湖畔
――――間に合わなかった。
首だけになっても、
標高はそれほどない。昼を過ぎて陽射しが強くなった。腹が減って死にそうだったが、野山に生えるものには詳しくない。いくら美味しそうでも毒があったら、と思うと不用意に口にできなかった。
ヒュンノールでの食事は素晴らしかった。切なく思い出して溜息をこぼした。いつでも温かくて、柔らかくて、好きなだけ食べても良いと言われていた。務めをしっかり果たすなら金銀もたくさん。
けれど、ごちそうやごほうびにさほども執着は無かったのだ。必要なのは主に褒められ、ずっと側にいさせてもらうこと。それがなければどんなものを与えられてもつまらなかった。
オグトログイはなぜあのとき、自分を殺さなかったのだろう。
だって、自分は彼の〝
(いっそのこと、殺してくれればよかったのに…………)
こんな見ず知らずの、しかも
絶望でどうにかなってしまいそうだ。無心に斜面を登り続け、陽が傾き周囲が
水だ、と歓喜し安全を確かめず頭を突っ込んだ。夢中でがぶ飲みし、ぷはぁ、と満足してやっと落ち着く。泉は深い青と緑を混ぜ合わせた色で透けていて、中できらきらと小魚の群れが泳いでいた。衣を脱ぐ。汗をかいて乾いてを繰り返し気持ち悪かったのだ。
冷たさを無視して足から滑り込み、
水がたくさんあるところだ、と垢を擦りながら
そうだ、ここは人もいないし飲み水には困らないからしばらく泊まろう。食べられそうなものを探して、寝床をつくろう。本調子になってからヒュンノールに帰ればいい。馬は、今度はバレないよう上手くやらなければならないが。
新たな計画を思いつき、少し前向きになって伸びをした。
「――――誰だ?」
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