七章
監禁
今度こそ死ぬのだろうか、と
小さな明かり取りから射し込む陽はすでに赤カブ色に染まりきっている。すぐ夜になるだろう。
明日まで
重い長靴の音は複数、黙って鍵を開け、無言で引き起こしたのはメフタス。その
「まだ生きてるな?立て」
無理に決まってる、と睨もうとすればメフタスの配下に目隠しされた。
「ひとつ訊いておこう
…………教えない。こいつなんかに教えるものか。ガチガチと合わない歯を食いしばった。
「まあいい。そうなったとき試せばいいだけだ」
掴まれた力は弱まらず、ほぼ引きずられて出入口へ歩いた。痛い。肩が抜けそうだ。
「オルヌド。そなたにはまだやってもらわねばならないことがある」
「……その名まえで、……よ、ぶな」
「いいや。これからそなたはオルヌドに戻る」
別の震えがはしった。
「な……に」
「
いったい、誰のために。疑問が分かったのかメフタスはふっと鼻で
「いまさら忠誠を誓うべき
「…………だ」
メフタスは小さな頭を掴み上向けた。「なんだと?」
「……わたしは、もう、人殺しはごめん、だ」
「いまさら何をほざくか。力を使わぬとしてもそなたはいついかなる時も追われ、捕まり利用される
「…………ふん」
こいつは馬鹿な男だ。
「デルグじゃない、なら、わたしを、使いこなせるわけが、ない。卑怯者の、クズめ」
「そうか?」
ばちりと手を壁に叩きつけられ、すとんと何かが真ん中に立つ。
「あッ……⁉ああぁ‼」
溶かした鉄を浴びたように熱くなった。
「口の利き方には気をつけたほうがいい。次は腕を落とす」
血流の動きに合わせて脈打つ激烈な痛みに
剣を引っこ抜かなければとしたがびくとも動かない。苦しむ様子をメフタスは眉ひとつ動かさず眺めた。
「オグトログイは愚かな者を側には置かなかったゆえ、そなたももっと賢いはずだ。駄々を捏ねず流れに身を任せるがいい。
オグトログイのためにそうしたと同じ、ただ『見る』だけでいいんだ。そして、毎日何人かに『入って』、少し痛い思いをするだけ。それだけで…………。
――――オグトログイはお前が求めていたものを真に与えたか?
突然、面影が脳裏によぎった。
――――ツェタル、目を覚ませ。
「…………あ…………」
おとなしく従ったとてこれからずっと命を保証されるとは限らない。どころか、たぶん言う通りに敵を操っても次から次へと要求は増え、逃げられないよう囲われる。抵抗すれば今のようになる。終わらない。何も見るなと言う者さえもうおらず、むしろもっと見ろと
けれど、でも――首に掛けた石に触れた。
――――アニロンの王センゲはツェタルを決して見捨てない。
「た、すけて……たすけて」
見捨てないと言うなら、今ここに来てよ。
メフタスは大笑いした。「この期に及び命乞いするとは。ありとあらゆるものを
最悪な頃合いで目隠しがほどけた。メフタスはぬらぬらと血濡れて光る刃をなんの力みもなく振りかぶる。
「やっ、やめろ。やめろ‼」
「神は二物を与えずという。特別な眼の力があるのに五体満足では身に余ろう」
落ちる。落ちてくる。だめだ、イヤだ、怖い‼
絶望の衝撃に耐えるため眼をつぶろうとした。
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