まいせるふすとーりーず

東 南我

第1話『貴方のための物語』

 勉強机の上には本。壁は白く床は木の様な見た目のタイル。中々に質素な部屋の中、イマは仰向けに寝転がってぼうっと天井を眺めていた。不意に何かに話しかける。

「ねぇ。ルセフくん。今日は何をしようか」

どこからも返事は帰ってこない。耳に入るのは僅かな反響と、風で揺れる窓ガラスの音だけだった。

「……そうだね。今日は家でゆっくり、ごろごろしてよう。でもパンは買ってこよう。つぶつぶじゃないあんこが中に詰まったパン」

のっそりと立ち上がる。160にも満たない、19歳とはとても思えない身長。それはドアを開けて部屋を出る。一人暮らしには広いぐらいの二階建て。日当たりは反対は直接差してくる。もう反対側は木漏れ日。黒い靴を履いて玄関を出る。両脇に緑色の葉をつけた木々を生やした赤煉瓦あかれんがの大通りを歩いて行く。公園が見えてきたとき、反対側を見た。『レンガづくりのパン屋さん』と看板が見えた。パンの美味しそうな匂いが鼻に入ってくる。

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まいせるふすとーりーず 東 南我 @taida_sosaku395

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