76 食国、七年を要約する
かつて
「
悟堂が名を呼ぶと、
ひた、と止める。
「
悟堂は
食国が「
「彼の処遇をどうするかは僕の自由と取り決めたはずだ。その引き換えに、僕は
野犴は、静かに短刀を下ろすと、外套の内側に納めた。
「承知いたしております」
「下がれ。
「御意」
野犴は、それ以上跡を
「久しぶりだね、
腕の中に口元を
「――御子。これは一体、どういう状況なのでしょうか?」
困惑を隠せず悟堂は問いながら辺りを見回した。
困惑の原因はそれだけではなかった。食国は、確か耳が利かなかったはずだ。悟堂は、こんなに淀みない言葉を操る彼を知らない。
ふと見れば、食国の左足首にも石の
「見ての通りだ。僕の立場も君と大差はない」
「――の、ようですね」
「君は、七年間眠っていたんだ」
「七年、ですか」
それは思っていたよりも随分と長い。悟堂の伏せた本音を
「ここは
食国の言葉に、今度は悟堂の方が頷いて見せた。
「聞き及ぶに、君の評判は随分と悪いらしいな」
「ああ……ええまあ、そうでしょうね」
「ただ、君が本当にそこまで信頼するに値しないのかどうかは、あいつらの話だけで判断したくなかった。なんせ人の意志は完全無視で強引に事を進めるきらいがあるからな。特に頭領が。だから、僕が君の監視を請け負った」
「――納得しましたが、それにしてもすっかり呆れられてしまったようですねぇ」
苦笑する悟堂に、食国は見下げ果てた眼差しを向ける。
「
「いや、確かに。
じゃらりと鎖を引きずりながら、悟堂は
「それにしても、『環』で繋ぐとは――しかも二本ときた。一体どこのどんな男二人を犠牲にしたんですか?」
食国は、にやりと口の端だけで笑んで見せた。
「それで鎌を掛けたつもり? それとも『
食国の言葉に、悟堂は噴き出した。
「願わくば後者であっては欲しくないし、一応前者ですよ。――つまり、
『環』の生成条件――即ち、必要なのは『色変わり』なき男の、連結した
「ああ、知っている。それに勿論その生成の術も掌中に収めている。『色変わり』の必要な
「おやおや、それはぞっとしないですね。では、あなたの足のそれも同じく、という事ですか」
二人は、
「――やめよう。
「……そうですね」
食国の溜息と共に、茶番を終える。
「
悟堂は皮肉気に笑った。
「ええ、それは勿論。――お互い難儀な身の上になりましたね」
七年前、
当初、彼等が運ばれた場所は
豊州は
あまりの破壊力に大笑いした
『環』によって捕獲された者の声は、尾椎の保持者に筒抜けになる。また、その力も保持者の意のままに封じられてしまうのだ。
弱体化した食国は、無言を
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