第4話


23 翌朝、目を覚ました俺は真っ先に鏡の前に立つと自分の顔を確認した。そこにはいつもの平凡な面構えがあったわけだが少し違う点もあることに気づいた。それは昨日までは普通のおじさんにしか見えなかったのに今朝になってみると何だか若く見えるような気がしたのだ。おそらくこれは気のせいではないはずなので本当に若返っているのだろうと判断した。するとその時、不意にお腹が鳴ったため朝食を取ることにした。だがここで驚くべき事実が発覚したのである。なんとご飯を一口食べた瞬間、急に体に力が漲ってきたのだ。さらに食欲も旺盛になってきたためあっという間に平らげてしまったのである。これにはさすがに驚かされたが同時に喜びを感じた。というのもこれまでずっと悩みの種であった体臭の問題が解決したばかりか肌の状態までも良くなっていることが判明したからだ。おかげで朝からシャワーを浴びることにし髪やヒゲを整えてから仕事に行くことにした。だがその時にふと思ったのだがこんな状態で会社へ行って大丈夫なのだろうかと思い念のために聞いてみようとしたのだが、なぜか誰も気にしていないようなので安心すると同時に不思議に思った。

24 その後、会社に出勤した俺は同僚たちから「元気になったみたいで良かったな」などと声をかけられたのだが皆一様に喜んでいる様子だった。さらに昼休みには食事に誘われたため行ってみるとそこには俺と同じ部署の女性社員たちが揃っていた。その中には俺の彼女もいたのでこれはもしかしてと期待していると何と彼氏がいないことが判明しデートすることになったのだった。

25 そんなわけで当日、彼女と出かけることになった俺は待ち合わせ場所へ急いで向かった。時間を確認するとまだ余裕があるにも関わらずすでに待っていた彼女を慌てて呼び止めるとお詫びの印としてプレゼントを渡した。すると彼女は嬉しそうな表情を見せた後、お礼の言葉を言ってくれた。さらにその後は二人で手を繋いで街を散策していったのだがその際に手の感触や温もりを感じながら歩いていると幸せな気分になれた。その後も映画を見たり買い物をしたりした後で喫茶店に入ると楽しい時間を過ごしていった。ただこの時、ふと彼女が席を外した際に財布の中を確認してみたところ紙幣の枚数が増えていることに気が付いた。しかしそれがどこから来たものなのか分からなかったため結局謎は解けないままとなってしまった。

26 その夜、帰宅してからいつものように風呂に入ろうとした時、脱衣場で服を脱いでいる最中に自分の体の変化に気付いた。というのも以前は贅肉だらけだったはずの体が引き締まってきていることに気付いたのだ。しかもそれは単に痩せてきているというわけではなく筋肉がついて筋骨隆々になりつつある感じだった。そこで試しに腕立て伏せをしてみたところ一回で腕がプルプルと震えてしまいとても出来そうにない状態になってしまったものの回数を重ねることでどうにか50回を超えることができた。それでもかなり辛かったのだがもう少し頑張ってみようと思っていると突然お腹が痛くなってきたため一旦中止することにした。だがしばらくすると再び便意に襲われたため今度はトイレへ行くことにした。その結果、大の方はともかく小の方は驚くほど楽に出るようになり驚いてしまった。やはりこれも以前の自分とは違う肉体になっていることを裏付ける出来事の一つだといえるだろう。

27 こうして日々健康的な生活を送り続けた結果、気付けば半年が経っていた。その間に特にこれといった問題もなく過ごすことができていたわけだ。ちなみにその間、一度も会社へ行っていないため給料も入らないままだったが特に不満を抱くこともなかった。なぜなら今の自分にとってそんなものは必要なかったからである。何しろ金がなければ困ることもなくなれば働く必要もないわけでまさに理想の生活といっても過言ではなかった。しかもそんな状況にもかかわらず彼女との関係はずっと良好だったこともあり今では恋人というより人生のパートナーのような存在になっていた。また周囲の人々も変化に気付かないどころか歓迎している節があり誰一人として怪しむ様子はなかったのでもはや疑う余地はないだろう。つまり今の俺にとってこの世界とはそれだけ快適かつ理想的な場所だったのだ。

28 それからさらに月日が流れついに念願だった100歳の誕生日を迎えた頃、いよいよ我慢の限界が訪れたので最後の仕上げを行うことにした。そしてそれを済ませると今までお世話になった人たちに別れを告げることにした。すると彼らは口々に「おめでとう」と声をかけてくれたがその顔はどこか寂しげでもあった。そこでその理由を尋ねると皆、もう会うことができないのではないかと考えていたことが分かった。とはいえ実際のところはそんなことないので安心してほしいと伝えると納得してくれたようだった。ただ一人だけどうしても離れたくないという人がいたためどうしたものかと考え込んでしまった。それは実の娘である彩華なのだが、もし仮にこのまま残れば二度と元の世界に戻ることはできなくなると言われたので仕方なく諦めることにした。とはいえ完全に別れてしまう前にもう一度抱きしめてあげると涙を浮かべながら嬉しそうにしていたので少しは慰められたようだ。一方、向こうの世界に残された父親はと言うと相変わらず俺のことを思い続けているようでいつまでも待ち続けるらしいがこちらとしては早く忘れてくれることを願うばかりである。

29 そういうわけでようやく全ての準備が整った俺はいよいよ出発の時が来たことを知ると両親や友人達、そして今まで世話になった人たちに感謝の言葉を伝え旅立った。

30 次の瞬間、気がつくと見知らぬ場所に立っていたわけだがそこは全く見覚えのない場所だった。だが周囲を見回してみると近くに街があるのが見えたのでとりあえずそこへ行ってみることにした。するとほどなくして到着してみると、その外観は俺が元いた世界と変わらないものだったのでホッと一安心した。さらに中に入ってみると多くの店が立ち並んでおり様々な商品が売られていたためひとまず見て回ることに決めた。しかしここで一つ問題があった。というのも通貨が異なることから品物を買うことができなくなっていたのだ。とはいえそれを知らなかったのだから仕方ないといえばそれまでなのでどうするべきか考え込んでいたらある方法を思い出した。それは自分が魔法が使えるということだったのでそれで買い物をすれば良いのではないかと思いついたのである。というわけで早速試してみることにした。すると念じただけで目の前の空間に文字が浮かび上がったのでそこに書かれている金額分を購入することにした。そしてそれが終わるとさっそく支払いを済ませようとしたのだがあいにく現金の持ち合わせがなかった。そこでやむなくクレジットカードを使ったのだがどうやらここでも問題なく使うことができるらしい。そして一通りの用事を済ませたところで昼食を取ることにしたのだがここで重大な事実に気づいた。それはお金についてだ。実はこの世界のものは何でも日本円で換算されるらしくそのせいでいくら使おうとも同じ価値にしかならないのである。だが逆に言えば、この世界でならいくらでも稼ぐことができるということでもあるのでこれはありがたいことだった。

31 そうと決まれば善は急げというやつですぐに行動を開始した。そして目に付いた店に片っ端から入ると店主相手に商売を始めた。最初は怪しまれることもあったのだが次第に慣れてきたのか普通に購入してくれるようになった。それによりあっという間に大金を手にすることができたため他の店でも同じことをする事にした。おかげで瞬く間に億万長者になり、やがては一国の王になることもできたのだがさすがにそこまでいくと疲れてしまったので途中で断念した。それにそもそも国王などという面倒な仕事は俺の性分に合わない事に加え、それよりも大切なことがあったからである。

32 そう、それは異世界への扉を開くことである。せっかくこれだけの富を手に入れたというのに、いざ使ってみるとどういうわけかまったく反応しなかったため落胆してしまったがよくよく考えてみれば当然の話である。なぜなら元々の世界では魔法の類は一切使えず、それどころか存在しないものとされていたからなのだ。なのでこちらの世界では使えないのは当然であり、だからこそ何も起きなかったというわけである。とは言えそれなら諦めるかと言えば決してそんなことはない。何故ならすでに十分な資金を手にしたことで自由に行き来できるようになったうえ、たとえ魔法を使わなくても稼げるようになってきているからだ。ゆえに俺はまず、この世界で自分の城を建てようと思った。そうすればそこを拠点として活用できるだけでなく維持費などもかからないため、いちいち国ごとに城を移動する必要もなくなるわけである。

33 こうして無事に目標を達成した俺は次にこの世界にある資源に目をつけてみた。それは石油や天然ガスなどであるが他にも金や銀などの貴金属はもちろんのこと、希少性の高い宝石や美術品、さらには温泉に至るまで幅広い種類のものが揃っていたので今後とも大いに利用させてもらうことにした。

34 さらに家を建てる際には鉄筋コンクリート製にすると共に耐震性能を高めるための施工を行った。こうすることで災害などで被害にあう可能性が減るうえに地震対策にもなるためである。そのため完成した家を実際に体験するため訪れてみたらまるで要塞のような作りになっていたため驚くとともに頼もしく感じた。しかも内装にはこだわっているので高級感漂う空間になっており居心地の良さにも繋がっていたのだ。ちなみに屋上に出られるようになっておりそこから眺める景色もまた格別だったのでお気に入りの場所となっている。しかもここから見える風景は町全体を見渡す事ができる上に遠くまで眺め渡せるため何かあっても迅速に対応することが可能だからだ。

35 その他にも様々な施設を作ったことでより充実した生活が送れるようになったため、この調子でどんどん事業を拡大していくつもりでいる。たとえば観光業や飲食店などを作り客を呼び込むことで収益を上げつつ同時に地域活性化につながるような企画を考えたりしている。だがもちろんそれだけで満足することなく、将来的には金融業も始める予定なのでそちらに関しても力を入れていきたいと思っているところだ。ただ現時点ではまだ準備段階のため、今はじっくり腰を据えて取り組んでいこうと考えているところである。36 ところで話は変わるが俺の中には以前にも増して強い欲望が生まれていた。そのきっかけになったのはやはり彼女がいないことだ。以前はそれなりに恋愛を経験してきたもののいずれも長続きせず破局を迎えてしまっていたせいで、今ではすっかり寂しくなってしまっていたのだ。そこで新しい彼女を作るべく出会い系サイトを利用することにした。するとそこには数多くの女性たちが登録しておりその中には俺の好みにぴったりな人もいたため思い切って声をかけてみることにした。

37 その結果、なんと向こうも乗り気だったためデートの約束をすることができた。さらにその後で何度かやり取りを交わすうちに親密な関係へと発展していったため、ついに今日これから会うことになったというわけだ。そして待ち合わせ場所に到着するとしばらく待ってみたが約束の時間になっても現れないため電話してみることにした。すると何やら取り込み中とのことだったので大人しく待つことにして現在に至るという次第だった。38 なお、彼女は仕事の関係で来られなくなったそうなので今回はキャンセルとなったわけだが俺にとっては初めての経験であったため残念ではあるが仕方ないと割り切ることにした。

39 ところがそれから数日後、偶然街中を歩いている時に彼女を見つけたので声をかけてみる事にした。というのも連絡を取りたくても連絡先を知らないため会うためにはこうして見つけ出すしかないと考えたからである。そこで早速声をかけると驚いた様子ではあったもののすぐに笑顔になってくれたためひとまずホッとした。

40 そして改めて事情を説明すると快く応じてくれたばかりか家に招待してくれたためそのままお邪魔することにした。すると室内に入った途端、彼女の匂いが鼻腔をくすぐり興奮してしまったせいか体が熱くなってきたため我慢できなくなり思わず抱きついてしまった。するとその瞬間、彼女も抱きしめ返してきたため互いに見つめ合う格好になりキスを交わした。しかもそれだけではなく舌を絡め合ったり胸を揉みまくったりした挙句、最後には裸になるよう要求したため戸惑いながらも応じた結果、互いの性器を舐め合い始めた。それが終わるといよいよ挿入しようとしたのだがこの時初めて相手が処女であることを知ったので優しくしてあげるように心がけた。またその際に生が良いと言われたためそれも受け入れることにした。

41 そしてとうとう本番行為が始まったわけだがまずは正常位からスタートし徐々にペースを上げていったら間もなくして絶頂を迎えたので一旦休憩を挟んで今度はバックから攻めていった。するとこちらも間髪入れずに絶頂してしまい危うく中に出しそうになったが寸前のところで踏み止まったので何とか間に合った。もっともその直後に再び達したので結局、中へ出してしまうことになったのだが。それでもまだ収まらなかったのでその後は立ちながら続けた。するとそのうち疲れてきたのでベッドに移動してから横になると騎乗位で再開した。そして最終的には寝転がった状態で繋がったまま抱き合いながらキスをした後、二人一緒に果てたのだった。

42 こうして彼女とは体の相性も抜群だったらしく、その後も何度も体を重ねるようになっていった。それにつれてお互いの距離も縮まっていき気が付けば恋人同士になっていたほどである。そして現在では結婚の準備を進めており近々、式を挙げる予定である。なおその際の衣装に関しては俺がデザインしたものを採用してもらう予定になっているため今から楽しみでならない。

43 そして迎えた結婚式当日、俺達は盛大に祝福されながら夫婦としての一歩を踏み出したのだが式の途中、突如停電が起きてしまい騒然となった。さらに外では雷が鳴り響き続けていて今にも嵐になりそうな状況に陥っていた。しかしそんな中、俺はというと何故か冷静に対処していたのである。というのも事前にこうなることを予測していたためあらかじめ発電機を設置しておいたため電気の供給だけは確保できたからだ。とはいえあくまで応急処置にすぎないのでいずれは復旧させる必要があるのだがひとまず会場にいる人達の安全を確保することが先決だと考えたので誘導しつつ安全な場所まで避難させることに専念した。そして無事、全員が脱出できたことを確認した後は俺自身も現場を離れようとしたその時、不意に激しい揺れに襲われたかと思うと次の瞬間、天井が崩れ落ちてきたため為す術もなく下敷きになってしまった。だが幸いにして命に関わるような重傷を負うことはなく済んだようだ。とは言え全身に激痛が走るほどの大怪我を負ってしまったため立ち上がることができない状態だった。おまけに意識も朦朧としているためもはやこれまでかと思った矢先、誰かが近寄ってくる気配を感じたため顔を上げるとそこには見覚えのある女性が立っていた。そう、それは他ならぬ自分自身だったのだ。

44 実は彼女は俺と同様、元居た世界からこちらの世界に転移してきた人間でありすでに百年以上もの間、生き続けているのだという。しかもその間、ずっと魔法の研究を続けてきておりようやく完成させたものが空間転移装置というわけだ。これにより元の世界に戻る事も可能になったそうだが問題はそれをするかどうかという事である。ちなみにこの世界にはもう未練がないらしくこのまま生涯を終えるつもりらしい。一方、俺はと言えばまだまだやり残したことだらけなので正直、心残りがあるものの今後の人生を左右するような決断を下すのは早計過ぎると考えており、とりあえずもう少し考える時間が欲しいと思っている。

45 さて、あれから数ヶ月が経過したわけだが現在は別の意味で悩んでいた。それは先日、彼女にプロポーズをした件についてなのだがどうも反応が今一つだったため悩んでいるというわけである。さらに言えばそのことで口論になってしまい関係は悪化するばかりであるため踏ん切りがつかないという状況にあるわけだ。そのためどうすれば良いのかわからず頭を抱えているところだったりするわけである。ちなみに例の装置は現在も改良を重ねながら運用しており順調に機能しているようである。

46 そんなある日の事、突然彼女が家を訪ねて来たかと思えばいきなり俺に襲いかかってきたのだ。当然、抵抗を試みたものの全く歯が立たずされるがままの状態になっていたところ急に力が漲ってきたような感じがしたため試しに攻撃してみると簡単に弾き返すことができたので慌ててその場から飛び退いた。するとその直後、なんと彼女が燃え盛る炎に包まれたため急いで水をかけ消火しようとした。だが不思議なことに一向に消える気配はなくむしろどんどん勢いを増していくばかりだったためどうすることもできずに途方に暮れているといつの間にか気を失っていたようで次に目が覚めた時には自室のベッドの上に横たわっていた。どうやら先ほどのことは夢だったようだと思い安堵したところでふと枕元に目をやると一通の手紙が置かれていた。さっそく中身を確認するとそこには驚くべき内容が書かれていたため愕然となった。なぜなら手紙には、こう記されていたからである。

47

『拝啓、私はあなた自身です。この度は私のためにご尽力いただき誠にありがとうございました。ただ、おかげさまで無事に元の世界へ戻ることができました。しかしながらその代償として今までの記憶を全て失ってしまったようです。』

48 確かによく見てみると名前などは思い出せるものの以前の自分がどのような人物だったのかという記憶は完全に失われていた。しかもそれが誰によってもたらされたものなのかさえ思い出すことができなかったのである。したがって現時点で唯一残っているものは彼女に対する愛情だけであるが果たして本当にそんなものが存在しているのかどうか疑わしい限りである。なにしろこれまでの人生でそういった感情を抱いたことがないだけにイマイチ信じきれないところがあるからだ。ゆえに今後も彼女に対して好意を寄せていけるかどうかは定かではないというのが正直なところだったりする。

49 しかしだからと言って自分の記憶を取り戻さないわけにはいかないので色々と試行錯誤してみたところなんと彼女に関するものだけではあるが徐々に思い出しつつあることに気がついた。そこで早速、試してみることにしたのだがその結果、断片的ではあったが記憶が蘇ったことで彼女と過ごした日々の数々を思い出すことが出来た。

50 中でも一番強烈に残っているのは結婚してからのものである。というのもそれまでは互いに別々の部屋で寝ていたものの結婚した以降は同じベッドで一緒に寝るようになったからである。それからというもの毎晩のように体を重ね合わせるようになりやがて子供が産まれた後も夜になると必ず二人で交わっていたのだ。そしてその度に快楽に溺れていき、とうとう身も心も支配されてしまった結果、次第に彼女の虜となっていったというわけである。ただしこれに関しては他の誰よりも彼女への想いが強かったからこそ成り立ったものだと言えるだろう。何故なら自分以上に魅力的な人間はこの世に存在しないと確信していたためどんな人であっても負ける気はしなかったからだ。

51 なお、なぜこのような話を書いたかというと読者の皆様にも是非とも知っておいて欲しいと思ったためである。何しろ彼女がいなければ今の自分は存在しないわけでそれ故に彼女を愛することは自分にとって必然的な行為とも言えるからである。それに仮に今後、他に好きな人ができたとしても結局はその人よりも彼女を選ぶことになるに違いないから尚更のことだ。というわけで今後はこれまで以上の覚悟を持って彼女と接していくつもりだ。それこそ永遠に添い遂げるつもりであり決して手放すつもりはないしまた誰にも渡すつもりもないと考えている次第である。

52

「ただいま」

家の玄関に入るとすぐに奥に向かって声をかけたのだが返事がないためおかしいなと思いつつ靴を脱いで上がることにした。そして廊下を歩いて行きリビングに繋がる扉を開けるとそこには誰もいなかったため首を捻っていると電話が鳴ったため受話器を取ってみると向こうから彼女の声が聞こえてきた。そこで一体どうしたのか尋ねてみたところ何と交通事故に遭って病院に運ばれたという知らせを受けたのですぐさま駆けつけることにした。

53 幸い命に別状はなかったのだが全治一ヶ月はかかるということでしばらくの間、入院することになった。そして毎日、見舞いに行くことを約束した上で一旦病院を後にしたのだった。ところがそれから数日後、今度は会社の方から電話があり話があるから来て欲しいとのことだったため再び病院を訪れることになった。

54 そして指定された部屋へ入るなり上司が駆け寄ってきて早速、用件を尋ねようとしたら開口一番、とんでもないことを告げられた。何でも会社のビルが老朽化していたため建て直すことになりそれに伴って社員の大幅なリストラが行われるかもしれないというのだ。そんな話を聞かされたものだから慌てて理由を尋ねると先日、不渡りを出したことにより銀行から融資を打ち切られたことが原因だということが判明した。というのもここ数か月の間に同じようなトラブルが続出しており、そのせいで社内は資金難に陥っているというわけだ。ちなみにこのままでは経営が立ち行かなくなる恐れもあるため現在、社長以下上層部の面々が対応策を講じている最中らしいのだが場合によっては倒産もあり得るとのことである。そのため自分も何らかの対策を講じる必要があると感じたため自宅に戻るとすぐに頭をフル回転させて考え始めた。

55 まず真っ先に思いついたのが転職するという方法だが残念ながら今の会社に特別な魅力を感じているわけではないのでできれば別の職種に就きたいと考えていたところだ。しかしそうなってくると選択肢は非常に狭くなる上にそもそも雇ってくれる会社が見つかるかどうかすら怪しい感じだった。もちろんそれなりの待遇や条件であれば話は変わってくるわけだが現状ではそれも期待できないと考えた方が良さそうである。となると残る手段としては個人事業主になるかもしくは自営業を始めるしかないわけだ。そこで思い付いたのが以前から興味があったアフィリエイトサイトを運営することである。

56 そう考えた理由としては今の時代、ネット環境さえあれば誰でも気軽に始めることができるという点に尽きた。しかも初期費用もほとんどかからないうえ在庫を抱える必要もないことからリスクはほとんど無いと言っても過言ではなくその分、稼げる額もかなりのものになるだろう。さらには自分のホームページを作ることができればアクセス数に応じて広告収入が得られる仕組みになっているため安定して収益を得ることができるようになるはずだ。したがってこれほど都合の良い稼ぎ方は無いと言えるのではないだろうか。おまけに上手くいけば企業などから直接、オファーが来る可能性だってありそうでまさに一石二鳥とはこのことだと考えられるのである。

57 ちなみに彼女は元々、IT系の仕事をしておりかなり稼いでいたようなのでもし今も健在なら恐らく自分に頼ることなく自力でどうにかしていたはずである。だからこそ今回、自分が代わりに稼いでやろうと思ったわけである。そうすれば彼女も喜んでくれるだろうし自分自身も楽ができるわけだからまさに一石三鳥の作戦だと言えよう。そのため早速、その日から取り掛かることにしたのだがパソコン自体は彼女が使っていたものをそのまま使っても構わないそうなので助かったものの問題はドメイン代とサーバー代といった諸々の諸経費であった。ただこれは事前に調べておいたおかげである程度、目星を付けていたので特に問題は無かった。

58 一方、肝心のやり方だがまずはホームページのテンプレートを選びそれをコピー&ペーストするだけで後は簡単に作成できるそうだ。あとはリンク先を設定する作業になるわけだがこちらも既に用意してあるため問題ないとのことだったのでこれも一安心といったところだろうか。ただし実際に稼ぐためにはそこからさらに工夫する必要があるらしいのだがその辺については後で教えてもらうことになっており、とりあえず今は流れを掴むことが重要だと思われる。

59 なお、この件についてはすでに妻にも相談済みでありその際、協力してもらうことも検討したのだが仕事上、忙しいらしくあまり負担を掛けたくないという思いもあったため今回は一人で頑張ることに決めたというわけである。よってここから先は自分だけの力でやっていかなければならないというわけだが何事も挑戦することが大事なので不安よりもむしろ楽しみの方が大きいくらいである。

60 そんなわけでいよいよスタートを切ったわけだが最初は全くと言っていいほどアクセスが無かった。しかしそこは焦らずじっくり腰を据えて運営していく方針でいたため焦ることなくコツコツ続けていくうちに少しずつだが着実に成果が出始めてきた。もっともいきなり大きな収益を得ることは難しいにしても確実に前進している手応えのようなものを感じ始めていたところ、ふとこんな思いが頭を過ぎった。すなわち今のままで本当に良いのか?もっと他に何かやるべきことがあるのではないか?という疑念についてである。

61 確かに世の中には様々なビジネスが存在していて成功者と呼ばれる人たちは皆、相応の努力をしてきたに違いないだろう。それに引き換え自分はといえば今のところこれといって目立った活躍もなくごく平凡な日々を送っているに過ぎず正直、心苦しく感じている部分があるのは確かだ。またそれだけならまだしも最近、よく耳にするようになったのが『金持ち父さん貧乏父さん』という本に関する内容でその内容とはつまりお金というものは汗水垂らして一生懸命働くことによって初めて得られるものであり決して人からもらって良いものではないというものだ。それはまさに今の自分にとっては耳が痛い話でありもし彼女がこの場に居れば説教の一つもされていたことだろう。

62 とはいえ実際のところ今の自分の生活水準を客観的に見渡した場合、どう考えても彼女の援助を受けていることは明らかな事実なのでそれについては否定のしようが無いもののだからといってこのままでいいとも思っておらずできることなら自立したいと考えている次第である。そして何より彼女にはもうこれ以上、迷惑をかけたくなかったのでここで一つ、大きく成長した自分の姿を見せておきたいと思ったのである。

63 というわけでこれから更に頑張っていくべく気合を入れ直したところで早速、今日の分のノルマに取り掛かろうとしてマウスを動かした途端、突然画面がフリーズしてしまい驚いた拍子にキーボードの上に手をついてしまったところその弾みでキーを一つ押してしまったため次の瞬間、思わぬ事態が起きた。なんとそれまで空白だったはずのページに勝手に文字が書き込まれ始めたのだ。

64 初めは一体何が起きているのか分からず呆然としてしまったもののよく見るとそれは誰かのブログへ自動的に接続されたことを意味しておりそれに気付いた瞬間、慌ててブラウザを閉じようとしたのだが時すでに遅く結局、最後まで見届けてしまう羽目になった。するとそこに書かれていた内容は主にタイトル通り、自分の経験談をまとめたものでタイトルは「サラリーマンからの脱出」というものだった。そして一通り目を通し終えた後、改めてその記事の内容を確認してみたところその内容はどれも自分にとって心当たりのあることばかりだったため思わず納得させられてしまった。というのもどうやらそこには自分と似たような境遇にいる人へ向けてメッセージが綴られていたからだ。例えば会社にこき使われ過労死寸前になった話やリストラされた末に再就職先を探した結果、ようやく決まったと思ったら実は詐欺グループの一員で騙されそうになったという笑えない体験談、さらには会社の金を使い込んだ上に横領までし逮捕された挙句、解雇され無職になってしまった人物の話など非常に生々しいものばかりだった。また中には自殺した人もおりそういったエピソードをいくつも目にしたことで自分が置かれている状況とあまりにも酷似していたため少なからずショックを受けたことは言うまでもないだろう。

65 しかも読み進めてみるとその人物はいわゆる底辺と言われるレベルの会社で働いていたようで朝から晩まで働き詰めの状態で上司から毎日のように怒られていたばかりかパワハラまがいのことを受けていたこともあり、もはや心身共に限界を迎えつつあったらしい。ところがそんな中、偶然、見つけた宝くじ売り場にて1等を引き当てたことで状況が一変しその後はトントン拍子で事が運び晴れて脱サラして起業することができたという話だったのだがその話の中には実に共感できる点がいくつもありまさしく今の自分が直面している状況にピタリと当てはまっていたため読んでいる最中、驚きのあまり何度も目を瞬かせながら確認を取るようにモニターを眺めていた。

66 ちなみになぜそんなことが分かったかと言えばそれが全て同じ銀行口座から振り込まれたものだったからである。そして極めつけはその口座番号というのがちょうど今、自分が持っているものと同じであったため一瞬、目を疑ったほどだった。というのもなぜなら基本的に個人用の口座というのは家族であっても一切、干渉しないため普通であれば他人と共用するなんてあり得ないからだ。にもかかわらずどうして自分の口座とまったく同じものを作れたのだろうか? 67 考えられる可能性としては一つしか無くそれすなわち犯人はあの女性しかいないということになるわけだがもちろん、それだけで断定することはできない。しかしながらこれまでに起きた出来事を考えるともはや疑う余地など無いも同然だった。何せあれほど手の込んだ方法で自分を嵌めようと企てるような人物なのだからそれくらい平気でやりかねないと思ったのだ。ゆえにそう確信を抱いた後は一刻も早く連絡を取ろうと思い電話を掛けてみたのだが何度掛けても繋がらず仕方なくメールで事情を説明することにした。

68 その結果、何とか送信できたようだがしかし返事が来る様子は全くなかった。それでも念のために何度か試しているうちについに反応があったかと思えばその内容は至ってシンプルなもので『さようなら』とだけ書かれていた。しかもその後、いくら待っても次の文章が出てくる気配はなく完全に音信不通となってしまったためそこでようやく諦めることにした。

69 ただし仮にそうだとしても一体、何のためにこんなことをしたのかについては依然、不明のままだった。そのためもしかしたら自分が気付かなかっただけで他にも被害者がいるかもしれないと思いそれとなく同僚や部下達に探りを入れてみたのだが結果は散々たるもので誰一人として怪しい動きをしている者はいなかったという。そうなるとやはり犯人は彼女以外には考えられないわけだが問題は動機の方だがこれについては既に見当がついていた。

70要するにこれは警告なのだ。かつて自分は彼女にこう言ったことがある。『いつまでも過去の栄光にしがみついていてはいけない。一度、手にしたものを簡単に手放すような真似をしてはいけない』と。恐らく彼女はこの言葉を聞いたことで危機感を抱き再び、自分の手の中に戻そうとしたのだろう。そしてあわよくばかつての自分と同じ惨めな思いを味わわせようとしたに違いない。ただし結果としては自分の方が一枚上手だったわけでありその点では運が良かったと言えるだろう。

71 それにしてもこうして振り返ってみると今回の件はまさに因果応報といったところだろうか。あの時、言った言葉は全て自分に返ってくるのだからある意味、自業自得とも言えるわけだがしかしだからと言って後悔はしていない。なぜならおかげで彼女と別れることができたため以前のような辛い日々を送る必要がなくなったためである。したがって今の生活は非常に快適で何一つ不自由なく過ごすことができているためむしろ感謝の気持ちさえ抱いていたのだった。

72 そんなわけでこれからしばらくは仕事にも励む一方で私生活の方も充実させていこうと考えているのだがしかし一つだけ気になる点があるとすれば果たしてこれで本当に彼女が納得するのかという点についてである。確かに一度は別れたものの最終的にはよりを戻すことになると思っていたとしたらその期待を見事に裏切ってしまったわけで下手をすれば逆恨みされている恐れもあるわけだ。つまりもし次に会った時、また同じことを繰り返されたら今度こそ命に関わる事態になるかもしれずそうなった場合、どうすればいいのかと悩んでしまうところだが幸い、今のところそのような兆候は無くひとまず安心というところだろう。

73 ただ、もしかするとまだ油断はできないのかもしれないと思いつつもとりあえず今は目の前のことを一つ一つこなしていかなければならないという思いがあったためあまり先のことを考え過ぎないようにしつつ今日も今日とてひたすらパソコンの前に座り続けるのであった。

74 そんなこんながあって半年ほど経過した後、ようやく仕事が一段落したため久々に自宅でゆっくりと休むことになった。その際、妻からはどこか旅行にでも行かないかと誘われたもののさすがに疲れたので家でのんびりしたいと答えたところ彼女も特に反論することなく受け入れてくれたため内心、ホッとしたのはここだけの話である。

75 ということでしばらく自宅に籠りっきりになっていたある日、ふと昔のことを思い出した。それは自分が中学生の頃の出来事であり当時は学校という場所に嫌気が差していた時期でもあった。その理由とは言うまでもなくクラス内におけるいじめ問題や教師による体罰の問題などが後を絶たなかったためだ。さらに加えて言うなら家庭内の環境についても決して良いとは言えず常にギスギスした空気の中、過ごしていたせいで心が休まる時がほとんど無かったといっても過言ではないくらいだ。また両親ともお互いに口を開けば喧嘩ばかりしており時には刃物で切り付け合う姿を目にしたことさえあったためとてもじゃないが尊敬できるような存在には思えず正直、失望する他なかった。

76 だからこそ自分の人生において何よりも重視すべきなのは自分自身であることに変わりは無かった。何故なら例えどれだけ恵まれている環境にいたとしても肝心の本人が堕落してしまえば何も意味が無いからである。それには無論、金銭的な部分も含まれるわけだがそれ以前に人間として正しい道から外れることは絶対に避けるべきだと思った次第である。そのため普段から心に余裕を持って物事を考えるクセを付けていくべきだと考えていた。

77 とはいえこの考え方は決して万人に当てはまるわけではなく一部の人からすればただの綺麗事にしか聞こえないかもしれないが別にそれはそれで構わないと思っている。というのもそもそも世の中というのは一人一人が異なる価値観や考えを持っており必ずしも同じ行動を取れば上手くいくとは限らないからだ。現にこれまでだって多くの人達が色々な過ちを犯してきたからこそ現代社会が成り立っているわけで逆に言えばそれを乗り越えた者だけが新たな未来を切り開くことができるのである。

78 だからこそこれまでの経験を活かしていけば必ずや明るい未来が訪れることだろう。それはすなわち幸せな生活を送るチャンスでもあるからもし興味があれば是非、挑戦してみて欲しいと思う次第である。もっともその過程で挫折したり絶望したりする可能性は否定できないもののだからといって諦めてしまわないことが重要であってどんな困難にもめげずに頑張っていくしかないと私は考えている。

79 ところで話は変わるが現在、自分はとある会社に勤務しているわけだがその際にちょっとした悩みを抱えていることがあった。というのもどうやら同僚の一人が会社の金を横領して警察に逮捕された挙句、懲戒解雇になってしまったらしくその影響で社内の雰囲気が非常に悪くなってしまったことだ。具体的に言うと社員同士の私語が増えたり互いに無視し合ったりと険悪な雰囲気になってしまいそのせいで仕事の効率が著しく低下してしまったことからこのままではまずいと思い上司に相談したところ何とかしてもらうよう頼んでみたところあっさりと了承してくれたためホッと胸を撫で下ろしたのは言うまでもないことだった。

80 その後、実際にどういう手を打ったかというとまず最初に全員に作業分担表を作らせた上でそれぞれに必要な材料を買い出しに行かせたのだがもちろんその間に自分の方も仕事を終わらせるよう努めることにした。すると結果的には定時よりも早く帰ることができた上に残業代が出たためこれといったトラブルもなく無事に問題を解決することができたわけだが逆に考えればそれくらい皆がストレスを抱えていたという証拠でもあり改めて自身の影響力の強さに気付かされた気がした。

81 そしてそういったことを繰り返しているうちに気付けば入社してから2年が経過しており今ではすっかり仕事に慣れて順調に出世街道を突き進んでいたのだがそんなある日、いつものように仕事をしていると突然、課長から呼び出しを受けたため何事かと思って会議室まで足を運んだらそこで思いがけない言葉を掛けられた。その内容というのが『明日から君に転勤してもらいたい』というものだったのだ。

82 突然のことに動揺を隠しきれなかったがしかし同時にこれはもしかして左遷されるのではないかと直感的に悟ったためすぐさま拒否しようとしたもののすでに手遅れだったようで結局、首を縦に振る以外の選択肢が無かったため仕方なく受け入れることにした。というのもその時の課長の表情があまりにも真剣そのものだったため冗談の類で言っているわけではないと察したからだ。というわけでここから先は何があろうとも決して弱音を吐いたりしないようにしようと固く決意したのである。

83 ちなみにこの時、既に嫌な予感はしていたが案の定、その予感は的中してしまいなんと翌日、辞令を受け取った際、行き先が九州だと聞かされてしまい思わず耳を疑ったのは言うまでも無いだろう。なぜなら今までの人生の中で福岡に行ったことなど一度も無かったうえそもそもなぜ自分がそんなところに行かなければならなくなったのかという疑問ばかり浮かんできたからだ。ゆえにまさかと思い課長の方に視線を向けてみるとなぜか無言で頷かれたためそれでようやく今回の人事異動の意味を理解した。

84 要は自分に対して『もうお前はいらない』と言われたも同然だったからであり恐らく向こうとしてはこれ以上、好き勝手なことをさせないためにわざわざ遠くの地へと追いやったのだろう。まあ冷静に考えてみればそれも当然といえば当然のことだった。なぜなら元々、この会社は学歴だけで判断している節がありそのために少しでも気に入らないことがあるとすぐに首を切られてしまうため誰もが必死だったのだ。

85 しかも中には過去に大ポカをやらかした結果、クビになった者もいるくらいでつまり今回、自分を陥れた人物はまさにその典型例と言えるだろう。そして当然ながらこのような悪質な行為は断じて許されるものではなくいつか必ず報いを受ける日が来るはずだと確信していた。ただその前に一つだけ言っておきたいのはたとえどこに飛ばされようとも決してくじけることなく頑張り続けようという意思だけはしっかり持っていこうと決めたということだ。86 なぜなら人生なんていつ何が起こるか分からないものでありいくら大企業に就職できたからといってそれが一生、続く保証などどこにもないのだからむしろここで挫折する方がかえって危険だと思った次第である。よって今後も気を引き締めつつ精一杯、努力していくつもりでいる以上、どうぞこれからも応援よろしくお願いいたします。

87 それからしばらくの間、会社からの連絡は一切無くこのまま忘れ去られるのではと不安を感じていたのだがしかし一方でそんな時に限って事件は起こるものでそのきっかけとなったのは例の退職した社員の後任となる新しい人材を紹介してくれたことがきっかけであった。そしてその相手こそが何とかつて自分と同期で入った新入社員の男性であり正直、驚いたもののこれも何かの縁だと思い快く受け入れることにした。

88 そうして彼と対面することになったのだが会ってみて第一印象としてはかなり真面目そうな人間だなと感じた一方、話してみると中々、面白い奴でもあったためこれならきっとうまくやっていけるだろうと判断して安心したのはここだけの話である。またさらに彼は営業成績がトップクラスのためいずれは自分の後釜になってもらうことになるかもしれないと思いつつもその日に備えて日々、精進していきたいと思う次第であった。

89 さて話は変わるが皆さんの中には最近、恋人ができた人がいるのではないだろうか。ただその際に気を付けて欲しいのは決して相手が浮気をしない人間だという先入観を持ってはいけないということである。現に世の中には数多くの女性が存在しているわけなのだがその一方で男性の方も数え切れないほど存在しているわけだからその中には女性にモテたいという一心で軽い気持ちで手を出してしまう者も大勢いるのだ。その結果、一度でも間違いを起こしてしまえば取り返しがつかない事態に陥ってしまい最終的に慰謝料を支払う羽目になってしまう場合だってあり得るのでくれぐれも気を付けるように心がけて欲しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る