note.3「結び」
page.12「家主と引退ヒーロー」
ヒーロー。
誰もが憧れ賛美する、平和の象徴。
強靭な肉体。
広くて強く、熱くて透明な心。
世界を照らす
誰しもに手を差し伸べ、人々の笑顔と未来を分け隔てなく守る、模範、理想の体現者。
じゃあ。
もし、そんなヒーローが、その力を失ったら?
その
そもそもの正体からして。
てんで知名度も市民権も
単なる、しがない、ご当地ヒー
ローだとしたら?
その成れの果てが、どうなるのか。
答えを、
目の前に横たわる父、
「……ああ。
来たのか」
「……それ、俺の
父さん」
弟の結婚式を午後に控えて。
会場近くのホテルに前乗りし、スタンバろうとしていた矢先に。
病室で待っていたのは、実の父。
脳梗塞により引退、車
それまで家族、お子様の
おまけに、「
価値観が頗る古く、下半身麻痺の
そんな調子なので、
後妻である
その父親が、今。
いや……それどころか、弟の住む福島に、
それも前述の通り、
「来て損した。
「まぁ……じゃなきゃ、こうして運ばれとらんし」
「
して、
最近は、どうだ?
彼女さんとは、
「まぁ……」
「そうか。
早く復職、結婚しろ。
所詮お前も、俺と同じ『負け組』。
一度も、本場での仕事を
本物になれ損なった、『2軍』だ。
才能が
引き際だと弁え、もっと真っ当な道を選べ。
適当に、分相応に生き、地盤と身を固めろ。
お前には、あの
お前は、
あいつのが
どういう意味だ。
つか、ちょっと施し受けた
大体、今、あんたが再婚
老犬みたいな状態の
相変わらず、
初期エンデヴァ◯と蛮野を足して2で割らなかった
そう切り込もうとするも、
「……否定は
確かに、俺は
虚◯さんみたいに一発当てて、メイン・ライターさせて
あまつさえ今となっては、
ホント……
『俺が書いた作品をグッズ化させて、コレクターの父さんにプレゼントする』。
なんて大見得切っといて、この体たらくだなんてさ」
「気にするな。
最初から、当てになんてしていない」
「それはそれで、どうなんだ……」
フォロー力と気遣いの
まぁ、離婚して数ヶ月で変わる方が、
「これでも、惜しい所までは行ったんだぜ?
大人向けだし、公認様ではないけども。
ちゃんと、ドラマの脚本、任せて
っても所詮、パイプ頼りだけどさ。
それでも、ノリノリで執筆したし。
コンシューマ版だけど、動画配信もされてた。
評判も上々だったから、ありがたい
でも、フイにしちまった。
そう思うと、
非情に、本物に、プロになり切れなかったんだよ」
「……
俺の
まるで、
お前のが、お似合いなんじゃないか?」
「いや、
関係
この件とも、俺とも」
思い返してみれば。
この時点で、
いや……普段の
自分より
3周りは離れてる新妻を、デレデレした顔で「
還暦にまでなって、まだ現役で居続けようとしてる。
入院中にお世話になった枯れ専ナースと後に結婚し、退院後もお世話され、ニヤニヤしてる。
そこまで女性に興味津々な、自称・話上手の、馴れ馴れしいナルシスト。
そんな父による、弟の奥さんへの名字呼び。
そして、
これまでの、
彼女と
「でも……『家族じゃない』って……。
……
「誰が、そんな、どごぞの
『
「ーーあ」
点と点が、重なり。
伏線が、命と意味を取り戻し。
「おい……!!
まさか……!?」
「……やはり、知らなんだか。
まぁ……言う
それにしても……お前は、
一番知りたくなかった真実を、明かされるとはな。
それも、
そんな胸中を知ってか知らずか。
「おかしいとは思わなかったか?
ただの一度も考えた、勘繰った
あれだけ自由奔放に、やりたい放題に動ける小娘が。
一人じゃなくなるだけで、あそこまで、コミュニケーションが下手になるのか。
普段の言動から、
親類以外となれば、その原因の候補者、該当者は、果たして誰なのか。
その答えを、教えてやろう」
横目で
枯れかけた目を不気味に光らせ、
「俺だよ、
俺が、あの小娘を、そうさせた。
心を
俺こそが、その張本人にして真犯人。
一連の騒動の、諸悪の根源だ」
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