よつ葉園を訪ねる紳士は、園長の先輩
第2話 クルマを借りて、丘の上の目的地へ
久々に岡山に帰省している大宮哲郎氏は、兄の自家用車を借りて、岡山市郊外に移転した養護施設「よつ葉園」に向かった。
兄の士郎氏はこのところ、黒のクラウンを愛用している。哲郎氏自身も函館の赴任先では白のクラウンを常用しているので、車体の色こそ違うものの勝手知ったクルマではある。もっとも大宮氏はいわゆる転勤族であり、故郷の岡山で車を運転したことはほとんどない。
大学を出るまで過ごした街であり、土地勘は十二分と言ってもいいほどあるが、移転したよつ葉園のある地近辺に足を運んだことは、これまでなかった。
以前よつ葉園の職員住宅に住む大槻和男現園長から送ってもらっていたパンフレットを頼りに、彼は旧国道2号線を東に向かい、途中から開発され切っていない丘を通るバイパス的な道路に入り、目的の場所へと向かった。
果して、その丘を通る道路を少し下ったところに、その目的の地はあった。
隣の地にはいわゆる老人ホームが建設されている。
よつ葉園に遅れること約1年、かの施設は建設され、すでに特別養護老人ホームとして稼働を始めている。
この丘を越えていく公道から、よつ葉園の私道に入り、駐車場として活用されているスペースに行くまでの北側の路地には、桜の木が植えられている。残念ながらここは北海道ではない。すでに桜の花は散り、若葉がそれにとって代わりつつある。
駐車場の開いているスペースに停め、彼は、事務所に向かった。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
丁度、午前11時前。すでに朝礼などは終わっている。
園庭では、自分よりはるかに若い保母たちが、幼い子どもらを遊ばせている。
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