不の生殖器

 あれから多くの人々の願いを受けてそれを叶えた。

 私の祠にはお礼にもらった代償それらが散乱する。

 代償それらは白く色が抜け、徐々に風化し始めていた。

 そんな私の元に今日も誰かがお願いをしに来た。

「あの! あなたが女神様ですか?」

 そう訊く女に私は縦に首を振る。

 そうすると、女は目を煌びやかにして私に手を合わせる。

「どうかお願いです! あの方が奥様と別れるようにして下さい! 私、幸せになりたいんです!」

 どうやら、女はとある男と不倫関係にあるらしい。

「ふぅん分かった〜。それじゃあ、明日にはその人が別れるようにしておくね〜」

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」


 その晩

「や、やめてくれぇ!」

 そう男は地を這う。

「え〜でも、とある2人からのお願いだしな〜」

 そう言って、男の脚にナタを振り下ろした。

 男は暗闇の中で痛みに悶えながら私から逃げた。

「ふふっ。逃げられないよ〜」


 翌朝

 再び、女が祠に姿を現した。

「ねぇ! どういうことよ!」

「どういうことって?」

「あの方が死んだって! どういうことなんですか!」

「私の旦那と息子も死んだってどういうことなんですか!」

「えぇでも、奥さんも不倫相手さんも"幸せ"になりたかったんでしょ〜」

「そうだけど! あの人とよ!」

 そう女が言うと、奥さんは握り拳で女を殴った。

「痛っ! 何すんのよ!」

「あんたが! あんたが! あんたが旦那と息子を殺したんだ!」

 そう言いながら、奥さんは女を押し倒し、馬乗りになって髪に刺したかんざしを抜き、女の下腹に向けて振り下ろした。


「ふふっとっても美味しかった〜」

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