第17話

「え……?」


これには予想もしていなかったセシリアから思わずと言った声が上がる。



「だってさ、セシルこの人のせいで沢山辛い思いしたでしょ?でも逃げられなかったって言ってたから良い機会かなって思って。……余計なお世話だった?」


そんな事考えもつかなかった。

確かにモニカが自分から離れてくれるならそんなに嬉しい事はない。だから笑って、それを受け入れることにした。



「ううん、全然。確かにそうだね。ありがとう。」


しかし、モニカは納得しなかった。幼い頃からそれが当たり前だったのだ。彼女にとってセシリアは自分より下位の存在であり、貶し貶める為の存在。自分をよく見せるためのアクセサリーなのだ。



「……っ、何よそれ!辛い思いですって?本当の事を言って何が悪いのよ!?私にその女より劣っているところがひとつでもあると思って!?平凡な見た目に面白味もない性格。そんなつまんない女のどこが……!」

「……平凡な見た目?セシルが?」


途中まで大人しく聞いていたフレデリックだが、とうとう我慢できなくなったのかモニカの話をさえぎった。



「お前の目は節穴なのか……?緩く波打つミルクティーブロンドの髪は細くて繊細で光が当たると不思議に煌めいて美しいし、チョコレートブラウンの瞳は同じ色の長い睫毛に縁取られてぱっちりと大きい。肌だってしみひとつ見当たらない滑らかな肌質だし、それに身長だって平均より少し小柄で僕が抱き締めるのに丁度いい身長差なんだ。抱き締めた時僕の顔を見上げる為に自然と上目遣いになるセシルは…………」

「ストップ!フレディ、ストップ!!!!!!!!!!」


流石に羞恥心に耐えられなくなったセシリアが制止をかける。途中から意図が違う。それはただの惚気だ。しかし、自分は至極真っ当な事を言っていると信じて疑わないフレデリックはキョトンとした表情で首を傾げるばかりだ。


そんな彼らを見ていた国王は隠しきれずにほんの少しだけ辟易した表情で、話を切り上げる事にした。これ以上続けてもきっといつまでも平行線を辿るだけになるだろう。



「その女を連れて行け。沙汰は追って出す事とする。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る