看破
いつの間にか
「ユルスン!具合どう?」「どう?」
来たか、とひそかに息を吸い込む。「だいぶんいいよ」
よかった、とチティが言い、パティが遠くでことり、ことり、となにかを置く音がした。
「そうそう!朝から何も食べてないんじゃいつまでも治らないでしょ?ユルスンのだーいすきなもの持ってきたのよ」
「だいすきなもの?」
「ほら、あれよあれ」
分からない。眉を寄せて唸った。「ちょっといま、頭がぼうっとしてて」
なんだか不思議なにおいがする。
二人は寝台をきしませて登ってきた。
「ゆでたまごよ!」「たまご!」
「ほんとうに?食べたいな」
なんだ、そんなものか。内心ほっとして起き上がろうとした。――すると、ひやりとしたものが首筋に当たった。
「――――ユルスンはたまごがだいっきらいなの。死んだって食べないわよ」
ぞっ、と血が下がった。刃物かと錯覚する鋭利な爪が引っ掻いてきて思わず悲鳴をあげ、逃げようとした。が、動けない。仰向けになったまま
「あんた、だれ?あたしたちのユルスンをどこにやったの?」
「ユルスン、どこ!」
ギギ、と爪がさらに食い込み、熱い水が皮膚をつたう。鈍い痛みに呻いた。
「これは、おまえらの主人の
「でも中身は違うんでしょ。ならユルスンじゃないじゃない。いまここで殺したげる」
「待って!この身体が壊れれば、ユルスン自体だって死ぬんだぞ!戻れなくなって、ずっとさまよって……悪霊になるんだ、きっと!」
「………………」
二人は黙る。やがてすっと手を引いた。ほーっと息をついたが、いまだ自由は利かない。
「……おまえらは、
「あんたごときがユルスンの声を使うんじゃないわよ」
問いに答えはなく、憎々しげに指で突かれた。「ぜったい出ていかせてやる」
「出ていかない。
そうね、とチティはせせら笑った。「今はまだしない、逃がさない。ユルスンがあたしたちを迎えに来るまで出さないわよ」
「え?」
「ださない!」パティが噛みついてきて呆然とし、部屋じゅうを満たす
「あんたのそれはたぶん
「な……おまえら、何者」
「あたしたちは
せいぜい苦しむといいわ。甲高く笑った。「自分の身体に戻りたくても戻れず迷子になるさまを眺めててあげる」
「や…やめろ」
「ユルスンで言われるとゾクゾクするわね。でもだーめ。あんただってこれまでそうやってたくさん殺してきたんでしょ。おイタはここまでよ、小さな魔女さん」
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