第4話 園長室から出てきた後輩
時間にして数分。
丘の上からの景色を幾分眺めた大宮氏は、管理棟と思しき建物にむかった。受付の窓越しに、古村武志事務長に対して大槻園長を訪ねてきた旨を告げた。
古村氏は、大宮氏とは初対面である。
とはいえかねて大槻園長より聞かされており、話はスムーズに進んだ。
程なく、彼にとって旧知の人物である大槻和男園長が、園長室から出てきた。
いくつかの業務上の電話に対応したり、さらには決済すべき書類を処理する必要があったりしたため、大宮氏がすでにこのよつ葉園に来ていることには、どうやら気付かなかった模様。それが証拠に大槻氏がその事実を知ったのは、事務室の古村事務長からの内線電話であった。
「お待たせいたしました、大宮さん。お久しぶりです。遅れまして、申し訳ありませんでした」
「大槻さんですね、ご無沙汰いたしております。大宮哲郎です」
「どうぞ、応接室にご案内します」
大宮氏は靴を脱いで揃え、「よつ葉園」と書かれた少し古めで薄茶色のスリッパに履替え、玄関の目の前にある応接室に招かれるまま入っていった。同時に大槻園長も応接室に入り、向かい合ってソファーにそれぞれ着席した。
大宮氏の座る目の前の壁には、幼い頃からかわいがってくれた恩人2名の額が飾られている。
一人は、初代園長の古京友三郎氏で、こちらは洋装の肖像画。
もう一人は、二代目園長の森川一郎氏で、こちらは園長退任の年に撮影されたモーニング姿の肖像写真である。
大槻園長が席を外している間、大宮氏は恩人2人に軽く会釈した。
「おじさん、しかしまた、よつ葉園は大事業をやってのけたものだね」
彼は、幼少期からかわいがってくれた森川一郎園長の遺影に語りかけた。
なお、何度か顔を合わせた東航前園長の肖像写真は、まだ飾られていない。
東前園長は現在、よつ葉園を運営する法人の理事長を務めている。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
程なく、大槻和男園長が応接室に戻ってきた。
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