彼女、サブスクします

華川とうふ

第1話 新サービスのお知らせ

『彼女が欲しいけれど、責任を取りたくない。

 そんなあなたに朗報です。

 彼女のサブスクリプションサービスの提供を開始します。


 週額たったの34149円(税抜き)で彼女ホーダイ始まります。


 クリスマスやバレンタイン、そしてあなたの誕生日など必要なときだけあなたに彼女ができます。

 めんどくさいことは一切なし。

 メンヘラになったり、重くなったときはいつでも返却可能。


 今すぐ下記のリンクからお申込み下さい。

 https://kakuyomu.jp/shared_drafts/cYFEZoOG0c0pevtAj9dNYPblkkMkgzLi


 このメッセージを見たときは詐欺かと思った。

 だけれど、これは俺に送られてきたものではない。


 そして、このメッセージを転送してくれた友人は今日、俺との約束をすっぽかして彼女とデートだそうだ。


 正直、言ってあいつに彼女ができるなんて信じられない。

 オタクで処女厨で、付き合うならば女子高出身の黒髪清楚な女の子じゃないと嫌だといっていたあいつに彼女ができるなんて。


 まだ、俺のほうがましだ。


 だけれど、現実にはあいつに彼女ができ、俺は独りぼっち。

 そして、『お前も寂しいなら彼女を作ればいいよ』そう言って送ってきたのだった。

 最初は、何かの冗談か質の悪い皮肉かと思った。


 何度もメッセージを読む。

 だんだんとこの詐欺のような文章と、友人に彼女ができたという事実が絡み合い一つの結論に至る。

 このサービスは本物かもしれない。


 嘘でもいい。

 どうせ、友人にからかわれるだけだから。


 会員情報を登録する。

 念のため、支払い方法はクレジットカードではなくプリペイドカードに設定する。

 しかも、いまなら初回1週間は無料お試しキャンペーンがついてくる。

 少なくともあいつよりはその分、得をしている。


 レンタル彼女とかも最近テレビなどで話題になっていたし、何かのネタにはなるだろう。


 会員登録が完了すると、次は彼女のタイプを選ぶことになっていく。


 女子高生、女子大生、OL、その他。

 色白、色黒。

 黒髪、茶髪、金髪。

 などなど、自分の好みに合わせた要素で彼女を探すことができる。

 もっと細分化して条件を登録して探すことも可能らしいけれど、あまり条件を絞りすぎるとヒットしなかったり、自分の好みのものを見落とす可能性があるので適度におおざっぱな感じで検索をかけて眺めていく。


 サンプルの写真が載っているが、結構可愛い子ばかりだ。

 黒髪ロングな清楚系。

 金髪で元気いっぱいなギャル系。

 色気たっぷりでも天然系なお姉さん。

 お酒大好きダメOL。

 色んなタイプの彼女の写真がそこには表示されていた。


 でも、レンタル彼女と何が違うのだろう。

 この間、ドラマで見た感じではレンタル彼女ってもっと短時間だし、値段も高いイメージだった。

 しかし、いくつか適当にページを流し見していくうちに気づく。

 どうやら、このサイトに載っている彼女たちは家出してきた女性らしい。


 何かしらの事情があって家にいられなくなった女性。


 そのため、普通のレンタル彼女とは違って家にも来てくれるし、値段も抑えられているとそのサイトは謳っていた。

 サブスクとして払うお金もそういった彼女たちのシェルターや支援のために使われるということだった。


 自分の欲望を叶え、同時に可哀想な女性たちを助けることができる。

 すぐにサービスを利用しない手はないと思った。


 俺は彼女たちを救う手助けをするのだ。


 最終的にどの彼女にするか決めて申し込んだときにはそんな風に思っていた。


 ――ピン、ポーン♪♪――


 そして、彼女サブスクに申し込んだ一週間後、俺の部屋の呼び鈴がなった。

 ドアを開けると、色白で黒髪の目くりっとした女の子が立っていた。

 ちょっともじもじした様子ながら一生懸命こちらに話しかけてくる。


「あのっ、彼女サブスク……この度はお申込みありがとうございます。」


 そう言って、頭をペコリと下げた。


「ああ、うん。とりあえず、こんなところ人にみられるのもちょっとあれだから……あがる?」


 俺は信じられない気持ちでなんと言葉を探し出す。

 一週間もたって音沙汰なしだったから、やっぱり詐欺か友人からのいたずらだと思っていた。

 どちらにしても俺は金銭的に損もしないので特に気にしてはいなかったが。

 家に可愛らしい女の子がやってきた。


「おじゃまします」


 彼女は俺が聞いた途端、礼儀正しく頭を下げ、コートを脱ぎ、一歩玄関に入ってきた。

 靴を脱いで、揃える。

 たった、それだけの動作が恐ろしいくらい丁寧で美しかった。


 部屋に通し、座布団をすすめると彼女はちょこんと座った。

 小柄な彼女のその所在のない様子は小動物を思わせる可愛さだった。


「今日から、あなたの彼女になりました。乙女おとめ純恋すみれです。よろしくお願いします。」


 俺が向かい側に座ると彼女は座布団から降りて、丁寧に三つ指をついて挨拶をした。

 それはまるで、テレビでみるよいところのお嬢様のように完璧な所作だった。


「こ、こちらこそ……よろしくお願いします。」


 俺は慌てて頭を下げる。


 そして、俺と彼女の生活は始まった。




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彼女、サブスクします 華川とうふ @hayakawa5

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