ヒマワリとリス
原っぱに一本、ひまわりが生えていました。
リスさんが通りかかると、ひまわりに驚きました。
「わぁ、ひまわりだ。種ができたら食べたいな」
しかし、これが誰かの持ち物ならば、勝手に食べてはいけません。
リスさんは通りかかったキツネさんに「このひまわりは誰かの物なの?」と聞きました。
キツネさんは「誰のでもないよ」と答えます。リスさんは喜びました。
「じゃ、ぼくがこのひまわりの種を食べてもいいんだね」
「食べてもいいよ。でも、種はたくさんできるし、種を埋めればまた花が咲くんだよ」
とキツネさんは教えてくれました。
リスさんはひまわりが花をつけ、種を作るのを待つことにしました。
食べるのと、育てるので分けようと考えます。
リスさんがひまわりのそばにいると、ウサギさんやハリネズミさん、タヌキさんなどたくさんの動物が声を掛けてくれました。その都度、ヒマワリを育てて、種を取りたいことと食べたいことを言いました。
そしてみんな、誰のでもないから食べてもいいし、増やしてくれるなら嬉しいと言ってくれました。
リスさんが面倒を見てくれるのだから、きっと咲いてくれるだろうと思い、キレイに咲くのを楽しみにしてくれました。また、ヒマワリが育つ手伝いをしてくれるのだから、リスさんが種を半分食べても当然だと感じているようでした。
ヒマワリは大きな花を咲かせました。
キツネさんやウサギさんたちがやってきて、喜びました。茎の太さや花の大きさに驚いていました。
リスさんが育ててくれたことに感謝も伝えました。
ここで水を飲んだり、ご飯を食べたり、皆で楽しみます。
太陽に向かってパッと咲いていたヒマワリも、徐々に頭を下げていきました。
花のころが終わり、種ができ始める――そんな予感がし始めます。
秋になり種がたくさんできました。
リスさんは喜び、収穫しようとしました。そのとき、クマさんとオオカミさんがやってきました。巨大なクマさんにリスさんはびくびくします。
クマさんとオオカミさんは言いました。
「このひまわりは俺のものだぞ。勝手に取るんじゃない」
「この原っぱは俺たちの物だぞ」
リスさんは怖くて震えました。でも、楽しみにしていたひまわりの種を諦めることはできません。
「ここはみんなの広場だよ」
「俺たちの物だ」
クマさんの大きな手がポーンとリスさんを吹き飛ばしました。
リスさんが地面に落ちるより前に、キツネさんが受け止めてくれました。
「何があったんだい?」
キツネさんや他の動物たちは騒ぎを聞きつけてきてくれたのです。
クマさんがリスさんが言うより早く、
「この原っぱもひまわりも俺のものだ」
と言いました。それに対して、キツネさんたちは「違うよ、みんなのものだよ」と答えます。
クマさんもオオカミさんもこの原っぱが皆のものだと知っていました。リスさんをからかうつもりで言ったはずの言葉が、暴力を振るってしまったことで取り返しのつかない状況になっていました。いえ、「ごめんなさい」と言えば終わりだったのですが、クマさんは言えませんでした。
クマさんはやり場のない怒りとともに、ひまわりを折ろうしました。
そこにリスさんがとびかかりました。小さなリスさんでは止めることは難しいのですが、それでも、黙っていられませんでした。
クマさんの振るった前足はリスさんに当たりました。太い爪がリスさんに当たったうえ、投げ飛ばしてしまいました。そのリスさんはオオカミさんの頭に当たりました。
打ちどころが悪く、リスさんもオオカミさんも死んでしまいました。
クマさんは「俺のせいじゃないからな!」と森に逃げました。
「なんでこんなことに」
キツネさんたちは、悲しみました。
穴を掘り、リスさんも、オオカミさんも埋めました。
クマさんに対する怒りよりも、悲しみでいっぱいでした。
ひまわりの種はそのままに、皆、立ち去りました。
それから一年。
原っぱはひまわりでいっぱいでした。
クマさんはひまわり畑を見て、泣きました。
キツネさんたちはそれを見て、怒るのをやめました。でも、消えた命は戻りません。
ひまわりの種ができたころ、小さなリスがやってきて、食べていきました。
小さいリスなので、そんなに食べません。
その翌年も、翌年も……たくさんのひまわりが咲くのです。
四つの心の物語 小道けいな @konokomichi
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