休憩

「では、授業を終わります」


 2時間強の授業が終わった。


「はぁ~疲れた~。まったく知らない分野を勉強するのは大変だぁ~」


 鈴村さんが机にバタンと倒れながらそういった。かく言う僕はというと


 結論から言おう



 バチクソに面白い



 正直あと6時間はイケる。


 まず僕が魅せられたのはその途方もない事象と条件、魔法名によって無限の可能性があるということだ。例えば僕が学んだ光の初級魔法『フラッシュ』でもその詠唱中や発動時に何らかの事象が発生、または発動時の周辺の状態によってその結果は全て別のものになる。

 また『フラッシュ』を使って例を挙げると、この世界にあるプリズム鉱石を装備した状態で『フラッシュ』を使えば一つレベルの高い『プリズマティック・フラッシュ』となる。

 このように、一つの魔法でも、上手く使えば無限の可能性があるということが分かる。

 続いて、魔法の発動までのプロセスである。魔法の発動には魔力が必要になる。魔力を魔法に変換して発動するのだが、そこで必要不可欠なのが詠唱というわけだ。詠唱をすることで、魔力にイメージを含有させてそれをそのまま現出化させると魔法になるのである。とはいえ『賢者』の僕は詠唱の必要はないらしいが。


「……青木くん、その様子だと全然平気そうだね」


 鈴村さんが机に張り付いた状態でジトーっとした視線をこちらに向けてきた。


「当たり前だよ。こんなに面白い授業は初めてだよ」

「はいはいそーですか。流石は天才。頭の造りが違いますわー」

「それを貴女が言いますか」

「言いますよ、私が」

「嫌味ですか?」

「嫌味ですよ?」


 僕にテストの点数で勝った本物の天才が何を言っているのだろうか。


「とはいえ、魔法なんて小説でしか見たことなかったから、面白くなかった、っていえばウソにはなるかな」

「鈴村さんは4属性が使えるんだから組み合わせ方なんて無限に近いでしょ」

「それをするには私は発想力が足りないですよー」

「なら僕が鈴村さんのための魔法を作ってあげようか?」

「え!?ほんと!?」


 鈴村さんがガバッと顔を上げた。そんなに嬉しいか?


「丁度僕にない属性を鈴村さんが持ってるから」

「それって実験台ってこと?」

「言い方が悪いよ……まあそうだけど」

「そうなの!?冗談で言ったつもりなのに!」

「え?」

「あーあ、乙女心を弄ぶなんて悪いんだー」

「ごめんて」


 非常に面倒くさい。とりあえず話そらすか。


「そういえば鈴村さんは大聖女様に話を聞きに行くんだっけ?」

「え、うん。よくわかんないけどそうらしいね」

「大聖女様ってどんななんだろうね」

「きっとすっごい優しい人だよ!だって、大!聖女様だよ」

「まぁ……そうだろうね」


 まずい。関心がなさすぎてまったく話が弾まない。


「そういう青木くんは北の森?の賢者様だっけ?」

「うん。でも北の森って一体どこなのかどんな所なのかもわからないからちょっと不安ではある」

「確かに森ってなんかちょっと怖いかも」


 北の森、今のところ何の情報も仕入れていないので、この後書庫を借りて地図帳でも探してみようか。


「……青木くん」

「ん?」

「意外と何とかなりそうだね」

「……うん」


 正直今のところ何が正しくて何が違うとかそういうことはまだわからない。でも、僕にしては珍しく、確証はないがなんとかなりそう、そう思っていた。そして僕たちは顔を見合わせてほほ笑んだ。

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異世界召喚されて賢者になった僕、奴隷になり下がったので魔王軍に寝返ります。 割箸の爪楊枝 @tsumayo-ji

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