悲憤慷慨

ひふんこうがい/自らの運命を嘆く


「陛下。どうかご聖断を。核シェルターを用意してございます。そちらに避難して頂きたいのです」

「いいえ。私は、ここに残ります。ここに残って、すべてを見届ける義務があります。わたしは神ではない。人間です。そうする義務があるのです。どうかご理解ください、首相」

「陛下……」


 しかし。


 そのときだった。天から、何者かが東京に降り立った。


 最初は、小さな粒のようだった。それが、見る間に巨大化する。凄まじい変身であった。


「デュアッ!」


 GAIは炎を放つ。だが、どういう原理になっているのか、光の巨人は一瞬で焼き払われたりはしなかった。炎など通じないかのようだ。そして、人間で言えば素手での攻防、つまりは打撃戦が始まる。


「シェアッ!」


 GAIも徒手で応じた。取っ組み合い、と言うような様相だった。だが、GAIよりも光の巨人の方が、明らかに戦い慣れているという雰囲気を持っていた。彼は、あるいは彼女であるかもしれないが、このような戦いを過去に何度も、経験しているのだ。そう思わせる動き、身のこなしであった。


「シュワッ!」


 やにわに十字に組まれた光の巨人の手から、光の刃が放たれる。GAIは地に倒れ伏し、最後は爆発した。それまでの彼の地を焼き尽くす炎に比べれば、ほんの小さな爆発に過ぎなかった。後には、骸すらも残らなかった。GAIは死んだのだ。或いは、そうでなくとも、この地上からは消え去ったのだ。


「陛下。救われました。人類は、そして我が国は、どうやら救われた模様です」

「おお……何ということか。わたしの生涯で、二度までも。この国は」


 まさに鎧袖一触。されど天涯孤独。かくも傷天害理。しかして悲憤慷慨。


  GAIは滅び、人類は復興の端緒へと着いた。未来へ。

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GAI/Gingerly Abominable Incendiary きょうじゅ @Fake_Proffesor

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