下読みをする私と、最年少受賞作家の私。そして漫画家志望の私の三つの視点で描かれる三つの物語。しかし表現者へのメッセージとして、この三つの物語は、関連している。
一つ目の物語の主人公は、小説の下読みをする私が主人公だ。下読みをしている中で、自分の小説に関する考えや表現を見つめ直す。どこかお仕事小説めいた物語だ。そんな私の前に、不可思議な女性が現れる。女性は人目もはばからず、歌いながら踊っていた。そんな彼女はある日、主人公の同僚の目に留まる。そして同僚はこの女性に小説の才を見出し、受賞させる。
二つ目の物語の主人公は、最年少で賞を受賞した私だ。その私がかつて受賞した賞は、年齢が若い作家を受賞させる傾向にあった。そして、ある少年が私の最年少記録を更新して、話題となる。しかし、その少年の小説が実は盗作だという疑惑が持ち上がる。私は小説の本当の作者である少年のおじに会いに行くのだが……。
三つ目の物語の主人公は漫画家を目指す私だ。ここでは一転して、幻想的な世界観が展開される。漫画家を目指すが一向に腕が上がらないと悩む主人公は、少年によって、ある街へと誘われる。そこは本の街だった。つまりは表現者の街だ。
下読みする私から、かつての受賞者としての私、現在表現者を目指す私へと物語は推移していく。それぞれが独特の世界観を持ち、とても惹きつけられる一作です。
是非、御一読下さい。
芥川賞にノミネートされた老女も
直木賞にノミネートされた少年も
軋轢や苦悩を抱えてペンを握った、と想像した。
こんな人達が授賞出来る訳が無い、と捨て置いたが
こんな人達だからこそ書ける一文があるのでは無いか?
選ばれることが尊い世界なら
選ばれない人間の方が多い世界とも言い換えられる。
読者として物語を追いながら
筆者の心情に寄り添いたくなった。
コメント欄には、肩の力を抜いて書けたと言う筆者の感想があった。
コメント欄から、筆者の心情が察することが出来るなんて貴重だ。
難産でもいい、寧ろその方が完成時にひとしおだろう。
安産ならいい、尚更いい。楽しんで書けたら万々歳だ。
正確に数えるなら、四人の書き手が登場する逸話。
的確に添えるなら、誰一人として欠けてはならない物語だと思う。
時に辛辣なコメントも残したが、全ては作品改善の為に。