第25話
まるで朝のような日差しの明るさに、目が覚める。二日酔いのせいで、気分は最悪だけれど。
いや、朝みたいな日差しというよりも、完全に朝日だこれ。待って、ということは昨日の夕方頃から今まで寝ちゃってたのか。
シュルクさんに申し訳ないな、飲みの相手になれたらよかったのに。
てか左腕がやけに重いな、もしかして筋肉痛にでもなっちゃったのかな。
運動不足か、魔法に頼らずトレーニングしないと。てかいい匂いする、ふわって桜みたいな匂い...。
「...んに.....?あ、おはよ。」
「うわああぁぁぁ!!?!!?」
*
「もぉ〜〜、なによ!あんなに叫ぶことないじゃない!!」
彼女が怒るのも無理はない。目覚めたらバケモノを見た時みたいな叫び声が聞こえて、それが自分に向いていたものだと知ったらなおさらだ。
「いや、酒に酔った勢いでやらかしたのかと思って....。」
「あんな人前でやれるほど肝が据わってないでしょ、あんた...。」
「....。」
サキの言うとおりだ。何も言えない。
寝起きだから思考力が落ちてる、なんて言うのは言い訳だ、反省しとこう。
「てか、他の3人は?」
「ああ、団長さんとイーファちゃんは傭兵団の仕事、エフィちゃんは...オオカミ?の散歩に行ってるわよ、アジトの人と。」
そっか、イーファちゃんは一時離脱しただけでまだ傭兵団だったな。
いきなり連れて行って1ヶ月近く帰れなかったし、仕事溜まってたりするのだろうか。そういうそぶりを見せないから気づかなかったけど、無理させてたかも知れない。
でも、マンスター街で大規模戦闘が起こって1ヶ月もしないうちに、傭兵団の仕事に行こうとするイーファちゃんもすごいな、ほんと。
さて、俺はどうしようか。コバっさんに貰ったお金も底をついてきたし、村でアルバイトか何かをする必要がありそうだ。
「なあ、サキってどうやってお金稼いでる?」
「お金?んー...あたしは住み込みだから稼いでるわけじゃないけど、ダンジョンとかクエスト、討伐依頼...とかはどう?」
「それだ!」
ダンジョンにクエスト攻略、なぜ今まで気がつかなかったんだろう。異世界の代名詞というレベルの要素、今まで忘れていた。
ギルドに掲示板があったはずだから、そこで受注できるはず。そうと決まれば早速ギルドに...。
「うっ...気持ちわるい...」
「あーもう、二日酔いなんだからクエストなんて無茶しちゃダメじゃない!」
「大丈夫だいじょぶ...ここで稼がないと...」
「もー...だったら、あたしもついて行く!それなら何かあっても大丈夫でしょ?」
確かに、この状態で単独行動なんかしたら草原のスライムにも負けそうな気がする。
でもサキって戦闘経験あるのだろうか...。
「わかったよ。でも、サキって適正魔法の鑑定とかしたことある?」
「何それ?こっちに来てからはずっと炊事家事してたから、外のことはよく分かってなくて。」
まだしたことがないのか、じゃあ鑑定が先だな。実践経験ないサキを、俺がどれだけカバーできるか心配だな。そもそも今まで助けられてばっかだったし。
*
「適正魔法は雷属性みたいですね。魔力量はかなりあるので、今からでも魔法使い名乗ってもいいかもしれません。」
「さ、サキにそんな才能が...?」
何かこう、わからせを食らった気分だ。俺の時は魔力低いとか特訓必要だとか言われたのに...。
「さっ、鑑定も済んだんだし、討伐依頼とか探しましょっ!」
「...はい........。」
前と違って、掲示板に貼られている紙に書かれた文字がハッキリと読める。サキ相手に情けない姿を見せるわけにはいかないしな。
クエスト関係には何も知見がないのでいまいちわからないが、クエストにはランクが指定されているらしい。Fから始まり、最高ランクはSくらいだろう。
ただ、コノート村に関しては小さな村ということもあり、S級レベルのクエストというのはなさそうだ。見ている限り、Bあたりが最高ランクらしい。
たくさんあって、どれを受注すればいいんだろう。あんまり高ランクのクエストを受けると命が危ないし、かといって下すぎても稼ぎになるか怪しい。
「よし、このチップマンク討伐ってやつやってみるか。ランクはDだから、俺でも行けるだろ、多分。」
早速受付の人に討伐クエストの受注お願いして...。
「ダメです」
思ったより丁重に断られたな。え、もしかしてクエスト受注には知らないルールがあるのか...?
「あのですね、なぜ討伐クエストにランクが指定されているのかわかりますか?」
「いや...」
「クエストっていうのは、冒険者の方のランクに応じて受注できるんです。ライセンスカードに書いてあるやつです。」
そんな表示、見たことないけど...。ってめちゃくちゃ書いてある、端っこにガッツリ書いてあるじゃんこれ。
いつもカード持つ時右手で持つから、親指で隠れてたのか。
「今のあなた達が受注できるのはEランクまでです。オススメは....あ、こちらはいかがですか?」
*
俺たちは今、村のゴミ拾いをしている。食べ物の容器だったり、ポーションのびんなどが散乱しているので、こういうゴミを黙々と拾うクエスト...らしい。
Eランクのクエストを何個か見たけど、他は子守りとかそういうのしかなかった。討伐クエストが一つもないとは思わなかったよ、無知って怖いね。
「俺らって何してるんだろうね...。」
「ランクでしょ?こなせば上がるじゃない。2人で頑張ればすぐ上がるわよ。」
なんでこいつはこんなにポジティブなんだよ、昨日の大泣きが嘘みたいだな。...まあ、そういう性格だから今まで親友でいれたんだろうけど。
それにしても、異世界でゴミ拾いなんてするとは思わなかった。現実でも、中学生くらいまではボランティア活動でやっていたけど、まさかお金を稼ぐためにゴミ拾いをするとは思わなかった。
「お金稼ぎって大変だな...。」
氷使いの日常 竹とんぼ @Taketonbo_Iroha
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