第23話 うえのくに新聞--冬はみんなでうどん大会!クリスマス会!


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 はる、ひさしぶり。

 はるが園を出てから、もう十年以上経ったなんて、びっくりです。

 はる、無理しないでね。

 いろいろ、ごめんね。

 先生も、頑張るよ。


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 秋子先生へ。

 秋子先生、どうしてまだ出会ったばっかりだったのに、どういうことですか。

 なんて書いても、雪子さんに、この手紙は届かないと、ことわられてしまったよ。

 先生、私はお母さんと暮らしてて、それで、施設へ来たよね?

 やさしく先生が案内してくれたよね。

 お母さんは赤ちゃんで、私はそのお母さんをしていて、それでなにが起こったんだっけ?

 秋子先生のところへ行くまでのきおくが、抜け落ちていて、それなのに、またこんなところへ来て、分かりません。

 それから秋子先生、この頃のなっちゃんはもう(受け入れて)るんだって。

 なっちゃんがこの間、百円玉おばあちゃんに、私たちがいなくなったら、寂しいか、聞いてたよ。ということは、なっちゃんは先に、いなくなっちゃうのかな。私はどうしたらそっちに行けるんだろう。そのときはシロちゃんもつれていきたいんだけどな。だってあの子、なんで、しか言わないから。

 先生、はるは、いったい、誰なんですか。


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 私はあたらしい新聞をひらいた。



うえのくに新聞--「冬はみんなでうどん大会! クリスマス会!」


 そこに写っていたのはうどんをふーふー、しながら食べている子どもたちと、それから秋子先生もいる、それから、これは、私だ。私は新聞を目と鼻の先まで近付ける。

 二枚目の写真は、ちいさくてよく見えないけれど、クリスマスプレゼントをくばっている秋子先生と私だった。写真の中の秋子先生と私が確かに動いていた。私は時間を忘れて--といってもここには時計はないけれど、その二枚を見つめた。特に二枚目の夜のまんなかプレゼントをそっと子どもたちの枕元に置いている姿--なんだか変だ、私の体は、大きい。小学二年生とはいえない。一点を見つめ過ぎてめまいがする。

「はるちゃん、お風呂、行こう!」

 なっちゃんに呼ばれた。すでに準備万端のなっちゃん。バケツのカランコロンが聞こえた。

 お風呂に向かっている間私は上の空だった。さっきの新聞の写真が頭から離れなかったから。

「はるちゃん、おーい」

 なっちゃんが私の顔の前でぱちん、と手をたたく。けれど私はなにもない砂の世界をただ見つめる。

 クリスマス。秋子先生と私。

 プレゼント。子どもたちの頭。寝たふり。私が誰か子どもの足を踏んでしまって、そして「いたっ!」と言われて、それでサンタクロース二人でケラケラと笑っていた……。

「なっちゃんも、思い出したん?」

 私は言った。

「マラソン大会のとちゅうではるたち、おかしなことになって、それでここへ来たよな? そんで私たちはまだ子どもで私は小学校二年生でなっちゃんはあたらしい学校の教室にいてやさしく話しかけてくれた。なっちゃんときらきらを集めてた。なっちゃんも家のことで苦しくて、だからこんなところにいるの? それとも違うの? なっちゃんは(受け入れて)いて、それでもういいの?」

 一気に話すと息切れがした。

「はるちゃん、焦ったらだめやで」

 なっちゃんがとおくで言った気がした。

 目を開けたら私はお風呂にたどりつくまでの道であおむけに倒れていた。


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