれない。
そう考えると、他人事だとはとても思えなかった。
だからこそ、力になりたい。
〈優斗〉
「今までに女子トイレと男子トイレを見間違えたこととかって...?」
〈隼人〉
「ないですないです!そんなこと!でも僕結構おっちょこちょいなところがあって...」
〈隼人〉
「ちゃんと確認したかと言われたら、自信無いです。男子トイレは奇数階にしかないってことを、後から先生に聞かされて知りましたし...」
〈優斗〉
「確かに、去年まで女子校だった弊害が出てるよなぁ。各階に男子トイレがないんだもんなぁ」
そっか。一年の教室は2階だから、トイレに行くには階段を上がるか下がるかしないといけない。
俺は二年で3階の教室だから特に気にならなかったが。
だからって間違えていい理由にはならないが、おっちょこちょいと自称するくらいだし、つい確認を怠ってしまったのだろう。
〈優斗〉
「分かった。もともと隼人君を疑ってた訳では無いけど、信じる。というか、隼人君がそんな事を故意にする人には見えない」
〈隼人〉
「信じてくださり、本当にありがとうございます!でも...クラスの人もそう思ってくれるとは思えなくて...やっぱり、怖いです」
まぁ、そうだよな。俺が信じたところでクラスの友達でもなんでもない。学校に行ける理由にはならないか。
〈優斗〉
「まずは、隼人君が謝らないといけない。先に悪いことをしたのは隼人君だ」
〈優斗〉
「隼人君とすれ違ったという女の子も、君と同様に傷付いているかもしれないし、その子じゃなくても女の子の気持ちになったら、気持ち悪いって思われても仕方ないと思う」
〈隼人〉
「っ!...そう、ですよね。僕は、その...最低な事をしましたし...」
〈優斗〉
「でもだからって、ずっと謝らずにこのまま...ってのは、ダメだと思う」
隼人君が俯いた。耳の痛い話だろう。でもこのまま立ち止まり続けたら、その分だけ辛くなるのではないだろうか。
だから、俺は彼にとって勇気が出てくるような、光となれるように。
〈優斗〉
「明日すぐにでも行けっ!って俺は言ってるんじゃない。それが出来るなら、そんなに一人で悩んでない...よな」
ゆっくりと隼人君が頷いた。
なんか可愛いな。とても男を相手にしてるとは思えない。気持ち的には完全に男の娘みたいな感じ。
〈優斗〉
「少しずつ、女の子に慣れていこう。女の子は恐怖の対象なんかじゃないって事を教えてやる」
〈優斗〉
「明日も、君の家に来る。助っ人を連れて」
〈隼人〉
「は、はい!」
〈優斗〉
「以上、真面目な話は終わり!ってことで、仲良くしよーぜ」
〈優斗〉
「とりあえず、連絡先を教えてくれ。実は俺、男友達居ないんだ」
〈隼人〉
「...本当ですか?」
〈優斗〉
「見るか俺の連絡先。ガチだぜ?」
〈隼人〉
「...いえ。信じます。有海優斗先輩、でしたよね」
〈優斗〉
「お、そうだ!覚えてくれてたか!」
〈隼人〉
「優斗先輩って...呼ばせてください!」
優斗先輩...自分の名前じゃないとはいえ、嬉しい。利奏の先輩とはまた違った嬉しさ。
〈優斗〉
「おう!じゃあ、隼人って呼ぶな」
〈隼人〉
「はい!」
〈優斗〉
「俺たちはもう友達だ。遠慮なく連絡してくれていいからな」
連絡先を交換した。可愛い猫のスタンプが送られてきた。
〈隼人〉
「よろしく、お願いします!」
〈優斗〉
「じゃあ、友達記念に...ちょっとゲームしないか?」
〈隼人〉
「な、何しますか?ゲームは基本なんでもありますよ!」
〈優斗〉
「せ、セマブラしたい!セマブラしよーぜ!」
〈隼人〉
「セマブラ...ですか。最近あんまやってないので僕下手かもしれませんが...いいですか?」
〈優斗〉
「うん!全然いい!よーっし、やるぞぉぉー!!」
⭐︎★⭐︎★⭐︎
〈優斗〉
「.......」
〈隼人〉
「優斗先輩、すごい上手いですね!結構危なかったです」
GAME SETの文字。
そしてファンファーレが流れて、俺の使っていたキャラクターが端っこで対戦相手の拍手をしている。
要するに、負けた。
なんだコイツ!?メチャクチャつえぇぇぇ!
その後も何度かキャラを変えて対戦するも、善戦こそすれど、勝ちには至らなかった。
ここで諦めていれば良かったが、俺はメチャクチャ負けず嫌い。
〈優斗〉
「この手だけは...使いたくなかったんだが...」
〈隼人〉
「え?」
〈優斗〉
「悪いな。先輩として、このまま終われないんだ!」
〈隼人〉
「...なるほど、これはさすがに厳しいですね」
格ゲーキャラ出身の
〈優斗〉
「ドリャぁぁぁぁ!!!」
GAME SETの文字が表示された後、ファンファーレはなく、ナレーターがキャラ名を静かに呼び上げる。
そう俺の使ったキャラの名前を、だ。
〈優斗〉
「はっはっはぁこれがクソキャラだぁ!!」
俺はガッツポーズを決める。ありがとうカズヤ...じゃなかったカズコ。
〈隼人〉
「...負けました」
〈優斗〉
「よろしい!ってもうこんな時間か!そろそろ帰ろうかな」
〈隼人〉
「あ、優斗先輩、勝ち逃げはずるいですよ!」
〈優斗〉
「これが俺のやり方だぁ!!...まぁ、またやろーぜ。今度は正々堂々勝ってやるからな」
〈隼人〉
「...わかりました。絶対ですよ!」
〈優斗〉
「あぁ。男の約束な」
〈隼人〉
「...優斗先輩!」
俺は鞄を持って部屋から出ようとして、隼人に呼び止められた。
〈隼人〉
「今日、優斗先輩が来てくれて良かったです。まだ学校に行く勇気はないけど...でも、こんな自分を変えたいって、強く思えるようになりました!」
〈隼人〉
「優斗先輩、今日は本当にありがとうございました!」
〈優斗〉
「おう。俺こそありがとうな。隼人と居て楽しかったよ」
なんとなく可愛かったので、頭をポンポンと叩いた。あ、やべぇクセになりそう!男の娘って感じだ。全然アリかもしれねぇ!!
〈優斗〉
「じゃあ、また明日」
〈隼人〉
「また、明日!」
そう言って、部屋を出た。俺にとっても同性の友達は初めてで。でも、同姓とは思わせない小柄な体型に、愛嬌があって...。
この子の事をちゃんと知ったら、きっと男子からも女子からも人気になるに違いない。それ故に、早く女性恐怖症を治さないとな。
...隼人の担任の先生は女って都井先生が言ってたな。だから部屋から出れなかった、というのはあるのかもしれない。
階段を降りて、定食屋"紅葉"である1階に着く。客は全席の3分の1程度だ。料理を待っている客は見た感じ...いないな。
今なら、迷惑にならないかな。
夜ご飯には少し早い時間だし、家では如月夏が料理を作ってくれているから、食べてはいけないが...
〈優斗〉
「大将さんいらっしゃいますかー!」
〈大将〉
「おぉ、隼人のダチの!なんのお構いも出来んでごめんなぁ〜。...そんで、隼人は明日、学校行けそう...か?」
小声で、俺に聞いてくる大将もとい、隼人のお父さん。
〈優斗〉
「明日はちょっと厳しいです...女の子が怖い...みたいで」
〈大将〉
「...そう、か。無理言って悪かっ–––」
〈優斗〉
「だから、明日も来ます。来させてください」
〈優斗〉
「明日は女の子に対する隼人の恐怖を、取り除いてやるって、思ってます」
〈大将〉
「...それは、ありがたいが...そんな事できるのか?」
〈優斗〉
「えぇ。いずれ絶対学校に連れて行きます。俺は、隼人のダチですから!」
〈優斗〉
「だから、俺に任せてください!」
〈大将〉
「っ!おぉ、本当に、ありがとう!!...優斗くん隼人を、よろしく頼む」
〈優斗〉
「はい!」
大将と熱い握手を交わして、定食屋"紅葉"を後にした。
⭐︎★⭐︎★⭐︎
隼人の家である定食屋を出て、数分ほど人通りの多い道を歩いている。
駅近という事で、人通りも結構多い。
さぁ、これからがまた大変だ。
出来るなら、明日のうちには隼人の女性に対する恐怖を取っ払ってやりたいが...上手くいくかな...
俺はもう、誰を明日連れて行くか決めた。問題はついて来てくれるかどうかだが...
なんて事を考えていたら...
〈???〉
「おっねえちゃ〜ん!今日の夜ご飯は〜?」
〈旭葵〉
「そうね〜、今日は何にしようかし...ら」
〈優斗〉
「あ」
〈旭葵〉
「げ...」
〈???〉
「ん?おねぇちゃん?このお兄さんと知り合いなの?」
本当に偶然だ。妹と思われる人物と手を繋いで、買い物にでも行く途中だろうか。私服の旭葵とばったり会ってしまった。
エロゲー大好きな俺が新作エロゲーの世界に主人公として転生したのでメタ読みでヒロインを攻略したい だんぼーる @danbool
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