page.4「家主と遅れ馳せ自己紹介」
耳元まで隠れ、
改めて見ても、かなりの美少女である。
きっと、もっと普通に出会っていたら。
今頃、自分も挙動不審になっていたに違いない。
「えと……こんな
一応、念の為、確認。
……もう、平気?」
体内の掃除、手洗い、お色直し、着替えを済ませた
向かい合っている
そのままプシュー……と蒸気を放出。
続けて、コクッと
生来のシャイネス。
歯並びの悪さ。
内気で人見知りな性格。
俗にいうアニメ声。
親と弟から聞いていた話と、特徴が合致していた。
それらが災いし、上手く
確か、『っ』を発音するのさえ、難しいとか。
「改めまして。
俺は、
一応、次男坊で、ここの名義人、つまり家主。
君は……
で、合ってるよね?
あと、そう呼んでも
伏し目がちながらも、頭の上で◯を作る
OKらしい。
「ありがと。
君にとっては、義理のお父さんの、奥さんの、連れ子で。
じゃなくて、
「っ!!」
ボイスと予算の少ない外れゲームみたいな声を出し、ハッとする
そのまま、「待たれよ」と言わんばかりに、広げた手を
やや経過してから、ニッコニコで、自身のスマホ。
正確には、そこに表示された映像を見せた。
『どもぉ、すりらーめんマーベリクでぇっすっ!!
今日は、忍者の末裔である、この俺様がっ!
愛しの、ブァバ! の家に、勝手に忍び込んで!
ん壁にめり込んで、どーれ
ん、それとも、バレないのかっ!
……じゃぁね、早速検証していこうと思います。
ん、どっちなんっだいっ!!
キャー!! キャー!!
そんな
……オーブンッ!!
いや、それじゃ開かんやろがい、あかんやろがい、オープンキャンパスやろがい、
「……?」
が、
器用にドリルで壁を掘って行く。
んーっ、とぉ……。
これは、つまり……。
「……『この動画を参考にした』。
って
「(コクッ、コクッ!)
頷きながら、スタンディングオベーションされた。
ご名答らしい。
それはそうと、1作目のバンブルビ◯みたいな、やり取りである。
というか、『参考にした』て。
それだけで、DIY
見様見真似で通じるレベルじゃないでしょ。
そもそも、なして、こんな
ただ、『リスペクトが高じただけ』?
それとも、『俺を観察してた』?
もしくは、『場を和ませようとした』?
いや、確かに親近感は一気に湧いたけどさ。
……まぁ、
などといった具合に。
「そっか。
好きなんだ? この、『マーベリク』って配信者。
今度、俺も見てみても、
「(ブンッ、ブンッ!!)
(グーッ!!)」
素直に感想を述べると、ウッキウキでスマホを操作し。
かと思えば、癖っ毛と瞼と眉毛とテンションを下げ、分かり易くシュンとする
ははーんと、
「『
で、合ってるかな?
それなら、オススメのリンク送れるし」
「(ブンッ、ブンッ!!)」
当たりだったらしく。
これって、セーフなのかなぁ。
でも、スマホ貸してくれたの、向こうなんだよなぁ。
そんでもって、この子も、
じゃあ、
と、逡巡した
ややモタつきながらも、スマホを返却。
こうして、
他にも、『天井に張り付く忍者』『冷蔵庫をくり抜いて忍ぶ忍者』をオススメされるのだった。
天井とか冷蔵庫の異変は、フラグだったらしい。
余談だが。
ヘドバン気味に
もう少し、抑え目に首肯して
「それで、
どうして、ここに?」
尋ねると、
そこには、彼女の夏休み期間が書き加えられていた。
「『遊びに来てくれた』って
「(ブンッ、ブンッ)」
「違うの?
じゃあ、え?
……もしかして、『助けに来てくれた』の?
家事の
「(コクッ、コクッ)」
料理を振る舞ってくれたので、もしやとは思った。
そして、正解だった。
それに
「……
俺、君とは初対面なのに。
しかも、ここにはもう、俺しか
「(プルプル、プルプル……)」
「あー、ごめん、違う、誤解しないで、泣かないで。
別に、歓迎してないってんじゃないんだ。
「(ビクビクッ!!)」
「ごめん、今の
いや、
多分、あれだよね?
こんな
分かるよ、俺も免疫
やっぱ、家族でもない
だったら、なるべく控える
で、他にも気になる
その都度、共有する。
って
手を合わせ、頼み込む
「……かっ……」
ホッとするのも束の間。
ここに来て
「……家族、です……。
血は、
……家族、です……」
「……」
膝で組んだ手で、スカートを握り。
やはり
泣きそうな目を閉じ、恐怖を乗り越え、勇気を出し。
恥ずかしいのに、難しいのに、言葉にして。
この子は、こうまでも気丈で、懸命なのだと。
「……ごめん。
今の、特に
……そう、だよね。
血縁とか、関係
彼女の横に周り、膝を折り。
「ようこそ、我が家へ。
遠路遥々、大変だったでしょ?
こんな場所、こんな俺で
って、学業とか家族との兼ね合いも
余っている手で頭を掻きつつ。
「これから、
「……っ!!」
相変わらず、
「ただいま。
健康にしてた?」
……そして、新たなトラブル発生。
買い物を終えた、中性的な美形が帰宅し。
キッチンで手を
音からして、
「(ビクビクッ!!)」
「な、なこっ……!?」
「なンか用か。
てか、『さん』を付けろよ、デコすけこまし」
「は、はいっ、さーせんっ!!」
「
それはそうと、
こんな大荷物、無茶振りさせて。
自分は、若い子連れ込んで、イチャイチャ?
ふーん……もう
「め、めめめ、
「今のは、正しい言葉遣い。
素直に、褒めて遣わす。
それはそうと、
急いで移動し、跪く
一方、同居人と
「……『一週間』。
たったの『一週間』だ、
それで戻ると、
その期限を、
溜まりに溜まってた仕事を、全て片付けて来た。
相違
「あ、
「その通り。
だのにだ、
これは一体、どういう了見だ?
これがお前流の、仕事帰りの同居人への、
それとも、その程度の確約すら。
「も、申し訳ありませんでしたぁ!!」
「今、求めてるのは、『謝罪』じゃない。
よって、厳罰に処する。
額を擦り付けて許しを請え」
「ははーっ!!」
色々と突然の展開に、隅でフリーズする
そんな彼女に、飴を渡し。
物凄い速度で、キャベツを微塵切りにし。
切れ端を飛ばし独りでに、1本も残さず、背後のテーブルの皿に華麗に着地させ。
居間の、布団の
「さて、
エサだ。
とっとと食せ、ウスラトンカチ。
ちょっと見ない内に、すっかり不摂生になりおって。
今にも祟りそうじゃあないか。
もっと、心も体も財布も節制しろ。
分かったら、分からなくても、さっさと完食しろ。
申し開きによっては、温情でドレッシングだけ足してやる」
「ど、どうか、副菜のみは……!!
ベジハラは、ご勘弁をぉ!!」
「ふーん。
これじゃあ、物足りないか」
「お、お待ちをぉっ!!
いや、マジで待って!!
てか、違うんだって!!
そういうんじゃないんだって、ガチで!!」
「だから。
もっと具体的に話せと、そう命じてる。
この子は、誰で。
「『弟の
「はい、正解、釈放。
ほれ、ドレッシングだ。
好きにしろ」
「で、
せめて、クルトンとか……」
「は?」
「ありがたき幸せで
「そうだ、
ちゃぁんと、たぁんと実感しろ。
それが、
そのまま、一人じゃないありがたみを、噛み締めろ。
ゴミも、掃除も、まるで行き届いてないし。
これは、中々どうして、骨が折れるな。
「ははーっ!!
「うむ。
苦しうない」
クイッ、クイッと指で合図され。
ソファで
「失礼。
そういえば、まだ名乗っておらなんだ」
そんなオーラ、黒幕感たっぷりな
同居人は、
「
こいつの元カノで、同居人。
これでも、女。
これから、定期的に顔を出すが
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