第18話

国王の一声で会場から連れ出される事になったモニカは尚も喚き散らしている。しかし、彼女の言葉は最早誰にも気にされること無く指示を受けた衛兵に連れ出されて行った。


後に残ったのは生暖かい空気と奇妙な静寂。


冷たい人間だと思われていたフレデリックの妻への溺愛っぷりに周りの人々は皆毒気を抜かれたような顔をしていた。


ただただ、居た堪れない。

このぬる〜い視線が辛い。


セシリアがあまりの羞恥に顔を覆うと、ことんと首を傾げたフレデリックが彼女の手を取って顔を覗き込む。


そして一言。



「どうしたの?足りなかった?」


違う!どうしてそっちに行くの!

言葉を発せずに真っ赤な顔でぱくぱくと口を開閉するばかりのセシリアに、またことんと反対に首を傾げたフレデリックが重ねて問う。



「まだまだ行けるけど。全然、言い足りない。続けるね?」

「わぁぁああ!!!」


止まらない。

暴走し出すフレデリックについに大きな声を出しながら彼の口を手で塞いだセシリアに同情の視線が集まる。


その期を逃す国王ではなかった。



「さ、さぁ、パーティーの開幕だ。皆、心ゆくまで楽しむように。」


勢いに任せて開幕宣言を出す。

止まっていた音楽が再び鳴り出し、立ち止まっていた人達もまばらに動き出す。


今夜は舞踏会。

パートナーと思い思いに踊り出した人々の輪の中に向かいながらも皆まで言えなかったフレデリックはほんの少しだけ不満そうな表情を浮かべる。


向かい合って互いにお辞儀をした後、フレデリックはセシリアの腰に、セシリアはフレデリックの肩に手を置く。

そうして密着した二人が踊り出そうとしたその時、不意にセシリアがフレデリックに顔を近付けた。

周りからは見えない絶妙な角度。

軽く啄むように口付けると、そのまま彼の耳元で囁いた。



「家に帰ってからゆっくり聞かせてね……?」

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いつも私をバカにしてくる彼女が恋をしたようです。~お相手は私の旦那様のようですが間違いはございませんでしょうか?~ 珊瑚 @sango0852

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