器の腕

「ここ最近は外が騒がしいな〜」

 私の住む祠の外からは金属が擦れ合う音、肉を斬られ骨を断たれた人の嘆声たんせい

 それらを耳にして私は1人悶々と天井を見ていた。

「あ〜外出た〜い! 美味しいもの食べた〜い! ついでにお願いも叶えた〜い!」

 そう祠の中でゴロゴロと転がった。

 それくらいなら自由に祠を出てやればいいじゃないかと思うかもしれないけど、私はお願いされない限り外に出ることができない。

 祠も深く掘られた洞穴に崩れないように頑丈に建てられた岩壁が剥き出しの暗い場所だった。

「やっと見つけた!」

 その声に反応して私は座り直す。

「なんだ〜人間か〜。何の用? 何もなければ、何かお願い事だけして帰ってよ〜」

「そう! あなたにお願いがあって来たんだよ!」

 その言葉を聞いてグッと男に近づく。

「それでそれで! お願いを聞かせてみてよ!」

 そう迫ると、男は引き気味な表情をする。

「あ、あぁ。新しい武器が必要で……次の戦までには用意したいんだよ! お願いできるか?」

「いいよ〜」


 1週間後

「おい。お前、大丈夫か?」

「あ、あぁ腕がなくても脚がありゃなんかやれるさハハハッ」

「でも、お前が用意してくれたこの火縄銃のおかげでこの戦いを圧倒的に制することができたんだ。きっとお前はお褒めの品を頂けるぞ」


「は〜、美味しかった〜。でも、惜しかったな〜外に出るお願いだったら良かったのにな〜」

 そう言って、血の滴る骨をポイっと背後に投げ捨てた。

「次のお願いは何かな〜。ふふっ」

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