異世界のとあるクリスマス

黒羽冥

第1話異世界生活クリスマス

ジングルベル♪ジングルベル♪

皆さんはこのフレーズを知ってるだろうか?

そう…連想されるのはクリスマス!

これは異世界のある世界に生きる一人の女性の物語である。

「はぁ!うぅぅぅ!寒いよ。」

寒空の夜の街を一人の女性が白い息を吐きながら歩いている。

その姿は長い髪をなびかせ月光には時折眼鏡がキラリと光るそして白い服を羽織りよく見ると彼女は小走りに移動しているように見える。

すると彼女の背後から迫り来る黒い影が徐々に彼女を追ってくる。

どんどん迫り来る黒い影!!

彼女がタイミングよく振り向くとその目にしたのは……。

黒い翼を持つ一人の男だったのだ。

男はましろに追いつくと飛び上がる!!そして何と!!

ましろの影からヌッと伸び上がる影の姿があったのだ。

「えっ!?」

ましろが自分の影から姿を現した何者かの存在の気配を感じ振り返るとそこには言葉には言い様がないくらいの巨大な化け物の姿!!

「いやあああっ!?」

ましろの叫ぶ声!!

咄嗟に彼女は目を閉じてしまう!!

すると聞こえた優しい声…。

『もう…大丈夫だ…。』

私が目を覚ますとそこは自分のベットの上だった。

「あれっ!?さっきのは…夢?」

私は辺りを見回すもいつもと何一つ変わらない部屋の光景に思わず深い溜息をついてしまうのだった。

「はぁぁぁ…夢だったのかな。」

そして、いつもと同じ私の一日が始まる。

私の名前は『ましろ』仕事は魔法の研究…何故この仕事を私がしているか。

まずはこの話をしなきゃね。

私の住む、この国は比較的暖かく過ごしやすい国なの…。でも、ここ数年『温暖化』という世界規模の問題が起きてしまった。

人口の増加と共に森林伐採等々の問題は多少はあったものの数年前まではそこまでの影響はなかったの。

それには一つこの国の気象を護ってくれる存在があったから…古より言い伝えられこの国の守護神として祀られていた『ニャラット』と呼ばれる猫の神様。その神様はその昔この地は枯れ果てた永遠たる砂漠だったらしい。一年中灼熱の砂漠のこの地は水は枯れてる為、作物も育たず僅かに生存できていたのはその身体に水を余分に蓄えられる『ラクダ』の様な動物と僅かに降る雨を利用し生活をする術を身につけた人間、水を必要としない一部のモンスターくらいだった。

必死に生きる人間達も息絶えその種の存在も消えるかに見えたんだ。

そんな時、どこからともなく現れたのが一匹の猫だった。

猫はその地に降り立つと急に自身の身体を舐め出す!その行為は猫の世界では身体を洗う行為なのだろう。

ところがその猫が身体を舐めだしていくと徐々にその天候はかげっていき不思議な事に雨が降り出したのだという。

その姿を偶然見かけた人間達は猫を神とし崇めいつまでも崇拝したという。

こんな話がこの国には大昔から語られ『二ャラット』の銅像は祀られ続けてきたのだ。

私の研究はというと天候の研究、そして魔法という概念があるこの世界では天候を操る魔法というものもあるらしい。

私はその魔法の研究員の一人でもあるのだ。

いつもの様に私は職場に向かい仕事をしていると一通の手紙が私の元に届いたのだ。

「はい!これましろさん宛みたいよ!」

私は受け取った手紙は私の名前、そして裏を見ると知らない人の名前が書いてあったのだ。

「えっと…シェイド?誰だろう?」

私が見知らぬ名を見て考えていたが思い切って封筒を開け中を確認する事にする。

すると中には一通の手紙が入っていたのだ。

「えっと…。」

『こんにちは!ましろさん!私の名はシェイド…闇の魔道具屋』

私の中で不思議とこの手紙は読まないといけない何かを感じ続けて読んでいく。

『この度、貴女の研究を助力致したく魔道具屋としてお声がけをさせて頂いた、次第です!』

でもこんな怪しい手紙に私は正直悩んだのだった。すると私の耳に聞こえてきた同僚の声。

「ねぇ…聞いた?今年のクリスマスのサンタクロース様が世界に発信した悲報の話?」

「えっ?」

私はその言葉に思わず耳を傾けてしまう。

「私も聞いた!何でも今年は雪の精霊が見つからなくて雪を降らせる事が出来なくてクリスマスに現れる事が出来ないらしいって…。」

私の中に衝撃が走る。

クリスマスというのは世界中に認知されたサンタクロース様がこの世界中の人に幸せを届けてくれる日!

でも毎年ニャット様の加護と雪の精霊によってめったに降らないこの地に雪を降らせて貰えてるのだ。それによりサンタクロース様は自分の力を加えクリスマスの聖なる夜に魔法が使えると言うものだった。

これは天気を研究しているこの研究所、しいては私の研究はまさにこの為にある様なものだった。

すると私の所属する部所『天候魔法部』の所長より呼び出されたのだった。私が所長の部屋の扉を叩く。

コンコンッ!!

「来たかねましろ君!はいりたまえ!」

所長の声は怒ってるのも違う明るい声とも違う。冷静に私を呼ぶ声だったのだ。

「失礼します。」

私が扉を開き中へ入るとそこには所長と見知らぬ男が立っていたのだ。

中へ入り扉を閉め二人の元へ歩み寄ると所長より声がかかる。

「ましろ君、ここからする話は君の研究を試す時が来たと言ってもいい話なのだ。その前に。」

所長はそう言うと一緒にいた男性は口を開く。

「初めましてましろさん、私の名はシェイド。君に手紙を送った魔道具屋の店主です。」

私は驚く!あの怪しげな手紙を送ってきた張本人が目の前に所長と二人でたっていたのだ。

「初めまして!ここで研究をしてる『ましろ』といいます!よろしくお願いします!」

私が簡単に自己紹介を済ませると座って話そうとの指示が…私もお二人と同じようにソファにかけるとシェイドと名乗る人物は語り出したのだった。

さて、ではここからましろさんを加え私がここに来た理由等を話そうと思ってる。

この私達の住むこの街『ウィンナード』は太古から灼熱の大地という事であった。

この歴史は分かるよね?

シェイドの話に頷く私。

ではそれを回避してくれたニャラットという猫神によってこの地の気象は人間の住める気候へと変わった事も歴史を知ってるものなら分かるよな?

「はい。」

そして、猫神をまつることによりこの世の天候は安定をもたらされているのだ。

その安定は良しとしよう。

だが今年のクリスマスあのサンタクロース様に異変が起こってしまってな。

雪の精霊が見つからなくなってしまったという話はどこかできいたかな?

私はその問いにコクリと頷く。

「そこで困り果てたサンタクロース様はうちの研究所に連絡を要請し世界へ拡散した所、この『シェイド』君がうちに声をかけてきてくれてこれからこうして手を組み、サンタクロース様の雪の精霊を一緒に探す事になったという訳だ。」

私は思わず考えてしまう。

(雪の精霊か…確かに私の研究で近い情報に雪を故意に降らせる研究はしてたけど…)

私がぼんやり考えているとシェイド様は声をかけてくる。

「早速だが私の仕事は君の補助役と魔道具を使い雪の精霊の居場所を特定する事まずは見ていろ。」

シェイドはそう言うと腕を捲るとそこにはリストバンドの様な物が巻かれている。

シェイドが魔法力を集中しリストバンドへと注入していくとリストバンドの端はふよふよ浮き出しある方向を指す!

「いいか?これが私の魔力センサーで僅かな魔力も逃さない優秀な魔道具の一つなのだ…これを辿り雪の精霊を一緒に探してもらうぞ!」

「分かりました!でも…私は何をすれば?」

「君の本分はなんだ?」

「えっと…あ!分かりました!」

「私のアイテムはある程度居場所を絞って貰わなければ闇雲に無駄な足を踏んでしまう!だから君の研究の知識で居場所を特定するのだ。」

「はい!」

こうして私達二人は雪の精霊を探す旅へと向かったのでした!

ここは…雪の大地エレスティン!雪の精霊の住む大地!

さすがにここは普通の装備では歩く事も困難な為完全防寒装備の私達二人は雪の精霊探索の為の拠点地である『コールドスリープの村』へと歩いていた。

「うわぁぁぁ!本当にここは寒すぎます!」

「ああ…君はずっと『雪降らずの街』で暮らしてきたんだろ?それでは寒いさ。」

「ですよね、雪なんて本当にサンタクロース様のプレゼントでしか見たことありませんし。」

私達二人はそんな話をしながらコールドスリープへと向かっていた。

「ところでニャラットという存在についてなのだが…」

「えっ?神様のお話でしょうか?」

「そうだ…ニャラット様は実は雪の精霊という説だ。」

「えっ?」

私はその説は確かに聞いた事はあったのだ。もちろん私の住む街にも昔からニャラット様が祀られそして毎年サンタクロース様は年に一度の雪をクリスマスプレゼントとして降らせてくれてきたのだ。

「これは私の推測なのだが…毎年サンタクロース様のクリスマスプレゼントはあったものの…ここ数十年はさもそれが当たり前の様に扱われ商売をする者の為のクリスマスという行事になってきたように私は感じるのだ。」

私はその言葉にハッとする。確かに毎年の様にクリスマスというイベントは存在し、国民も全てが神への感謝を忘れがちになりつつはあったのかもしれない。

「サンタクロース様は年々年は重ねてきてる為にね…魔力も徐々に衰えてもきてるのだよ…その為に雪の精霊はサンタクロース様の元から逃亡を計ったのではないかと私は考えているのさ。」

なるほど…確かにそれなら話は分かる。

「だからね!まずはその真相を確かめる為に今こうしてサンタクロース様の家を目指しているって事さ。」

「えっ?」

私はその言葉に驚き目を見開くと目の前にはなんと一件の家がぽつんとみえてきたのだ。

「コールドスリープって街にはそのサンタクロース様の家が一件あるのみ…ほら!あそこがそうさ!」

私達はこうして遂にサンタクロース様の家に辿り着く事ができたのです。

私達の目の前には雪の積もった小屋がある。煙突もありそこからは黙々と暖炉の煙が立ち昇っている。

「サンタクロース様は居られそうですね?」

「ああ…じゃあ行くぞ?」

シェイドはそう言うとノックをする。

コンコンッ!

すると中から高齢の方とも言うべき彼の声が聞こえる。

「どなたかな?ワシはあまり動けんのでな…入っておくれ。」

サンタクロースとも思われる彼の言葉で私達は中へと入る。

「失礼いたします。」

私達が中に入っていくとそこは炎がメラメラと燃えこの部屋に暖をもたらしている。

そして椅子に座りこちらを見ている一人の男性の姿があった。

「よく来なさった、私はサンタクロース…と呼ばれておる世界に幸せを届ける魔法使いじゃ。」

にこやかに私達に話しかけるその方の姿は服装こそ赤服を纏ってはいないがサンタクロース様である事は間違いないであろう。

するとシェイドは口を開く。

「私達はサンタクロース様の危機との話を聞きお手伝いをさせて頂きたくこちらまで来たのです!」

「おお!なんと!それは助かる、しかしな…」

サンタクロース様はそういうと暗い表情へと変わる。

「ワシはな…サンタクロースという魔法使いをずっとこれまでしてきてな…あの灼熱の大地であるウィンナードに年に一度、一年分の雪を降らせてきたのじゃ。」

「そうだったのですか?」

「ああ…それにはある理由があってな…ワシの相棒の『雪の精霊』ニャットがその理由なのだ。」

「ニャット??」

「ニャットはワシが幼少の頃にどこからとも無く現れワシの兄弟のように育ってきたのじゃ…ある時は一緒にご飯を食べある時は同じく湯に浸かり寝る時までも一緒だったのじゃ。」

するとサンタクロース様は髭を触りながら続ける。

「ワシが成人すると否やワシはある夢を見たのじゃ…それは今でも忘れはしないソリに乗せたワシをニャットがトナカイへと変化し空を飛び地に雪を降らせる夢だったのだ。」

「ワシの中でこれはワシにこれをして欲しいとのニャットの見せてくれた願いなのかもと考えワシは浮遊の魔法を覚え加えて降雪の魔法も身につけたのじゃ。」

「そんな矢先ワシの元にウィンナードの街の急な天候の乱れの報せが届いたのじゃ。」

「えっ?それって?」

私の言葉にサンタクロース様はこちらを向き続けたのだ。

「ああ…今より十数年前のウィンナードの灼熱事件じゃ」

ウィンナードの灼熱事件とは。

ニャラット様を祀り崇めてきたウィンナードの街。だがどこにでも悪の心を持つ者も現れるのも世の中の摂理でもある。

その悪の心を持った男の名は『ジェルマン』。

ジェルマンは平和なウィンナードの象徴でもあったニャラット様の銅像を破壊すると街中で暴虐の限りを尽くしたのだ。

不思議な事にニャラット様の像が破壊されるとウィンナードは徐々に灼熱化し街は再び灼熱地獄へと変わってしまったのだ。

しかしそこへ突如現れた一人の男、彼は見事にジェルマン討伐をやってのけ改めて像を作りこの地に安定をもたらしてくれたのだ。

すると彼はウィンナードを去る際一つの言葉を残していったのだ。

「これより僕はサンタクロースという男の元へゆく!そして僕の力はこの地の平和をもらたす為に使われるであろう。」

こうしてウィンナードの街には平和が再び訪れたのだ。

そして、その後その男を見た者はないという。

話を聞き終えた私達はその後のサンタクロース様の動きが気になり問う。

「それからはどうしたのでしょう?」

「私の飼ってきたニャットがその事件以降突然深い眠りについたのだ…それ以外ニャットに変化が起こり始めたのだ。」

またサンタクロース様は話を続ける。

「ニャットは相変わらず眠り続けていたのだがワシはある時外の天候が雪に変わっている事に気がつく。」

「ああ…寒いな……ニャットが起きてれば私の膝元によってきたのだろうか?」

そしてワシは部屋のカレンダーに目がいくと日付は12月24日。

「ニャット…私は……。」

ワシがニャットに再び声をかけると僅かにニャットが動いた気がしたのだ。すると突然ニャットの身体は光だし見ているうちに光輝く精霊へと変化したのだ。

「おお…ニャットよ、これがお主の本当の姿なのか?」

そしてワシはみるみるうちにサンタクロースへと姿を変え魔法使いサンタクロースとなったのじゃ。

「それからワシはサンタクロースとしてニャットというトナカイにソリをひかせ各地に雪を降らせるというプレゼントをしてきたのじゃ…特にウィンナードには再びあの魔が訪れぬ様、破邪の雪を降らせてきたのじゃよ。」

「なるほど、サンタクロース様にはそんな過去があったのですね?」

「ああ…じゃが今年はその肝心のニャットが数日前からおらぬようになってしまったのじゃ。」

サンタクロース様はそういうとガックリ肩を落としてしまったのだった。

私が声をかけようとすると突然シェイドが叫ぶ!

「「伏せろ!!」」

「えっ?キャッ!!」

私そしてサンタクロース様はシェイドの何らかの力により外の雪景色に転がる!!

そして再び叫ぶな声!

「またくるぞ!伏せろ!」

私はシェイドの声に思わず屈むと背中を何かが通過した感覚を感じる!

すると私達の眼前にはサンタクロース様に爪を向ける狼の様な獣の姿があった。

「あれは!?」

シェイドは叫ぶとサンタクロース様は冷静な口をひらく。

「あれは…姿はモンスター化しているがワシの相棒ニャットだ。」

「えっ!?」

私はニャットと呼ばれるその魔物を見ると魔物は口が耳まで裂け全身は毛で覆われ鋭い牙と爪そしてその目からくる眼光は正に獲物を狩るハンターの様な目をギラギラさせていた。

「あれが…雪の精霊ニャット?」

「あれは確か…」

シェイドの言葉に私の脳裏に以前襲われたモンスターの姿が浮かぶ!

「あの時私を襲った黒い影の正体って…まさか!?」

「ああ…そうらしいな。」

えっ?そうらしいって!?

もしかしてあの時私を救ってくれた人ってまさか!?

私がキョトンとしているとシェイドは口を開く。

「以前君を襲った犯人はこいつ…雪の精霊だったらしいな。」

「そんな…でもどうして!?」

私がそう問いかけるとサンタクロース様は口を開く。

「恐らく…ニャットはお嬢さんに何かを感じたのであろう…故にお嬢さんを前回も襲い、そして今回もお嬢さんを狙い逃亡したニャットはここへ戻ったのであろうの。」

「そんな…」

私の口から困惑の声が漏れる。

「私の推測だが…ましろ…君は幼い頃雪の精霊と遊んだ事があると言ってたな。」

私の脳裏に昔の思い出が浮かんでくる。

私はずっと一人だった…両親は私が産まれると直ぐに灼熱熱波により二人とも亡くしたのだ。それから孤児院で育てられ、私はいつしか両親を奪った環境を自分の手で変え安定させると誓った。孤児院で勉強に明け暮れる私は一人だったけど時折遊びに来てくれるお友達ができたの。それが一匹の白猫…ある時私は捨てられボロボロになったその白猫を保護したの。

まるで私を見ているかのように感じて私は孤児院に連れ帰り隠れて保護すると次第に白猫は元気を取り戻し…そしていつの間にか私の元を去っていった。

この話をここに来るまでシェイドと色々話してきた私はこの思い出を思い出していたのだ。

「そんな…じゃあ、あのニャットがもしかしたらあの子だったって言うの!?」

「そうかも…知れないって話だ。」

シェイドはそう言うとポケットから何かをガサゴソと取り出すと掌の上にかざす。

「いいか?ましろ!?これから行う事はニャットの暴走を止める為のものだ!」

そう言うとシェイドの箱は光出していく。

「えっ?一体ニャットに何をするの?」

徐々にその光によって箱の蓋が空いていく!

「これは私の持つ魔導具の一つ『浄化箱じょうかばこ』これよりニャットの悪意を浄化する。」

「ニャットは!?ニャットはどうなるの!!??」

私が叫ぶもシェイドは続けていく。

「こうでもしなければ全世界が荒廃してしまう!!」

シェイドの箱はもういっぱいまで開きそうだった!!

「だめ!やめてえええええ!!!」

私が叫んだ瞬間!!

私の目の前には光が広がっていたんだ!!

私が気がつくとそこは白い世界が広がっていた。

シン…とした音の無い世界、私は身体が上手く動かせずやっとの思いで身体を起こす!

真っ白な世界、私が辺りを見回すと誰もそこにはいない。

ふぅ…と溜息をつくと僅かに聞こえる何かの声。

「誰??」

私が声をかけると辺りにはまた何も聞こえなくなる。

すると私の目の前にひょこっと何かが姿を現す。

「猫?」

私の問いに不思議な事が起こる。

「ましろ!」

私に声をかけてくる白い猫…それはあのニャットだったのだ。

「あなたは?」

「僕の名前は雪の精霊ニャット!大昔、君に拾われ助けられて…そして今はサンタクロース様のソリをひいていたんだよ。」

白猫はそう言うと顔を洗い始める。

「そうなんだね、じゃあサンタクロース様の元から消えた理由を教えてください!」

すると猫は顔を洗うのをやめこちらを見ている。

「それはな…僕の死期が迫っているからなのだ。」

私はその言葉にドキリとした…確かに猫の平均寿命は短い…しかもニャットはサンタクロース様と共に過ごした時間も長い、当然といえば当然の事ではある。

「それならば最後まで…なんとか。」

「それは人間の都合であろう?しかも最近では僕の力も暴走を始めていてな…なんとか君達をここまで呼ぶように事を進めてきたのだ。」

ニャットはそう言うとぴょんと私の目の前まで飛んでくると再びその口を開いだのだ。

「お陰で僕の『悪意』は消してもらったし最後の仕上げは『雪』だね!」

そう言うとニャットはくるりと回るとポンッと肉球を叩くとそこにはベッドで眠るサンタクロース様の姿があった。

「えっ!?サンタクロース様!?」

「そう…僕の親友サンタクロース…彼も丁度僕と同じく天に行く時がきたんだよ。」

「えっ?どういう…事?」

「僕達のこの世での活動はこれで終わるんだ。でもね…引継ぐ者がいなければこの世界はいずれまた灼熱の大地へと変わってしまう、だから僕はね。」

そういうとニャットは私に魔法を唱える!すると私はサンタ衣装に身を包んでいた。

「えっ?ええっ??」

「君はこれまで自分の研究で魔法で雪を降らす研究をしてきたはずさ。」

「えっ!?でもそれは…。」

そう…私の研究はあと一歩だったのです。

「大丈夫!僕達がこれからは君にちゃんと力を伝えるから。」

私が目を覚ますとそこはサンタクロース様の家ではなく自分のベッドの上だった。するとコンコンッと玄関のドアをノックする音がする。

私は玄関まで行くと返事をしながらドアを開ける。

「はい!」

私が扉を開けるとそこには白い世界にソリをひいた一頭のトナカイの姿があった。

「さて、行きましょうか?新しいサンタクロース様!」

そう言ったトナカイの声はあの…シェイドの声だったのです。

私は笑顔で答える。

「うん、行こうよ!皆がプレゼントを待ってるよ。」

お読み下さりありがとうございました!

異世界で暮らす一人の主人公にスポットを当てた作品でした。

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異世界のとあるクリスマス 黒羽冥 @kuroha-mei

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