第24話
コノート村にいた時に、よく特訓していた裏庭まで引っ張ってきた。移動している間も俺に対してなにか色々言ってきていたけど、焦りすぎて何も聞いていなかった。
「よし、ここなら大丈夫だろ...」
「...なんでこんなところまで連れてきたのよ。」
「色々聞きたいことはあるし、そっちもあるだろうけど...単刀直入に聞く、サキ...お前死んだだろ。」
そう、異世界にいるということは、俺と同じように死んだからここに来たはずだ。
サキは知る限りで、病気も何もしていなかった、健康なこいつがここにいるってことは、考えたくないが自殺でもしたのだろう。
「...何よ、あんたが先にいなくなったくせに。」
「それは...ごめん。でも、だからってなんで死んだんだよ!」
「それは...言えるわけないじゃない。.....いつ死のうがあたしの勝手でしょ。別にとやかく言われる筋合いないと思うけど?」
サキが何を考えているのか、全く読めない。生前のこいつも、たまに変な挙動をすることはあったが、ここまでじゃなかった。
「...俺は幼なじみの仲だから....心配で...。」
「っ....そ、そう...。でも、あたしだって...心配だったんだから...。」
そういうと、サキの顔が曇る。うつむいて顔が見えなくなったと思ったら、地面にぽつりと水が落ちるのが見えた。
本当に、寂しかっただけなのだろうか。友達の訃報を聞くのは、やっぱり辛かったんだろうか...。
「...ごめん。先に...いなくなって。落ち着いたらさ、こっちの生活の話でもしようよ。あの2人の話も...するからさ。」
「...うん。」
背中を軽くさすった後、肩を貸すようにしてアジトに戻った。
*
「も、もう大丈夫だから。ありがと...。」
まだ少し目の赤みが残るが、涙は止まっていた。せっかくだから一緒に話そうと、部屋に連れてきた。
俺の不注意で親友を悲しませたことは、反省しなきゃいけない。それに、サキは感情が出やすい分、こうやって目に見えてボロボロになってしまってるんだ。
いつこっちに来たのかも聞かないと。多分、例の天使に色々言われて連れてこられたんだろうし。
「すみません、待たせちゃって。こいつ、俺の知り合いなんです。一緒に飲んでもいいですか?」
「おお、そうだったのか。いいさ、一緒に飲んで色々と話そうじゃないか。」
すでにジョッキ何杯か飲んでいるのか、シュルクさんの顔はすでに赤い。ご丁寧に酒樽まで持ってきて、気合い入ってるな。
「2人とも酒は大丈夫か?ジュースも用意してるから気にせず好きなのを飲んでくれ。」
「あ、わざわざどうも。一杯だけ頂こうかな。」
せっかく用意してもらったし、一杯くらいは頂かないとな。
酒強くないから、これだけにしとこう。
*
私、イーファです!
コノート村に帰ってきてから、団長さんのご好意でちょっとした宴をやってます。
酒樽まで用意して、すごく気合が入っているなぁって思っていたら、イツキさんがジョッキの半分を飲んだあたりで倒れてしまいました。
「イツキくんイーファに弱いと思ったら、酒にも弱いのか!!私はまだ飲み足りないからな、勝手に飲むぞ!」
団長さんも、お酒が入ると途端に気が大きくなってこんなことになっちゃうんですもん。いつものかっこいい団長さんと同じとは思えないですね、ほんとに。
「も〜...お酒得意じゃないなら、弱いなら断ってもいいんですよ?」
「これが...現代社会の縮図....てな....」
そうひとこと言い残すと、イツキさんはぱたりと床に倒れてしまいました。
こんなところで寝たらお腹が冷えちゃうので、ちゃんとベッドに寝て欲しいなぁ。
「もー、イツキったらお酒弱いのに無理して...ほら、ベッドに投げちゃうからねー。」
そう声をかけたのはサキさんで、手を入れ込んだと思ったら、軽々と持ち上げてベッドに運んじゃいました。すごい、鍛えてるのかな。私もイツキさんを持てるくらいに成長できたら...なんて。
「...ん、お兄ちゃん....ぎゅー.....」
あ、エフィちゃんが抱きついた。羨ましいなぁ、私も眠いって言ってベッド飛び込んじゃおうかな。でもサキさんのこと気になるしなぁ。
「団長さん、ちょっとお手洗い行ってきますね。」
「おう...ひっく....」
サキさんが席を外すみたい、チャンスだ。イツキさんとどんな関係なのかを聞いておかないと、なんかモヤモヤしちゃうから。
あんなに仲がいいなんて、ちょっとだけ嫉妬しちゃいます。
「私も行ってきます!」
*
「...あの、イーファちゃんだっけ。なんでついてくるの?」
「えっ、あ、あの、深い意味はないんです!ちょっと気になることがあって...」
そう、イツキさんとどんな関係か聞かなくちゃ。でも初対面の人に聞いてもいいのかな...。
「あ、あの、その...イツキさんとは!ど、どんな関係なんですか?」
き、聞いちゃった...。でも、ただのお友達のはずだし大丈夫ですよね....。
「イツキと...?んー、深い関係...?いや...なんだろ...。」
深い関係...!?
ま、まさかイツキさんとサキさんって、深い関係ってことは...。う、嘘ですよね...?
「ま、まさか...許嫁ですか!?」
「え、ち、違うよ!?」
この焦り方...怪しい気もしますけど、恋人ならあんな再会の仕方しませんよね...。
だ、だったら、大丈夫ですよね...。
「...まさか、好きだったり?」
「へ、ちが、あっ、違います!!」
「...そ。あたしお手洗い行ってくるね。」
よ、よかったぁ。なんとか切り抜けられた...んですよね。
でもなんだろう、最後に少し、眉間にシワが寄っていたような...。ううん、気にしちゃダメですよね。
私もあんな感じで、イツキさんのことお世話できたらなぁ。
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