私の友達は
神楽咲久來
私の友達は
「行ってきまーす」
身支度をして、玄関のドアを開ける。
左手に持っていたパンを一口かじる。
登校しながらパンを食すのは、私の最近のマイブームだ。
右手でブレザーのポケットに手を突っ込み、スマホを探す。
スマホを片手に、そのまま歩み続ける。
スマホでニュースを確認する。その一面にはこう書いてあった。
『交差点前でひき逃げ事件。犯人は未だ見つからず』
「あぁ、まだ見つかってないんだ」
つい先日起きたひき逃げ事件。
被害者はとある女子高生だ。
まだこの子にも未来があっただろうに。
交差点前にたどり着いた。
「おっはよ~! いい天気だね!」
茶髪のショートボブの少女が笑顔で肩を押す。
「ん。おはー。あとそれ車道に飛び出すからやめて」
「まーね。確かに車に轢かれたら痛いよ~?」
「はいはい。せいぜい気をつけますよ」
彼女とはいつもここの交差点前で待ち合わせをしている。
別に大きな理由があるわけではない。ただ自然とこうなっただけだ。
信号待ちをしている間、彼女はしつこく話しかけてくる。面倒なので返事はしない。
「信号変わったよ」
彼女は私の肩を叩き、信号を指差す。
見上げると、いつの間にか青信号に変わっていた。
左右を確認し、横断歩道を渡る。
「さてと。今日の時間割は・・・・・・」
スマホを操作し、時間割表のデータを探す。
「へー! 体育じゃん! いいな~」
「勝手に覗かないでよ・・・・・・」
イヤホンを耳に挿し込み、音楽を再生する。
「そんなに冷たくしないでよ? 私何かした? 何かあったら謝るからさ~」
「もう既に君は冷たいでしょ」
「・・・・・・うん」
そのまま私たちはたわいも無い会話をしながら、学校へと向かう。
「有栖、おはよう」
「ん、おは~」
もう一人の少女が、私の頭に手を乗せる。
「一緒に行こうよ。お前も一人じゃさびしいだろ?」
「・・・・・・・別にさびしくないよ」
男っ気が強い少女を軽くあしらうが、それでもめげずに話しかけてくる。
「嘘だろ~? 本当はさびしいくせに。あとさっきからお前、誰と話してるんだ?」
「・・・・・・誰だろうね」
私は彼女を置いて、学校へと向かった。
私の友達は 神楽咲久來 @HINASUN
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