りんごの独り言 🍎

上月くるを

りんごの独り言 🍎




 ♫ わたしは真っ赤なりんごです

   お国は 寒い 北の国 ……



 こんなうたを聴いたことがありませんか?

 そう『りんごのひとりごと』という童謡。


 昭和十五年(一九四〇)につくられたというから太平洋戦争が始まる前の年よね。

 そのころ病床にいた詩人が、お見舞いのりんごを見て歌詞が浮かんだんですって。


 北国のりんご畑から箱に詰められ都会へやって来たという他愛もない内容だけど、曲が短調でもの悲しい感じが日本人の感覚に合ってヒットしたんでしょうね。(^^♪




      🪟




 さて、所変われば品変わるじゃないけど、わたしはそれから八十年後のりんごよ。

 童謡の時代には「紅玉こうぎょく」が主体だったけれど、いまはたくさんの種類があるわ。


 そのうちわたしは「つがる」に属するんだけど、いまの品種は真っ赤じゃないの。

 渋い感じの赤って言ったらいいかしらね、りんごにも時代の流行りがあるのよね。


 で、わたしなんだけど、スーパーの入り口に、六個入りの袋詰めにされていたの。

 ええ、そう、ご拝察のとおり、りんごの仲間ではとても小玉の特売品よ。(笑)


 でも、お味は、立派な見かけの大玉と同じだから、知る人ぞ知るお買い得品よね。

 ここんちのオバサンもうちら「つがる」がお気に入りでね、いつも買ってくれる。


 だって、オバサン、ひとり暮らしでしょう? 大玉は食べきれないっていうのよ。

 うちら小玉りんごを丸ごと洗って四つ割りにして、二日かけて少しずつ食べるの。


 そうね、毎年、この季節には、オバサン、りんごを食卓にのせない日はないわね。

 むかしから「医者いらずと言われる」ほど薬効の高いのがうちらですもの。(*'▽')


 


      👩‍🦰




 おやまあ、オバサン、今日はとりわけごきげんで、なにか口ずさんでいるみたい。

 ちょっと聴いてみましょうか……あら、替え歌かしら、あの戦前の童謡の。(^^♪

 


 ♫ わたしはスーパーのりんごです

   袋にぎゅうぎゅうに詰められて

   

   買われて来たのよ オバサンち

   成りは小玉だけど栄養たっぷり


   りんご薬剤師としてオバサンの

   冬をしっかり守ってあげるのよ

   


 元歌を知らないから、メロディが合っているのかどうか、分からないけど。(笑)

 まあ、オバサンが朗らかで健康なら、それでよしとしておきましょうか。(^_-)-☆




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