page.5「ヘヤリーと(自称)元カノ同居人」
田舎の山奥に立つ、閑静な一軒家。
鳥の
マイナスイオン溢れる、自然豊かなスポット。
そんな
女性の来訪者と、女性の同居人と、だらしないヒモにより。
分かり
「(プルプルッ、プルプルッ……)」
肩身が狭そうに、涙目で正座する
「も、もぉ……。
勘弁して、くださいっ……。
私が……全部、悪かった……。
……です……」
ベジハラ地獄を乗り越え、健康かつグロッキーになった
「分かれば
次からは
ソファで足を組みつつ、軽蔑モードを解除する
踏んだりはしない辺り、そういう特殊な趣味は、双方に
「それはそうと。
「(ビクビク、ビクビクッ!!)」
「そんなに怖がらないでくれ。
君には、
君は、
君は、『家族』だ」
「(パァァァァァッ……)」
手厚い歓迎
が、
「でも……『家族じゃない』って……。
……
「誰が、そんな、どごぞの
呆れ返って
寒気がして、反射的に
「……
正直に、答えろ。
お前か? 犯人」
「ち、違うんだって!
だって、ほら!
俺、
ましてや、血縁でもイケメンでもリッチでもない、今は単なる無職、無色だし!
だったら
「今のが、辞世の句か?
お前の、その発言の
「しゃ、謝罪はしたからっ!!
「そんなのは、大人としてどころか人として当たり前だ。
一丁前に誇るな、
手を伸ばし、即座に補足する
が、願い叶わず。
そればかりか殊更、
「ちょっと空ける」
「おー、
誰も考えた
これは、一刻も早く、形にせねばー」
「そこまで大言壮語するならば、
原作に
作画崩壊させずに、完結まで、1話も欠かさずにアニメ化させ、独占配信もせず大人気を博し、映画化も決まり。
名実共に完膚、比類
少なくとも、
お前の体と人生を、
そして、
「さーせんしたぁ!!」
「ドアホウ。
普段のお前
恥を知れ」
「ははーっ!!」
先程まで、穏やかに接していた姿は、見る影も
彼と自分との間に
キッチンの壁を破壊した意味が、
が。
そんな彼女ですら、
自分用の四次元カバン、ヨジーを持ちつつ、今を出。
数分で、戻って来た
彼女が、青いインナー・カラーの入ったロング・ヘアが目を引く、大和撫子に劇的にビフォアフしたのには。
「驚かせて、ごめんなさい。
これが、本来の私。
ガッくんの前に
っても、これ、ウィッグだけれど。
地毛は、ガッくんに切られちゃったから」
「な、
少々、語弊が
「そうね。
でもね、ガッくん。
あなたが、『
「い、いえっ!
確か『一旦、別れよう』と言ったのはっ!」
「そうね、私。
でも、そっちが、そういうムード出したからでしょ?
それはそうと、ガッくん改め
私が、こっちのモードで現れたってのが、どういう意味なのか。
もう、分かってるわよねぇ?」
ヨジーから、
次の瞬間、豹変し。
「とっとと、
「お、お許しをぉ!!」
「問答無用っ!!
覚悟しんせいや、カバチタレがぁっ!!」
それまでの清楚な雰囲気を捨て。
一気に、ガチギレ状態に突入する
そのまま、逃げようとする
有無を言わさぬまま窓を開け、川を一望する
軽やかなフォームで、ジョー・◯ブソンの
そして、
「文字通り、頭冷やしてこんかい、ドバホォォォォォッ!!」
砲丸投げの
川まで一直線に、
「ここ、俺ん
「
「ごめん、
「
遠ざかりながらも、律儀にツッコむ
同じく、大声で反論する
と思いきや、唐突にバカップルになる二人。
数分後。
物凄い水しぶきが上がり。
「はっ。
夏だったお
まぁ、仮に落としても、
そもそも、
「(プルプルッ、プルプルッ……)」
「ん?
あー、平気よ。
いつもの
これ
あの程度でくたばる
証拠に、ほら、ご覧なさい。
見ての通り、ピンピンしてるわよ」
言われたので、おずおずと視認する
確かに、
無観客で絶賛、一人シンクロ中だった。
あんな
どうやら、メンタルのみならず、フィジカルも
思わず、
「さて、と。
それはそうと、
「(ビクビクッ、ビクビクッ!!)」
勝手に壁を壊した上に、
そんな自分も
一方の
「ごめんなさいっ!!」
と、全力で土下座した。
「違うのっ。
彼も言ってただろうけど、
シンプルに、あなたに負担を
ただ、ほら?
ネガってる時ばっか、口数とか、スベリと失言が増えて、余計に逆効果ってか、逆撫でされるってーか。
正直、『あなた、
あー、いや、ごめん、惚気とか愚痴でもなくてね?
あー……
顔を上げ、髪をグシャグシャにしつつ、繕おうとする
しかし、言葉が纏まらず。
再び、畳に額を当てる。
「
あなたの
あれでも、悪い
同棲してた、
その点だけは、安心して。
っても、これからも、地雷踏むかもしれないけど。
そしたら、透かさず、
今日みたいに、
「(ブンブンッ、ブンブンッ!!)」
そもそも、年上に土下座されている現状ですら、持て余している
もっと早く止める、動くべきだったと、
「ごめん。
「(ブンブンッ、ブンブンッ!!)」
「もしかして、励まそうとしてくれてる?
ありがとう。
無意識に、
母に甘えた経験の薄い
「そうだ。
じゃあ、お礼も兼ねて。
ちょっと、サービスしちゃおうかしら」
手を合わせ。
数分後。
開けっ放しだったドアから、ヒョコッとクマが生えて来る。
自分も
動くヌイグルミのカゾクマ、アレンくんである。
余談だが。
『アレンくん』までが、正式名称である。
「(パァァァァァッ……)」
「
っても、大人向けのだけど、それはさておき。
お詫びと、自己紹介も兼ねて」
軽く前振りしつつ、
「はじめましてクマー。
ボク、アレンくんクマ。
よろしクマー」
まさかの、声
しかも、腹話術。
恐るべき技術と才能。
宴会芸、お詫びやサービスでは済まされないレベルの、とんだサプライズである。
「(フォォォォォオォォォォォッ!!)」
「コノハちゃーん。
ボクと、オトモダチに、なってくれるクマー?」
「「(ブンブンッ、ブンブンッ、ブンブンッ、ブンブンッ!!)」」
またしても、今度はマシマシでヘドバンする
誘惑に抗えず、
そのまま、彼女にヌイグルミを渡し。
「お気に召したかしら?」
「(ブンブンッ、ブンブンッ!!)」
「なら
改めて、
「……?」
アレンくんに夢中になっていた
てっきり、
「いやー、その……ほら。
あと、小姑ムーブしか
それで、ピンチの時にだけ、馳せ参じようかなーと」
「(ブンブンッ、ブンブンッ!!)」
「そうは言ってもねぇ。
現に、今日も
あいつの自業自得とはいえ。
少しでも、あいつとのエンカ率、下げたいってーか……」
「(ブンッ、ブンッ!)
(グーッ!)
首を横に振り、サムズアップし、
そのまま自身のヨジーを持ち、外に出る。
気付けば二人は、倉庫の横、裏庭に
「ねぇ。
一体、どうしたの?」
そして、数秒後、振り向いたら。
立派な小屋が建っていた。
「……!?」
作業音も立てず、時間も
必要条件は、「決して人目には付かない」、ただそれだけ。
恩返しする鶴も
先程、
それが、一気に宴会芸に格落ちするレベルの偉業。
といっても、相手が悪
「う、嘘……!?
あなた、こういう作業も
「(テレテレ、テレテレ……)」
「いや、とんでもなっ!!
最近の女子高生、物
もうこれ、普通に就職
「(ペカーッ)」
褒められ、ニッコニコでドアを開け、お招きする
なんと、
最早、匠の技とか、その程度では済まされない。
それはさておき。
これなら、
水回りだけ、必要に応じて借りれば事足りる。
折衷案として、完璧。
少なくとも、
「も、もしかして……。
でも、
「(ビクビクッ!)」
今更ながら、
対する
ヨジーから出したペンと林檎を、「んーっ」と合体させてみせた。
「……えーっ、とぉ……。
……『
……って、
「(グーッ!)」
気持ちは分かるし、尊重もするが。
それにしたって、遠回しな上に、やり過ぎ。
というより、カーテンで仕切られているとはいえ。
思いっ切りお風呂を覗けてしまうのだが。
そこまでイドに忠実なタイプではないと認識しているが。
ましてや、
……
「しまった!
「(ビクビクッ、ビクビクッ!!)」
慌てて、浅瀬を見る二人。
そこには、シンクロ選手
結果、
「流された……!?
いや……あそこは、そんなに急流じゃない……!
となれば……!」
額に指を当て、脳内レーダーで
バトル漫画の世界線でない以上、これもこれで充分、とんでもスキルである。
その周辺には、
そして、彼と
よって、
やや
その近くに
その正体を、
というか。
数時間前まで、初対面でありながら、一緒にカラオケしていた。
共に、複雑なジレンマを抱えていた同士。
「あんの、つくつくぼうしがぁっ!!
「っ!?」
ダサ
補足だが。
本来、『粉を
先程、
つまり、彼女は今、割とガチでメンヘラっている。
ポツンと一人、残される
今度は、インターホンが来客を知らせる。
ここまでの間に、ちょくちょく話題に出ていた、もう一人の関係者。
彼が今、
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