第3話


「ごめんください、ちょっとよろしいですか?」そう声をかけると扉が開き中から一人の老人が現れた。すると彼女は俺を指差しながら話し始めた。

「実はこの方、お金を持っていないそうなんですが代わりに私を一晩買っていただけませんか?もちろんそういう経験はありませんのでご安心下さい」まさかそんなことを言われるとは思っていなかったので思わず呆然としてしまったが老人は興味深そうに俺のことを見つめるとこんなことを言ってきた。

「ほう、お主なかなか良い体をしておるのう、よしわかった儂が直々に相手をしてやろう、ついて来るがよい」すると彼女は満面の笑みを浮かべてお礼を言うと俺の腕を引いて中へと入っていった。

12 案内された部屋で着替えを済ませた俺はベッドの上に腰かけていた。そのすぐ隣にはあの女性が座っている。どうしてこうなったのかを簡潔に説明するとどうやら俺は彼女の身代わりとして売られたらしい。つまり俺は奴隷になったということになるのだがだからといってどうということはなかった。なぜならこうなることは初めから分かっていたことであり覚悟していたことだからだ。むしろこれで良かったのではないかと思っているくらいだ。というのも今回のように何か問題が起こった時には身代わりになってくれる人がいるからだ。そうなれば少なくとも自分は助かるだろうし周りからも責められることはない。そう考えると彼女にはかなりお世話になっていることになるので今回くらいは恩返しをしてあげようと思ったわけなのだ。もっともそうしなければ俺が殺される可能性もあるわけだからそれ相応の報酬を要求するつもりではあるが、それは別にどうでもいいだろう。そんなことよりも早く始めようと思い声をかけた。

「それじゃあそろそろ始めるぞ」すると彼女は小さく頷き目を閉じると顔を上に向けてきた。なので遠慮なくキスしたあとで服の中に手を入れて胸を揉んであげた。ついでに股間の方も弄ってあげることにしたのだがその際に彼女が喘ぎ声を出したことで思わず興奮してしまいさらに激しく責め立てるとやがて絶頂を迎えたのか身体を震わせ始めた。そんな彼女を押さえつけるように覆いかぶさると最後は一気に奥まで挿入して思いっきり果てさせた。それからしばらくすると疲れたこともあってそのまま寝てしまっていたようで目が覚めると朝になっていた。慌てて起き上がると隣にいるはずの彼女がいないことに気付き辺りを見回してみると部屋の隅で丸くなって震えている姿を見つけた。俺は服を着直すと彼女に近づいて話しかけた。

「おはようございます、よく眠れましたか?」すると彼女は恐る恐る顔を上げると小さな声で返事をした。

「お、おはよう……ございます……」それだけ口にすると再び黙ってしまった。とりあえず落ち着かせるために近くにあったコップに水を注ぐとそれを手渡して飲ませてから昨日の出来事について尋ねてみた。すると彼女は昨夜のことについて少しずつ話してくれた。どうやら最初は無理やり犯されていたらしいのだが途中から快感の方が勝り自ら求めるようになったという。とはいえ初めてだったため上手く動けなかったようだがそれでも十分過ぎるほどの快楽を得ることができて満足したようだった。しかし問題はその後に起こった。なんと行為を終えた後だというのにまだ続きがあると言われてしまったのだ。そして言われた通りにしてみると今度は口でするということになり結局朝まで続けていった結果こうなってしまったのだという。それを聞いた俺は改めて謝っておいたあとで朝食を食べるために食堂へ向かおうとした。ところがそこで予想外の出来事が起きた。それは部屋を出る時に呼び止められたのだ。一体何事かと思って振り返ってみるとそこには先程まで震えていた彼女が立っていた。一体どうしたのだろうかと思いながらも再び声をかけようとしたその時、突然抱きついてきたかと思えばキスをしてきたのである。これにはさすがの俺も驚きのあまり何も言えなかった。というのもまさか彼女がそんな行動に出るとは思いもしなかったからだ。だがすぐに我に返ると優しく抱き寄せてから尋ねた。

「どうしたんですか急に?」すると彼女は恥ずかしそうに俯きながらもこう答えてくれた。

「わ、私……零さんのことが好きになってしまったみたいなんです……」それを聞いて少し考える素振りを見せたあと正直に打ち明けることにした。実は昨日の夜、彼女と交わっている最中のことを思い出しているうちに段々と気持ちが昂ぶってきて最終的には襲いかかってしまうほどだったということを。するとそれを聞いた彼女は嬉しそうな表情を浮かべるとこんな提案をしてきた。

「もし良ければ私とお付き合いしてもらえませんか?」当然断る理由などなかったので二つ返事で了承した。そしてさらに嬉しい報告をしてくれた。なんと彼女も俺と同じ異世界から来た人間だったというのだ。これは思わぬ収穫だと思った俺は詳しい話を聞くことにした。

13 それから色々と話し合った結果、まずはお互いの情報交換をしてから正式に付き合うこととなった。とは言っても名前以外に関してはほとんど何も知らないためこれといって話すことはなかったが。ちなみに年齢は二十五歳で仕事はOLだったらしい。そのため彼氏はいたが別れてからはそういった相手に恵まれず一人で寂しい生活を送っていたそうだ。また見た目は黒髪ショートボブに眼鏡をかけており服装は地味な感じのブラウスにロングスカートといったものだった。身長は百六十センチくらいでスリーサイズは上から84・58・85らしい。そして肝心の性格の方なのだが真面目で大人しくあまり目立つようなタイプではないというがかなり優しいとのことだったので今後とも仲良くしていきたいと思った。

さて話が一段落したところでこれからのことについて話していくことになった。というのも俺と彼女の目的は同じでありそのためには同じ場所にいた方が都合が良いからである。というわけでこれからは行動を共にすることにしたわけだが一つ問題があるとすればここがどこであるのかということだった。これについて尋ねると返ってきた答えは驚くようなものばかりだった。まずこの場所は日本のとある県の山奥にあり街までは車で三時間ほどかかるということ、さらにこの辺りには民家はなく携帯の電波も届かないことから連絡手段はないに等しいということ、食料は定期的に届けられるためしばらくは問題がないこと、風呂は近くの川や滝などで済ませること、洗濯は各自で行うことなど他にも色々あったが、その中でも特に驚いたのはここは別荘地で所有者はあの老人だということだった。なぜこのようなところに別荘を建てたのかは分からなかったがその理由については教えてもらえなかった。ただ代わりにここへ来た理由を教えてもらったのだがそれによるとこの屋敷にいる人物達が全員行方不明になったらしく、それについて調査に来た警察なども皆同じような状態になってしまいやむなく撤収せざるを得なくなったのだという。しかもその数は合計で十人にも及び、その中には有名な政治家も含まれているという話だった。それで俺達はどうするのか聞かれたのでしばらくの間はここに滞在させて欲しいと頼んでみたところあっさり承諾されてしまい逆に謝られてしまったくらいである。そんなわけでひとまず話はまとまったということでその後は一緒に食事を済ませてから屋敷を出て近くにある街へ向かっていった。そして到着したところで宿を取り一泊した後で翌朝になってからギルドへ向かうことにしたのだった。

14 翌日、準備を整えた俺は朝早くから出掛けていた。向かった先は例の屋敷で、到着するなり中へ入ると早速主人に挨拶を済ませておこうと思ったからだ。

「初めまして、昨日はお世話になりました」俺が挨拶をすると彼は笑顔で迎えてくれた。

「いやいや、こちらこそ礼を言うよ、お陰で久しぶりに楽しませてもらったからのう」そう言ってもらえるとこちらとしても嬉しい限りだ。そこでさっそく話を聞こうかと思ったのだが今はちょうど仕事中で忙しいだろうから後で出直すことになった。その間暇になったので何をしようかと考えていたのだがせっかくだからこの街を見て回ろうということになり散策を開始した。

15 街の中を歩いているうちに俺はあることに気付いた。それは女性達の格好が妙に派手すぎるということである。まあ別にそれ自体は悪いことではないのだがその露出度の高さは少し気になるところだ。なにせ彼女達ときたら肩どころか胸の谷間が見えるほどに胸元が開かれていたり太ももをさらけ出していたりと、とにかく目のやり場に困るほど過激なものばかりなのだ。そのため思わず視線を逸らしているとそこへ別の女性が近づいてきたかと思うと声をかけてきてくれた。しかもその内容というのが俺を誘ってくれるもので思わず反応してしまったのだがどうやらここではそういう決まりになっているらしいので仕方なく誘いに乗ることにした。

そうしてやって来たのは路地裏にあるラブホテルで、中に入るとすぐに服を脱がされて裸にされてしまった。とはいえ今回は相手が一人ではなく複数人いたのでそれぞれ好きなように触ってきたというわけだ。さらには全身を舐められたり咥えられたりして何度も絶頂を迎えてしまった。その後も代わる代わる色々なところを責められていった結果、最後には気絶してしまうほどだった。そして次に目を覚ました時には既に日が暮れていたので急いで帰ることにして外へ出たのだがここで意外な事実を知ることになる。というのも門を抜けた先の光景が明らかにおかしいことになっていたからだ。具体的には街灯などの明かりが一切なく真っ暗になっていて人の気配が全く感じられない状態だったのだ。

16 あまりの異常事態にどうしたものかと考えていると隣にいた彼女が突然倒れてしまった。俺は慌てて抱き起こすと何があったのか聞いてみた。すると彼女は弱々しくも答えてくれた。「分からない……けど凄く眠くて……」どうやら急激な眠気に襲われているようでこのままでは危険かもしれないと思い一旦安全な場所へ移動することにした。だがそこでとんでもないことが起こった。なんと突如巨大な影が現れてしまったのだ。これにはさすがに驚いてしまい呆然としていると今度は大きな唸り声が聞こえてきたかと思えばそれが次第に大きくなっていくのが分かった。そしてその音が最高潮に達した瞬間、俺は意識を失ってしまった。

17 どれくらいの時間が経ったのだろうか、ふと目を覚ますと辺り一面真っ白な世界にいることに気づいた。そこで目の前に一人の男性が立っていることも分かった。誰なのかと思っているとその人は自己紹介を始めた。彼の名前は神だという。つまり目の前にいる男性は神様らしい。しかしそう言われてもにわかに信じられなかったのでもう少し詳しく聞いてみることにした。するとやはりと言うべきか彼が本物の神様であることが確定した。ただし本物といっても俺のような人間に転生してきたわけではなく元々は普通の人間だったが何かしらの理由で死んでしまったことでここに来たようだ。ちなみに死因について尋ねてみるとトラックとの接触事故によるものだと教えてくれた。それを聞いてなるほどそういうことかと納得できた。というのも実は俺も前に似たような経験をしていたからだ。あれは今から半年ほど前のこと、会社の帰りにコンビニへ寄って立ち読みをしていると後ろから誰かにぶつかられて商品を落としてしまったことがあった。その時はすぐに謝りながら拾ってくれたこともあってこちらも謝って許してあげた。ところがその後で買い物を終えて帰ろうとした直後に背後から声をかけられ振り向くとそこには見知らぬ男が立っていた。そしていきなり腕を掴んでくるなり強引にどこかへ連れていこうとしたために必死で抵抗したものの結局は力負けしてしまい連れ去られる羽目になってしまったのだ。その後はどうなったかというと人気のない場所まで連れて行かれると無理やりキスをされた上に胸を揉まれてしまいさらに股間にまで手を入れられた挙句に挿入されてしまったのである。だが運良く途中で通りかかった人がいたため事なきを得たものの危うく処女を奪われるところだったのだから本当に危なかった。

もちろんこれはあくまで聞いた話であり実際に体験したわけではないためどこまで本当なのかは不明なのだがそれでも十分に危険な目に遭ったのは間違いないだろう。それに今の話を聞いていてふと思ったのだがもしやあの男性もその類なのではないかと考えた。というのも以前勤めていた会社で先輩社員が行方不明になったことがあるのだがもしかしたら彼もそうなのではないかと思ってしまったからである。

18 それからしばらくの間、他愛もない話をしていたがそのうち話題は俺の事へと移っていった。なんでも神は異世界に興味があるらしくぜひとも行ってみたいらしい。それを聞いた俺は試しにどんな世界が良いのかを聞いてみることにした。すると彼はまず治安が良く安心して暮らせるような世界がいいと答えたためそれなら日本のような平和な国がいいんじゃないかと勧めてみた。すると最初は渋っていた彼だったが日本の街並みや風俗店の多さなどを細かく説明するとようやく興味を示してくれたのか今度連れて行ってもらう約束を交わすことができた。ただその際には向こうでの生活基盤を築く必要がありそのためにはやはり金が必要になると言われたのでそれも一緒に用意してくれるということになった。こうして話がまとまると早速行く準備に取り掛かったわけだが、その前にいくつか確認しておきたいことがったため質問させてもらうことにした。

まず一番気になっていたのが向こうの世界には人間以外の知的生命体がいるのかどうかということだった。仮にいるとしたらそれはどのような種族になるのかと尋ねるとそれについては教えてくれなかったがその代わりに獣耳族という種族がいるらしいことを教えてくれた。また他にはエルフやドワーフといった亜人種も存在するらしくそれらは総称して妖精族と呼ばれているようだ。他にも巨人族や小人族などがいるそうだがその中でも代表的なのは吸血鬼だそうだ。何でも人間の血を吸って生きる種族であり寿命が長くて数百年ほど生きられるうえ容姿端麗であるため非常に人気があるのだという。また中には悪魔や天使などの他の存在と契約することで真の力を発揮する者もいるそうでそういった者は魔王と呼ばれることが多いらしい。

19 一通り話を聞いたところで俺はある疑問を抱いた。そもそもなぜ神がわざわざそんなことを聞くのかということだ。もしかすると他に何か目的があるのではないだろうかと考えたのだが残念ながらその理由については何も答えてくれなかった。ただ最後に一言だけ「君ならきっと上手くやれるはずだ」と言われてしまいそれ以上追求することはできなくなってしまったのだ。

20 いよいよ出発の時が来た。といっても特別なことは何もなくそのまま門をくぐるだけで終わりだった。あとは向こう側の世界に着いてから改めて状況を確認しようと思っていたのだがその必要はなかった。なぜならそこに広がっていたのは見慣れた風景だったからだ。いや正確には見慣れてはいないかもしれないがとにかく見覚えのある建物などが建ち並んでいたからである。しかもよく見るとそこは元いた世界で自分が生まれ育った街だと気づくと途端に嬉しさが込み上げてきた。

21 というわけで早速自宅に向かうことにした俺は懐かしさを覚えながらも道中では色々なことを考えながら歩いていった。例えば自分の両親は今どうしているのか、家族は今も元気にしているだろうかなど気になることはたくさんあったが、まずは直接会って確認したかったので逸る気持ちを抑えつつ急ぎ足で向かっていった。そしてついに到着した家の前に着いたところでチャイムを鳴らした。すると家の中からバタバタという足音が聞こえてきて勢いよく扉が開かれると同時に誰かが飛び出してきたかと思うといきなり抱きついてきた。それは母親であることが分かったのだが俺はあまりにも突然の出来事だったため咄嗟に反応することができなかった。そのためしばらくの間されるがままになっていたのだがしばらくして落ち着きを取り戻すと彼女の方から声をかけてきた。どうやら心配していたようで今までどこで何をしていたのか問い詰められたのだが、まさか本当のことを言うわけにもいかず適当に誤魔化しておいた。ただ俺が無事だと分かると彼女は安心した様子を見せていたが一方でどこか残念そうでもあった。どうやらもっと喜んでくれると思ったらしく拍子抜けだったようだ。とはいえひとまずはこれで安心できると思った俺はとりあえず中へ入ることにした。そして久しぶりの我が家ということでゆっくりくつろごうとしていたのだがその時、玄関の扉が開く音がしたかと思えばそこから一人の男が入ってきたのが見えた。しかもそれは俺にとって全く見覚えのない人物だったのだがどういうわけかこちらを見た瞬間に固まってしまったのである。一体どうしたのかと思っていたら突然名前を呼ばれたので驚いたが、そこで彼が俺の父親であることを知った。それで挨拶を済ませてからお互いに色々話してみると意外と共通点が多かったことからすぐに打ち解けることができた。そうしてしばらく話をした後で夕食を食べることになった。そこで料理を作っている母親の様子を見ているうちに一つ気になったことがあったので尋ねてみることにした。するとそれによるとどうやら俺の父親の年齢は30代後半ぐらいらしいが見た目からは20代前半にしか見えないということ、それに若々しいだけでなく顔立ちも整っていることから近所の女性たちの間では憧れの存在になっているらしかった。確かによく見てみるとかなりのイケメンであることは疑いようがないので当然といえば当然だといえるだろう。22 それにしてもここまでの美形となると逆に違和感すら覚えてしまうほどだ。そこでさらに詳しい話を聞こうとしたのだが何故か言葉を濁されてしまったためこれ以上の追及はやめておいた。ただ一つだけ言えるのはこの顔は決して整形などではなく生まれつきのものだということ、そしてこの顔が後にとんでもない事件を引き起こすことになるのだが、この時の俺には知る由もなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る