第3話 新しい図書室
昼休みになり、なっちゃんがほかの友達も一緒に遊ぼうと言ってくれたけれど、私はちょっと行くところがあるんだ、先生に呼ばれてるから、と言って、教室を出た。
でも、本当は呼ばれてなんかいなくて、向かったのは図書室だった。
私は、転校前の学校でも、図書室が大好きだった。一年生になったばかりの頃、授業で初めて図書室へ行ったときは、部屋中にいっぱいの本たちを見て、どきん、と痛いほど心臓が鳴ったくらい。言葉がたくさんだ、めまいがする、そんなことを思った。
小さい頃から、本を読む事が好きだった。
そんなふうに日記に書いたら、お母さんに、「『小さいころから』って、あんたまだちっさいやん」と笑われた。うん。確かに。そう思ったけど、じゃあどう書いたらいいんだろう、すぐに私は思った。それ以外にも、私の書く日記や、手紙は、お母さんいわく、本に影響され過ぎているらしく、「あんた、子どもらしくないなぁ。もっとちっさい頃は、もっともっと、可愛かったのになぁ、戻ってほしいなぁ」と言われるたび、頭のてっぺんをさわられるたび、どうすればもっと子どもらしいと思ってもらえるんだろう、話し方を変えてみようか、と悩んだ。
図書室の場所はなっちゃんに聞いていたし、教室からわりと近かったけど、十分以上同じところを行ったり来たりしていたみたいで、昼休みの残り時間が減ってしまった。心細くって、歩きながら自分のつま先ばかり見ていた。雨の日の泥がまだついている。
ようやっと辿り着くと、あまり人はいなかった。私はとりあえず図書室の中を迷路のように回っていた。大縄跳びといい、回ってばかりだなぁと思った。
私には、探していた本があった。それは、前の小学校で見つけた、一冊の絵本。
絵本といっても薄いものではなくて、図鑑のように分厚い物だった。
私はそれを見つけたときいっしゅんで心を奪われたのだった。
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