第23話 来た道と別の道を通って、帰宅。
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新しくなった丘の上の養護施設を見学した彼は、兄のクラウンを運転して、今度は来た道と別の道を通って帰ることにした。
まずは公道に出て、S住宅によって分譲されている丘のふもとの道を通り、百間川に沿って県道へと進む。
県道西大寺線に出る三叉路の右手には、自動車学校がある。
若い学生と思われる男性が数名、運転免許取得に向け練習している。
右折し、上下各1車線ながら交通量の多い県道には、岡山駅前から西大寺へのバスが1時間に何本も出ている。バス停に、岡山方面に向けてのバスを待つ人が数人立っている。やがてクラウンの左手には倉安川という細い川が並走し、鉄筋校舎の並ぶ小学校を左手に見る。さらに進み、かの車は、東山峠へと差し掛かった。
この日のこの時間帯は渋滞こそない。
とはいえ、かなりの交通量のある路線である。
下りがけに護国神社の敷地横を通って山を一つ越え切ると、そこは東山電停。
両側ともに路面電車の車庫がある。3年前から投入されたという冷房付の電車もあるが、今もこの路線の主役は、湘南型の正面を前後に持つ、いささか時代遅れの電車たち。まだ冷房の必要な時期ではないが、すでに窓は幾分開けられている。
門田屋敷の交差点を右折し、しばらく進むと、大宮氏の母校である県立A高校が今もこの地にある。かつて第六高等学校のあった場所でもある。なおこの敷地内には、定時制の県立U高校も併設されている。
「あの校舎(まなびや)の桜、もう、とっくに散っただろうな・・・」
あえて母校の前を通り、少し大回りして、彼は原尾島の三叉路前の喫茶店「習志の」に入った。ちょうど昼時を少し回ったところではあるが、割に早く座れた。
辛いものも好きな彼は、ここでカレーを食した。
存外辛いカレーではあるが、実にコクがある。
その辛さを、アイスコーヒーを頼んで体内に流し込み、ついでに眠気も飛ばした。
その後彼は、原尾島を通って新鶴見橋とさらには国鉄をまたぐ高架を超え、実家でもある地へと戻った。この地には、来年の大学受験を目指す息子が住んでいる。さらには、彼の幼馴染でもある海野たまきというO大学の学生も「下宿」している。
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