page.6「家主とWガチ勢」

 みそぎと言わんばかりに、川へと放り込まれた一楽たから

 彼は今、木で即席した竿でみずからを釣り上げた謎の少女と、行動を共にしていた。

 ちなみに、くだんの少女は、焚き火で一楽たからの服を乾かしてくれている。



「どうぞ」

「あ、ありがとう、ございます……」

「敬語じゃなくていです」

「あー、そう?

 じゃあ、遠慮く」

「はい」



 最近、女子高生の間で、「キャンプ」がブームにでもなっているのだろうか。

 そう思いつつ、彼女が渡して来た服を、一楽たからは大人しく受け取った。



「ところで、君は?」

日明たちもり 月星つくし

 樂羽このはの、スマートな妹。

 っても、義妹ですけど」

「義妹?」

「元は、幼馴染だったんです。

 でも、数ヶ月前に、両親が蒸発して。  親戚にたらい回しにされそうになっていた窮地を、近恵このえさん。

 樂羽このはのお母さんが、スマートに拾ってくれたんです」

「……い人だな」

「はい。

 この御恩は一生、忘れませんし。

 一生賭けて、スマートにお返しする所存です」

「そっか。

 君も、立派だね」

「普通ですよ」

「そこら辺は、話すと長くなるから割愛するとして。

 ところで、日明たちもりさ……だと、紛らわしいな」

「『月星つくし』でいです。

 その方が、スマートです」

「ありがと。

 じゃあ、月星つくしさん。

 君は、どうして、ここに?」

「『さん付け』ですか。

 律儀と取るか、ヘタレと取るか。

 審議ですね」

「今は、ひょんなことからハラスメント扱いされる、ハラハラした時代なんだよ。

 是非とも、前者でお願いします」

「前向きに検討します。

 ちなみに、『月星つくし』って名前も今年、付け直したばっかりです。

 名前の由来は、『美しい』『牧野つ◯くし』。

 ようは、玉の輿狙ってるからです。

 また、『星月しづく』にしなかったのは、『メソメソしてそうだから』との理由です」

「わー。

 設定からコピペ、加筆修正したみたいな、説明台詞ゼリフー」

「現に、そうですし。

 で、私が、ここに来た目的でしたっけ?

 樂羽このはの付き添いですよ。

 あの子を一人で野に放つのは、あまりに心許こころもとなかったので」

「まぁ……。

 ……うん……」



 全面的に同意する他一楽たから

 月星つくしも、かすかに笑った。



「ていうのは、建前で。

 本当ほんとうは、あなたに会いに来ました」

「俺?」

「はい。

 樂羽このはに仇なす、害をなす蛆虫うじむしやもしれないので。

 僭越ながら、スマートに抜き打ちチェックをと」

「化けの皮、メッキ、剥がれたなぁ」



 割と過激なガチ台詞セリフを受けてなお、飄々とする一楽たから

 そこら辺に関しては仲音なことによって、普段から鍛えられている。



「で?

 結果は?」

「人格:『8』

 見た目:『8』

 声:『10』

 モラル:『7』

 好感度:『9』

 貢献度:『0』

 度量:『10』

 財力:『5』

 生活力:『2』

 住居:『10』

 将来性:『8』

 アドリブ力:『0』

 以上、『120点満点』で『77点』。

 スマートさには欠けますが。

 限り限りギリギリ、赤点を逃れました。

 おめでとうございます。

 今後、ますますの働き、成長に、期待します」

「わー、シビアー、ウルトラ通信簿みたーい、うれしくねー」



 存外しっかり見られていた上に、落第点スレスレらしい事実に、驚きを隠せない一楽たから

 祝福する気のい拍手が、より残念さを醸し出していた。



「それはそうと、一楽たからさん。

 誠に勝手ではありますが。

 あなたの作品、一読させてもらいました」

「……18禁だけど?」

「ええ。

 だから、叔父様が無断で、ネタ目的で、あなたの自室から拝借した分。

 すなわち、あなたの過去作を」

し。

 今度、シュウん殴るわ」

「是非とも、そうしてください。

 あの人は私から、大切な物。

 すなわち、『樂羽このはと過ごす時間』を少なからず奪ってる、不届き者なので」

「いや、こえぇな、君!?

 冗談だよ、許したげてよぉ!!

 これから君の父になる男だぞ!?」

「ちぇっ」



 拳をブンブン振り回す一楽たから

 が、月星つくしのヤンデレ台詞ゼリフに、思わず距離を取る。

 


 そして、数秒後、もっと大変な事実。

 恐ろしい通り越しておぞましい、真実を目の当たりにする。



「……なぁ。

 今までの反応からして、ある程度、君の趣味を把握したもりなんだけど。

 もしかして、それ……」

「『peeakピク-tureチャー ー半透明な君に、永久なる信実しんじつをー』。

 だよっ!!

 ボクのバイブルッ!!」

「あぁぁぁぁぁ!!」



 案のじょうの展開。

 一楽たからは頭を抱え、座り込み、草原をのたうち回る、あるいは時計回りをする。



 ところで。

 現在、しっかり者モードの月星つくしは鳴りを潜めている。

 樂羽このはの言う所の、「ラブコメ脳」となっている。



「控え目に言って、最高だった!!

 例えば、『仮想現実でアバター越しに、好きな物しか感じられない』という世界観も!!

 それをフルに活かした結果、1話で翠蓮すいれん進晴すばるに無限に既読スルーされていたトリック、ロジックを知り、ゾッとしたっ!!

 でも、そうだよねっ!!

 あれ、1話とは名ばかりで、最終話手前!!

 互いの好きがズレ、翠蓮すいれん進晴すばるが友達以上に思い、モヤモヤした結果、進晴すばるの不信感を買って!!

 その所為せいで、彼女の記憶から抹消され、認識すらされなくなっている!!

 つまり、『イマジナリー』、『幽霊』みたいな、一方通行状態だもんねっ!!

 しかもそれが、しばらく人間関係を絶っていた進晴すばるが、旧友とも仲直りした、誕生日会での出来事!!

 くーっ!! エグい、エモいっ!!

 ボク、こういうの、大好物っ!!

 女の子がイチャイチャしてるの、酷い目に遭ってるの、大好きっ!!

 リアル、特に樂羽このはは例外だけどっ!!

 樂羽このはは、あくまでも最推し、ロマンシスだけどっ!!

 なんなら今となっては、本当ほんとうに姉妹だけどっ!! 

 あと、カタルシス、ハッピーエンド前提での話だけどっ!!

 あーでも、それはそれとして、ヒロインが屈辱的になっているさまは、ご馳走さまというかぁ!!」

「あんた、いきなり、色々、どしたぁっ!?

 てんで、スマートじゃねぇぞぉ!?

 あと、やっぱ、かぁ!!

 ただ、読んでくれた上に、そこまで気に入ってくれるとか、作者冥利に尽きるわ、ありがとよぉ!!」



 まさかの、Wガチ勢バレ。

 しかも、かなりオープンな感じで。



 それもそのはず

 先程から月星つくしが熱弁している主人公は、どちらも女子高生。

 


 キス以上のこといし、ハグ、親友止まりではあるものの。

 どちらかというと、グラビティな作品なのである。



 勢い良くツッコミぎたあまり、息切れする一楽たから

 一方、月星つくしは涼しい顔をしている。



「どうかした?

 先生」

「あんたが、明け透けぎるんだよぉ!!

 あと、急冷ぎっ!!

 そういうのは、もっと、こう……アングラに嗜むのがマナーだろぉ!?」

だよ。

 スマートじゃない」

「あぁぁぁぁぁ!!

 いつの間にか、平時でもタメ口になってるしやぁぁぁぁぁ!!」

「お嫌い?」

「継続でっ!!

 そっちのが、接し易いっ!!」

「スマート。

 よく出来できました。

 今ので、加点」

「知らぬ間に補習してたぁぁぁ!?」



 這いつくば一楽たからの、彼を撫でる月星つくし

 


 これまで何だかんだ、31年も生きて来た一楽たからだが。

 今日は、今までで断トツで、女難続きだった。



「というか、先生。

 そこまで、気にしなくてもくない?

 だって、これ、『ロマンシス』だよ」



「ーーえ」



 と同時に。

 彼の心が、割と救われた記念日でもった。



「……もしかして先生、ご存知ない?

『あくまで親友の範囲内に収まった、姉妹みたいな関係、女性同士の究極の友情』。

 それが、ロマンシス」

「……え、待って。

 いや、マジで待って。

 ……るの? そういうの」

「うん」

「結構、一般的?」

「近年出来できたばかりだけど、知ってる人は知ってるよ」

「……えー……」

「先生、知らないで書いてたんだ。

 てか、それも必然か。

 これ執筆してた頃、ロマンシスなんて概念、かっただろうし。

 なんたって、名前すら付いてなかったわけだし。

 ごめん、先生。

 前言撤回させて。

 あと、すごいよ、先生。

 それ、『先生がスマートに時代を先取り、先読みしてた』ってことじゃん。

 しかも、設定も凝ってるし、話も面白いし、キャラも可愛かわいいし」

「……」



 失言を詫びつつ、一楽たからを賞賛する月星つくし

 そんな彼女が、一楽たからには天使、女神に思えてならなかった。



だい先生せんせぇぇぇぇぇっ!!」

「……え、私?」

「そうですっ!!

 あなたさまは、わたくしめの命の恩人ですっ!!

 あなた様のおかげわたくしめは、ギリ姫男子ではないと知ること出来できましたっ!!

 あまつさえ、露見した際に過度なバッシングを受け、社会的に抹消される危険もくなりましたっ!!」

「ま、まぁ……。

 ……そう、言えなくも、ない……。

 ……かな?

 ……かも?」

「言えますっ!!

 さぁ、だい先生せんせぇっ!!

 どうか、わたくしめに、恩返しを、ご命令をっ!!」

「えー。

 じゃあ、『樂羽このはの希望じゃない限り、なるべく彼女に手は出さない』と、誓える?」

「命に替えてもっ!!」

い覚悟、返事。

 スマート加点、付けとく。

 あと、『万が一にも樂羽このはとガチって両想いになっても、互いに幸せ、素直、誠実、長寿であり続ける』と、確約出来できる?」

勿論もちろんですっ!!

 そもそも俺には、すでに心に決めた人がりますゆえっ!!

 あなたさまのご心配には、及びませんっ!!

 あくまでも、『万が一』の話ですがっ!!」

「この調子なら、杞憂そうだね。

 安心したよ、先生。

 先生が存外、紳士、単純、都合くて。

 他には、そうだなぁ。

 ちょっと、スマートに肩叩き、お願い」

「イエス、マイ・ロードッ!!」



 言われた通り、マッサージを開始する一楽たから

 満更でもないらしく、月星つくしも得意気である。



「ところで、だい先生せんせい

 もしかして俺達、日明たちもりさ……樂羽このはさんの怒り、買ったりしないかな?

なんで私より先生と仲良くなってるのっ!?』って、後でジェラられたりしない?」

「平気。

 あの子は、そんな嫉妬しいじゃない。

 ……多分」

だい先生せんせいおっしゃるなら、そうですね!!

 俺としたことが、出過ぎた愚問でしたっ!!」

本当ホントだよ。

 私の樂羽このはが、その程度で機嫌を損ねるわけが」



 った。

 後日、滅茶苦茶、怒られた。

 ヤキモチにより、二人揃って、正座させられた。

 


 それはそうと、月星つくし

 彼女の貫禄は、なんなのか。



 いくら、一楽たからを(本人にとっては)救ったとはいえ。

 ここまでの忠誠心を示され、軽く引きつつ。

 ぐ様、切り替え、適応し。

 これさいわいと状況を利用し、従わせるなどと。

 はっきり言って、一介の女子高生に出来できる技ではない。

 それも、別に転生者とかでもないのに。



 などと、一楽たからが思っていたら。



「たぁちぃもぉりぃぃぃぃぃぃっ!!

 つぅくぅしぃぃぃぃぃっ!!」



 物凄い声量で、物凄い怒りを乗せ、物凄い土煙を上げながら、物凄い形相で。

 すこぶる大人げない、仲音なことが現れた。



 到着して早々に、ドロップ・キックをお見舞いする仲音なこと

 ぐ様、ヒラリとかわ月星つくし



だなぁ、仲音なこと

 私、邪神ちゃんじゃないよ」

ほふる……!!

 あたしの許可く、うち一楽たからに触れるメス豚共は……!!

 1匹残らず、駆逐してやるぅっ!!」

「話し通じない上に、すでに人間として見てない。

 こりゃ、スマートに引くしかいね。

 じゃあね、先生。

 なんちゃって元カノが怖いから、もう帰るよ。

 しばらく、樂羽このはと、スマートに仲良くね。

 また1ヶ月後に、叔父様たちの結婚式で。

 それまでに、もう少し、身嗜みと世間体と身辺掃除、スマートにしときなよ」

「誰が『社会のゴミ』じゃ、ドラ猫がぁっ!!」

「別に、お魚くわえてないし。

 ちょっと、先生にスマートに残念属性加えただけだし。

 被害妄想、引くわぁ」

「なっ……!?

 月星つくし、あんた……!!

 ……うち一楽たからに、なにしてくれてるのよぉっ!!」

「アデューですわ。

 痛々しい、未練がましい、騒がしい、ブレブレおばさん」

しょすぅっ!!」



 答えを残さす、華麗に跳躍し、木に着地し。

 軽い身のこなしで、木々の上をジャンプして行く月星つくし

 現代に生きる、くノ一の様相を呈していた。



「待てぇっ!!

 話も決着も、まだ付いてないっ!!

 一体、うち一楽たからに、なにしたってのよぉ!!

 覚えてらっしゃい、ガチもどき女ぁ!!」



 当たらないのを承知で、そこら辺の小石を、適当に空に投げ仲音。

 そのまま、泣き崩れる仲音なこと

 悲哀と情けなさが、尋常ではない。



「あ、あのぉ……。

 ……仲音なことさーん?」

「うぅ〜……。

 たからぁ……」

「あー……。

 スイッチ、入っちゃったぁ?」

「はいったぁ……」

「そっかぁ。

 確か今回は、子役とパワフル系だったっけ?

 通りで、いつも以上に振り回されてるわけだ。

 憑依した直後なら、抜け切ってくしても、仕方しかたいね。

 ほら、こっち。

 おいでなすって、仲音なことさん」

「おいでするぅ〜……。

 うぅ〜……」



 すっかり幼児となる仲音なこと

 一楽たからに泣き付き、ポカポカと膝を叩き、上目遣いを繰り出す。



一楽たからの、馬鹿バカぁ……。

 仲音なことに許可く、仲音なことを置いてくなぁ……。

 っても駄目ダメだし、そもそも許可しないしぃ……」

「どっちかってーと、俺が取り残された側で。

 帰宅して早々に投げ飛ばして俺を退場させたのも、仲音なことさんなんだけどなぁ。

 まぁ……この際、っか。

 あんまりグダグタしてるのも、男らしいくないし。

 全部、俺の所為せいってことで一つ。

 置いて行かせて、投擲させて、一人にさせて、ごめんよ。

 寂しくかったよね、辛かったよね?」

仲音なことちゃん、悲しかったぁ……」

「そっかぁ。

 じゃあ、次からは、控えよっかぁ。

 俺も、ちょっとビビったしさぁ。

 っても、あれをで済ませられる自分に、我ながら引くけど」

一楽たから所為せぇじゃん……。

 仲音なこと、悪くないもん……。

 一楽たからが、あんな、仲音なことよりかすかに若くて、仲音なことよりほのかに家事出来できる、仲音なことより気持ちばかり可愛かわいい子に、唆されてるのが悪いんだもん……」

「今の、日明たちもりさんには、禁句だからね?

 ともしなくても、失言だからね?

 ただでさえ仲音なことさん、さっき、『歓迎する』って言ってるし。

 あと、そそのかされてないです。

 俺達本当ホント、そういうんじゃないから」

「分かってるもん……。

 この場限りだもん……。

 仲音なこと、ちゃんと、自制出来できるもん……」

「そっかぁ。

 仲音なことさんは、偉いなぁ」

「子供扱いすんな……。

 ちゃんと女、彼女、婚約者扱いしろぉ……」

「だから、最初に別れを切り出したくせに今も変わらずズブズブで、普通こういう時『何で付き合ってるの?』ってなるのはヒモ側なのに、俺達の場合だとむしろ該当するのは仲音なことさんだと以下略。

 いや、これも女々しいかぁ。

 今の、し。

 全部、俺が原因です」

「そんな仲音なこと、知らない、忘れた、抹消した……」

「最後、怖いよ?」

「それより、一楽たから……。

 ……本当ほんとうに、なにもしてない、されてない……?」

「してないし、されてない。

 仲音なことさん以外にしい、めぼしい相手もないし」

貞操てぇそぉはぁ?」

なにもかも、逆じゃないかなぁってのはさておき。

 勿論もちろん、無事だよ。

 今も、これからも、変わらない。

 俺のは、仲音なことさんだけの。

 仲音なことさんだけが、俺を捧げられる、支えられる。

 俺を独り占めしてい、ただ一人の、最高の女性だよ。

 俺、こういうのも、嫌いじゃないし。

 仲音なことさん、演技達者だし。

 色んな仲音なことさん見られるの、聴けるの。

 一人ハーレムみたいで、面白いし、楽しいし。

 なんて言ったら、またメン強認定されるかな?」

「うぅ〜……。

 一楽たからぁ……」

「あー、はいはい。

 抱っこですねー、かしこまりー。

 おー、い子ですねー、仲音なことさーん」

うるさい……。

 今だけだもん……。

 あと5分したら、仲音なこと、戻るもん……」

「うどん作れるね」

「ドバホ……」



 グズる仲音なことを、あやす一楽たから

 


 数分後。

 宣言通り、仲音なことは戻ったのだが。



「で、樂羽このはに続いて、攻略RTAなんぞしてんな、イロボッケナスー!!」



 天丼。



「でぇすよねぇぇぇぇぇ!!

 折角せっかくだい先生せんせいに服、乾かしてもらったばかりなのにねぇぇぇぇぇ!!」

「だからこそ、洗濯するんじゃないっ!!

 月星つくし菌だらけだしっ!!」

「ダイナミック!!

 仲音なことさん、愛してるよぉぉぉぉぉ!!」

あたしのが感慨無量体数倍、愛してるぅぅぅぅぅ!!」

「じゃ、こういうの、我慢しよっかぁぁぁぁぁ!?」

「無理ぃぃぃぃぃっ!!」

「オチし、仕方しかたし、にべもなしぃぃぃぃぃっ!!」

「水落ちはるぅ!!」

本当ホントだぁ!!

 素晴らしい着眼点、ウィット、ワード・センス!!

 流石さっすが、俺の仲音なことさんだぁ!!」

「ありがとう、あたし一楽たからっ!!

 頭冷やして、帰って来てっ!!

 あたし、待ってるっ!!

 ずっと……ずっと、待ってるからぁ!!」

「行って来まぁっす!!」

「行ってらっしゃーい!!

 一楽たから、発進、発射しまーす!!」

「されまーすっ!!」



 月星つくしによる乾燥も虚しく。

 再び、浅瀬に投擲させる一楽たから



 その後、シンクロする一楽たからを、仲音なことは体育座りで眺め。

 なんなら、技のリクエストすら行い。

 しばらくしてから、彼を救い、服を乾かし、再びグズり。

 色々と済んでから、何事もかったように、そろって仲良く帰宅した。



 この二人の摩訶不思議な関係を理解出来できるのは。

 当事者たちを置いて、他にかもしれない。

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