魔法少女とちょっとのアタシ
「よし美々、りりな! その子のサポートして!」
「……今なら空だって飛べそう」
魔法少女に憧れていた。
なったのか? 自分が?
可愛い服に可愛いステッキ。
幼い頃に夢見た通りだ。
「キミ名前なんて言うの!」
「はっ……!」
状況を飲み込まなければ。
屋上にりりなと他二名、上空にはさっきの蝶!
りりなともう一人の生徒は蝶に攻撃を、制服ではない女性はこちらへと駆け寄ってくる。
「あ、明星ありあ」
「ありあ! あなたは選ばれし少女なんだよ」
アタシの右手をステッキごと蝶の方へ向けた。
「魔法少女の魔法はキミの想像次第。あの怪物を倒すにはどうすればいいと思う?」
あれを倒す……。
軽く深呼吸をした。
「アタシなら!」
ステッキから渦上の光が湧き出る。
渦はアタシの右手を包み込んでいる。
「上から潰す!」
隣の女性が手を離すと、右手は真っ直ぐ上に上がり、再度蝶へと切先を向ける。
「わっ!」
何かが出る衝撃で体が後退する。
ステッキから出た光は丸く薄い物体となり、蝶を上から押し潰した。
◇
「ラッキー! こんな短期間で二人も仲間が増えるなんて」
旧校舎の地下、バブルさんが隠れ家にしている場所だ。
そのバブルさんは随分と浮かれている。
反対に実聡先輩は難しい顔をしていた。
「他に聞きたいこととかある?」
「ないですよ! これからよろしくおねがいしますねぇ!」
私は部屋に着いてから隣の彼女が気になっている。
さっきあんなことを言ったくせにもう感情が変わっている。
少しでも素を見せて欲しい。
「その魔怪? が出たら倒せばいいんだよね!まかせてまかせて!」
眼鏡を拭く。
私の目は周囲の妖精を写す。
魔力の高い人の周りに集まる妖精はその人に影響を受ける。
あまりやりたくないけれど、少しだけでも彼女の内面を……
裸眼で彼女を見る。
周りの妖精たちは……
あっ……
「ありあちゃん! まだ聞きたいことあるのでは?」
「……りりな?」
「あなたはさっき私たちを似た者同士だと言ってくれました。でも私はできれば本当の私も見て欲しいです」
ありあの視線が下に逸れる。
「バブルさんと実聡先輩なら大丈夫ですよ。二人とも変人ですし」
「おっとー? 聞き捨てならないぞー!」
「バブル様だけならともかく私も?」
「だから少しだけでも本音を出してみてくれませんか?」
本音?
周りの顔を見る。
一名を除き、アタシの発言を待っている。
「……くだらないことでも、いいですか?」
「はい!」
花園りりなは不器用だな。
「魔法少女になれて……嬉しい……」
制服の裾を、ギュッと握った。
◇
「あと美々先輩ってどんな魔法使うの? 今日アタシが使った魔法みたいなやつ! 教えってほしいでーす!」
あれから1時間、三名は質問攻めにあっていた。
「話したくありません」
「魔法少女の魔法はキミ次第なんでしょ!? それぞれ使えるものが違うならちゃんと共有しなきゃなのですよ!」
オレンジのキャラがもう刷り込まれてるみたい。
すぐにあの喋り方に戻ってしまった。
「りりなも癖強いけどそれ以上だねー」
「私は普通ですよ。そういえばバブルさん」
「んー? 何?」
朝から気になっていた。
「どうして魔怪が来ると分かったのですか?」
「ああそれか」
説明がめんどいな、とでも言いたげな表情をしたがすぐに口が開いた。
「勘だよ勘」
「勘……ですか?」
「実はウチ記憶喪失でさー」
記憶喪失!?
「なんですかその重要情報! 先に言ってください」
「重要でもないでしょ。美々は記憶なくなる前のウチのこと知ってるみたいなんだけどよく教えてくれないし」
バブルは不満気な顔になった。
「だからなんで分かんのかも分かんない! ただ魔怪が危ないやつだってことは理解できるっしょ? そんだからウチらは戦ってんの!」
ニィーと彼女は笑って見せた。
不安だ。
ありあを巻き込んでしまったからだろうか。
私のなかで不安が渦巻く。
一度、家に相談するべきか?
お婆様なら魔怪のことも知っているかも……
「魔法は緊急時だけだ。そしてその場合でお前が魔女の家系だと知られたら……」
駄目だ。
「即刻家に戻ってもらう」
せっかく仲良くなったのにここでお別れになってしまう。
二体しかまだ戦ってないけどどっちも私だけでも解決できる強さだった。
大丈夫だ、悪いことなんて起こらない。
とにかく今は……
「りーりなー! レッツイートカリー!」
「……はい!」
できることを。
魔法少女は何と戦うのか 花ノ宮 紺梨 @otoriemu0909
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