11月1日(水)
【ルール】
・このゲームは二人一組で行う協力型ゲームです。
・特定の行動を行うことで、指定されたポイントを集め、ゲームのクリアを目指します。
・特定の行動とは、ペアである相手に対してする行動が対象となります。
(例:手を繋ぐ、頭を撫でる、抱きしめる 等)
・同じ行動は二回目以降、獲得するポイントが半減し続けます。ポイントの半減措置は、翌0:00に解除されます。
(例:手を繋ぐの場合→一回目 100pt 二回目 50pt 三回目 25pt 四回目 12pt 五回目 6pt 六回目 3pt 七回目 1pt 八回目 0pt…)
・このゲームでは、ポイントは参加者ごとに集計されます。ポイントは行動を起こした参加者に付与されます。
※ただし、クリアに必要なポイントを満たしているかどうかは、それぞれが集めたポイントを合算して判定します。
①二人が獲得したptが合わせて【18,083,150pt】に達するとゲームクリアです。
②9月1日~12月31日までにゲームをクリアできなかった場合、ペナルティとして【その時点での獲得ポイント数が高い方が、獲得ポイント数の低い方を殺してください】
【ノルマ】
・一週間以内に、指定された【行動】を実行してください。実行が無い場合、ゲームを放棄したとみなし、上記②と同様のペナルティが与えられます。
・指定された【行動】の実行によってもポイントが獲得できます。
(なお、指定される【行動】はレート表において【5,000pt以上】の【行動】から選ばれます)
また、【ノルマ】とは別に、指定されていない行動を実行した場合も随時、ポイントの加算は行われます。
【今週のノルマ】
『ディープキス』
【現在の獲得pt】
瀬良康太 150,474pt
立花瞬 625,822pt 計 776,296pt
クリアまで残り 17,306,854pt
______________
「……起きたことをまとめると、や」
瞬の部屋のベッドの上で胡坐をかくクソ矢が、床に座る俺と瞬を交互に見遣って言った。
「瞬ちゃんが言うとるんは、文化祭の打ち上げとやらで?いつも通り、クソガキとイチャついとったら、いきなり、クラスメイトがキスせえって煽ってきよったと。ほんで、それがちょっと異常な熱気やったってことか」
「うん……」
俺の隣で、瞬が頷いて言った。
「久保さんは元々、俺達のことに興味があったみたいだけど、小池さんとか……ついさっきまで、それを咎めてた人まで、急に『キスしろ』なんて言ってくるのは、ちょっと変かなあって……」
「最初は止めてたけど、段々、気分が盛り上がってきて……ってことはないん?」
「うーん……それも、ちょっと考えにくいかなあ。もしそうだったら、田幡が声をかけて、あんなにあっさり正気に戻るとは思えないというか……」
首を振って、クソ矢の仮定を否定する瞬。俺も、瞬の言う通りだと思った。
──文化祭の打ち上げで起きた、不可解な出来事。
俺が酔っ払っていた間に起きていたそれは、瞬の言う通り、明らかに「異常」なことだ。
元々、下世話な詮索癖があるような連中はともかく、真面目で気遣いのできる小池さんや、瞬と親しい湯川が、瞬の気持ちも考えず、あんな風に、人前でキスをするよう煽るとは思えない。だからこれは──不可解で、「異常」なのだ。
そして、そんな「異常」を起こす存在に、俺達はとてもよく心当たりがある。
──この「異常」が、「ゲーム」に関わることなら……せかいちゃんに繋がるヒントになるかもしれねえ。
というわけで、俺と瞬は、手近に捕まえられるこの「異常側」代表──クソ矢を、こうして瞬の部屋に呼び出しているんだが。
「おい、わざとらしい推理はどうでもいい。お前はとにかく知ってることだけ全部吐け。そこから考えるのは、俺達の役目だ」
「なんや、どうせ当てずっぽうの、的外れな推理しかできんくせに。ようイキれるなあ、クソガキ」
「うるせえ。いいからとっとと身のある情報を出せ。無能守護霊が」
「はっ。お前こそ、可愛い恋人が困っとる時にべろべろに潰れてたやないか。無能はお前や、このドヘタレムッツリクソガキが」
「なんだと──」
「あーもう。二人とも、落ち着いてよ」
瞬に宥められて、渋々、俺は引き下がる。クソ矢はふん、と鼻を鳴らすと、腹立たしい顔で言った。
「……お前に言われんでも、知っとることがあったら、とうに喋っとるわ。瞬ちゃんには」
「そうかよ」
ってことは、今回もこいつは有益な情報を持ってないのかと、舌打ちする。すると、クソ矢が「まあ待てや」と言って続けた。
「正直、儂みたいな『ヤメ神』は、アクセスできる情報も与えられてる権限も縛りが多すぎんねん。もうやめた奴にごちゃごちゃ引っ掻き回されるん、ダルいやろ?せやから、儂も前ほどは何もできんのや。堪忍してや」
「前もそんなに何もしてねえだろ」
てか何だ、「ヤメ神」って。
そんな、相変わらず役に立たないクソ矢に呆れていると、瞬がそっと手を挙げて「あの」と口を開いた。
「それなら……澄矢さんが神様の使いをやめる前のことで、今回のことに関係ありそうなこと……訊いてもいい?」
「おう、なんや。訊いてみい」
クソ矢が顎で瞬をしゃくると、瞬はひとつ頷いてから、奴に訊いた。
「前に澄矢さん……この世界には、神様の他に『同業他社』がいるって言ってたよね?(→https://kakuyomu.jp/works/16817330651076198575/episodes/16817330660053545841)
確か……『サムシング・フォー・チャレンジ』で、俺と康太にすごく関心が集まっちゃったことがあって。
その時に(→https://kakuyomu.jp/works/16817330651076198575/episodes/16817330659200746970)」
「ああ……あれな」
伝わってるのか伝わってないのか、微妙な顔でクソ矢がうんうんと頷く。ちなみに、俺はなんのこっちゃだ。
「チャレンジ」のことは、前に瞬から聞いたと思うが、正直、「あーそんなのもあったっけ?」って感じだ。
すると、そんな「俺」にクソ矢が言った。
「あー、このクソガキみたいな人のためにも、ここやってとこ、載せとるから。そんくらいやったら、今の儂でもギリできたわ。思い出せんかったら、そっち見てな。」
「おい、何を言ってんだ?」
「話を戻すけどな──」
聞けよ。
……と思ったが、ここは食い下がっても仕方がない。俺は瞬に倣って「うん」と頷き、クソ矢の言うことに耳を傾ける。
「瞬ちゃんが訊きたいんは……その『同業他社』が、クラスの連中に煽らせたんやないかってことやな?」
「うん。俺……一昨日のことをよく考えた時、なんだか、噂が過熱しちゃった時にそっくりだなあって思って。何か関係があるのかな」
「へえ、すごいな、瞬。大発見だ」
「大したことじゃないよ」
そう言いつつも、瞬がはにかむ。可愛い。
「黙っとけや、クソガキ」
「あ?」
「で……その瞬ちゃんの仮定やけど──」
クソ矢は瞬の方を見て、苦い顔をする。瞬が「澄矢さん?」と顔を覗き込むと、クソ矢は「せやなあ……」と言って、こう続けた。
「……自分らで、確かめたらええわ」
「どういうことだ」
俺がクソ矢を睨んで訊くと、クソ矢はゆるゆると首を振って言った。
「『アレ』については、儂らが直接触れるんはタブーやから。そうとも、ちゃうとも言えん。妙な風評を流すと、『営業妨害』になってまうからなあ。せやから、それを知りたいんやったら、自分らで接触するしかないで」
「せ、接触ってどうやって……?正体もよく分からないのに」
これまた、瞬の言う通りだ。面識のないどころか、得体の知れない、超常の存在に一体どうやって接触しろっていうのか。
すると、クソ矢は宙の一点を見つめ、少し考えてから、こう言った。
「……お前らの近くにおるよ。
「は……?」
──俺らの近くにいる?それって……。
「同じ……『人』ってこと?例えば、クラスメイトの誰かがそう……とか」
「正確にはちゃうけど。まあ、遠からずやな」
「誰なんだ、そいつは」
俺がそう訊くと、クソ矢は首を振って「それはあかん」と答えなかった。
代わりに、奴はこう言った。
「人やないけど、人の形で……『仕事』をしてんねん、あいつらは。いわば、『人』は仮の姿や。せやから、人としての、あいつらの情報はでたらめっちゅうか、ツギハギっちゅうか……よく考えると妙なとこが多いねん。ほんで、そのコミュニティの要職に就いとることが多いってのが、特徴やな」
「なるほど……」
瞬が腕を組んで考え込む。クソ矢はそんな瞬に「儂が言えんのはこのくらいや」と言った。
「まあ、せいぜい頑張り、って言いたいとこやけど。お前ら、【ノルマ】の方も忘れたらあかんよ。ちゅうか、結局こういうんは、一発逆転よりも、地道に稼いだ方がええで。レートやって、初期よりも渋くなっとるわけやし──」
──レート。
その言葉を聞いて、俺はもう一つ、こいつに訊かなきゃならねえことを思い出す。俺はクソ矢に「おい」と言って、訊いた。
「大した収穫があるとは思えねえが、一応お前に訊いてみるかってことがあるんだが」
「その口の利き方で儂が答える気になると思うか?」
「澄矢さん、ごめんね。あの、もう一個気になることがあって……」
「おう、何でも言うてみたらええわ」
「おい、俺と全然態度が違うじゃねえか!」
「康太」
瞬に肩を叩かれ、俺は引き下がる。クソ矢はそんな俺に、わざとらしく「やれやれ」と肩を竦めた。腹立つな。
と、そんな俺に代わり、瞬は俺の訊きたかったことを奴に尋ねる。
「昨日、その……康太が俺にキスをしたら、いつもよりも10倍くらいポイントが入ったの。特にボーナスってわけでもないみたいなんだけど……澄矢さん、それってどういうことか分かる?」
「分からん」
「うん、そっか。ありがとう。じゃあまたね」
「いや早いな、瞬ちゃんも」
はあ、とため息を吐きつつ、クソ矢がベッドの上で立ち上がる。そのまま、ふらりと消えるのかと思っていると、最後に……奴は俺達を振り返って言った。
「まあ、色々追っかけるんはええけど。さっきも言うたように、お前らは他にも考えることあるやろ?例えば──」
「例えば?」
首を傾げる瞬に、クソ矢はにやりと笑って、こう言った。
「どうやって、『べろちゅー』するか、とかな?」
「へ……っ!?」
一瞬のうちに、顔が真っ赤になってしまった瞬に「ほな」と言って、いつものように──クソ矢は瞬きの間にいなくなった。
「……うぅ」
顔を赤くしたまま、瞬が俯く。俺はそんな瞬の肩にそっと手を置いて、声を掛けた。
「瞬」
「……何?」
瞬がちらりと、俺を見上げる。俺は……昨日、ノルマを聞いた時から考えていたことを、瞬に言った。
「……この前は、瞬が色々調べてやってくれただろ。今度は──俺が、瞬をリードするから」
「……え?」
瞬の目が忙しなく瞬きを繰り返す。やがて──何かのキャパが超えてしまったのか、へろへろと瞬は床に突っ伏してしまったのだった。
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