page.9「障害と元カノ」
「誰かとの食事が
数分で安定させ、彼を寝かし付けてから。
後ろめたさにより、居間で正座中の
「一因は、彼の両親。
知っての通り、二人は
価値観や見解、期待と希望の相違。
それらが引き金となり、二人は兼ねてよりバチバチしていた。
で、『兄弟が自立し、結婚するまで』という条件で、首の皮一枚
まぁ……父親が下半身不随になったから、それを早めたんだけどね。
そんな
それはもう、家族で
壁に背を預け、皮肉たっぷりに。
「考えてもご覧なさい。
そんな地獄で食べるご飯が、
そもそも、
答えは、『ノー』よ。
1秒でも早く、その場から
現に、
けど、捻じ伏せられたの。
『家族は、食卓を囲うものだから』って。
そんな、固定観念でね。
自分達の
『結婚、夫婦なんて
その癖、子供には、二言目には結婚を催促する。
まるで、踏み倒さんとする人間を追い掛けでもしているかの
憐憫と嘲笑の混じった笑みを浮かべ。
腕を組みつつ、
「おまけに現在、
つまり、『自作の声が聴こえない』状態に有る。
キャラや背景のイメージは
設定を練ったり、独白なら書ける。
けど、
口パクでしか、シーンが脳内再生されない。
計算しないまま書けていた
しかも自分の担当分野は殊更、
だから、彼は筆を折るに至った。
そして今、実家帰りを余儀なくされ、ここでリハビリ中って
彼の父親みたいに、車椅子生活とかでもないのにね。
本人は今、新しい奥さんと、呑気に世界旅行なんて行ってるけどね。
自分がどれだけ、
彼が書けなくなった背景にも、決して少なからず関与してるのに。
それを知った上で、我関せずと、余生を満喫してるけどね。
吐き捨てる
腰に手を当て、
「どう?
これが今日、
今の
その理由は、簡単。
『
残されていた
用意されたご馳走が
本来なら、自分勝手、勘違いも
2階で寝ている
「自分でも用意
私の叩き込んだ、胃袋を掴んだ、慣れ親しんだメニュー。
それなら、
それも、心の準備が
でも、今回は違った。
昨日、あなたが振る舞った料理は、その中のどれでもない。
唐突で、おまけに絶品だった。
もっとも、感覚が
さも、業務連絡でもするかの
ここまで来ると最早、冷製である。
てっきり、
「
それを作ったのが、あなただと判明し。
そのあなたと、今度はイショクジする
両親とのトラウマも連れて、ね。
結果、またしても彼は、脳内での言葉を失う。
けど、そんな実情を知らなかった、あなたを悲しませたくもない。
その二律背反に追い込まれた結果。
自衛本能の働きにより、倒れたって
まぁ……本人に聞いてない以上、
やっぱり、あなたに頼って正解だった」
「……っ!!」
ここに来て、
「……
……一体、
あなたの、元カレさんの話なんですよっ!?
ひょとしたら、手遅れだたかもしれないんですよ!?」
立ち上がり、詰め寄る
一方の
「驚いた。
あなた、無口ではあるものの、
やっぱり、言葉の喪失が顕著なのは、
「どうでも
今、そんな
胸倉を
「私を、ここに招いたのもっ!
訪問日を、昨日にしたのもっ!
そんな危険な状態の
全部、あなたの差し金じゃないですかっ!」
「仕事だったのは事実よ。
その間に、
連絡だって、マメに取ってた。
それに、必要な工程でもあった。
私は、あなた
結局、彼を甘やかしてしまう。
ここまでの荒療治を成し遂げるには、どうしても必要だったのよ。
甲斐甲斐しく彼をお世話しても
新手の協力、実力者が」
「それだけじゃない!
あなたは昨日、
あの時、レーダーで探知して、予測してたんじゃないですかっ!?
ここを訪問した
その
それて……私達を利用した、裏切てたて
あなたの元カレさんを、意図的に苦しめたて
「だとしても。
確かに、あなたを差し向けたのは
そこまで仕向けたという、確証は
「〜!!」
こんなダブスタ人間が、ここまで身近に実在していようだなんて。
怒りと悲しみを通り越し。
「……
あなたは、私達の。
それとも……敵ですか?」
「……そんなの、決まってるわ。
その
「……『調整』?」
「そうよ」
再び壁に背を預け。
畳を眺めながら、
「
男を屈服させるのが、好きなの」
「……はい?」
いきなり、
と、衝撃発言に、
そんなのお構い無しに、
「惚れさせて、擦り寄らせて、骨抜きにする。
それにより、
レゾンデータル、アイデンティティの確立に
新しい
けど、男女の愛なんて所詮、一過性。
放たれて、飛び散って、やがて消える。
そんな、花火みたいな物。
それが
2次元なら合法的に、複数の男と関係を持てる。
ここなら、一般向けよりも長く、広く、深く、仮想の男達と
「……はぁ……」
「そんな中、友達に声を掛けられたのよ。
『どうしてもお見合い相手になって
その
前にベンチで横になっていた所を、旅行中の彼女に、施術で助けて
で、それからはすっかり、彼女のファンになってね。
彼女に解されたいが
彼女も彼女で、
旅行がてら、
そんな彼女が、
「……
フィンガー・スナップを決める
大和撫子モードでも
「断った結果、関係を断たれるのも迷惑。
だから
でも、やるからには、撃墜女王のプライドを賭ける。
だから、徹底的に調べ、作り上げた。
彼の趣味、タイプ、ストライク・ゾーン、セーフ・ライン、パーソナル・スペースフェチズム、シチュ、口調、口癖、一人称に至るまで研究し。
wikiやシブ、ホームページや過去のインタビュー、これまでの作品まで具にチェックし。
「うわぁ……」
「私に馴染ませるべく、活動拠点を仙台に移し。
叩き上げの新設ゲーム会社に、自分を売り込み。
実力と実績を武器に、仕事を勝ち取り。
ゲームと一緒に、彼と接点を作りつつ、免疫と経験、コネを持たせ。
あくまでも、『直前に聞いたばかり』という雰囲気を装って、シンパシーを覚えさせ、油断を誘い。
気を合わせ、気を持たせ。
そうして、射止めた。
で、適当にフッて終わらせる予定だった。
にも
意図的に意気投合したのに、それとは別に受け入れられてて。
「それ、って……」
「『罰当たりな八つ当たり』。
最低でしょ?
控え目に言って。
確かに、ここまでは彼も知らないし。
訴えられたら、
っても、あいつなら、それすらも許容してくれそうだけど」
「ま、まぁ……」
事実なので、
「またしてもロープレするのが億劫になったのか。
もしくは、ずっと、すっかり
それとも、適齢期特有の焦りか。
はたまた、朗読すると決まって赤スパが飛ぶ、
結局の所、真相なんて定かじゃないわ。
けど、答えなんて
あいつを治す
あいつを解き放つ
ただ、それだけよ。
これで、満足?
あなたの、
「……」
悪びれも
依然として、その偽装っ
「でも……。
……だたら、どうして、別れたんですか?」
「
あいつを、自由には
あいつの自堕落
入れ込み
そんなイエスマン状態で、『恋人』だなんて言える
だから、風穴だけ開けて。
後に爆薬にする
あいつの心に侵入し、内側から直してくれる、新風を招き。
9回裏逆転満塁ホームランばりの、チート・デイを期待した。
仕事も終わらせつつ、立ち返って見詰め直してた。
っても、離れられないから、『同居人』の肩書きは残したし。
後ろ髪引かれたくはないから。
あいつに、髪を切らせてやったけどね」
「あなた、て……。
……とんでもない人ですね」
「そうよ。
現世に再臨した、魔女よ」
「……
「キャッチ・コピー。
今、適当に考えた」
「あははっ」
知らぬ間に、笑ってしまっていた。
と同時に、確信した。
「
私が、
「当たり前じゃない。
願ったり叶ったりよ」
「で、でもっ!
形式上は、お二人は今、お付き合いしてない
その
「杞憂よ。
あなたは、
でも、そうねぇ。
「『ライバル』として、改めて歓迎するわ。
あなたは、あくまでも、
あいつにとっての
でも、まぁ……それでも奪い去りたいってんなら。
そしたら、もう勝手になさい。
叩きのめす、まだのめす、さらにのめす。
それが、ファイナリストよ」
パキポキと拳を鳴らす
その
「さて、と。
ここからが本題よ、
今から
あいつを救う
心して、聞くのね」
「……はいっ!
ただ、どうやて……?」
「簡単よ」
再び2階、
「
あんたは、『狭く深く』。
それが、
この地の利を活かして、あいつを陥落させるのよ。
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