書籍発売記念SS・最強と最強11
「なので、仮にかの存在が私たちにとっても不都合なのだとしても、討伐はお任せします。あなたならきっと、討伐できるでしょうし」
ノノンは最後にそう締めくくった。
後日。
「そこ、弱火で大丈夫ですよ」
「うっす師匠」
城の厨房には、キッチンコートを着たプリムラとエプロンドレスを着たノノンが居た。
約束通り、料理を教わっているのである。
「ふふ、オブさんより樹法が得意な人が居ると便利ですね! スパイスも果物も野菜も使い放題!」
「任せてくれ。その代わり、その材料を使う料理の再現を徹底的に教えてくれ。地球に居た頃はそこまで料理に詳しくなかったんだ」
プリムラは一ヶ月ほど滞在し、料理のレシピもそうだが単純に料理の腕をここで上げた。エルムになっても最初からチート気味だった料理の腕はまずここで醸造され、そして旅の間に実践を経て完成したと言える。
他にもオブラートとの邂逅はプリムラにとって僥倖だった。なにせ、パラレルワールド感はある物の、地球で製薬に携わっていた人間だと言う。
トリカブトの毒やネットの一部で有名だったギンピギンピなんかはプリムラも知っている。だがストリキニーネやオレアンドリンやリシンなんて毒は知らない。
これら全て植物から得られる猛毒である。
「毒草って思ったより沢山あるんだな。俺、日本の有名なやつ以外だとギンピギンピとかドクニンジンくらいしか知らんかった……」
「ドクニンジン……、ソクラテスを殺した毒草だね。やっぱ学生ってそう言うの調べちゃうの?」
「まぁ、大なり小なり厨二病って心にこびり付くよなぁ。……ユズリハさんだって覚えはあるだろ?」
「まぁ、ねぇ? (と言うかネトゲの廃ユーザーなんて誰も彼も例外無く厨二病でしょ)」
ただ味噌と醤油を手に入れて刺身を楽しみたかっただけの武国観光だが、プリムラにとって予想の数倍は有意義な時間となった。
「でも結局、魔王の影響を多分世界で一番受けてるだろう武国でも、奴がなんなのか分からないのか」
「そうだねぇ。僕らは所詮、オリジナルのコピーだし」
ノノン達は突然この世界に放り出され、今日まで生きてきた。有り余る武力で国とトップを取ってしまう辺りは流石だが、それでも魔王が謎過ぎる存在だと言う事に変わりはなかった。
「魔王を倒したらユズリハさん達が消えちゃうかもって聞いたけど、本当に良いの?」
「ん? もちろん構わないよ。だって僕らコピーだし」
誰もがそれを受け入れてる様に見えるので思わず聞いてしまうプリムラだが、答えるオブラートはあっさりしていた。
「軽すぎない?」
「そうかい? いやでも、僕なんてお嫁さんがオリジナルの方にだけいるんだよ? 辛くない? ノノンちゃんなんてお嫁さんだけはフルメンバーなのにさ」
それを聞いたプリムラは少し悲しい気持ちになった。確かに自分だけ嫁のコピーが居なくて、仲間はフルメンバーで百合ハーレムしてたら辛いだろう。
「そっか。ユズリハさんは嫁さんを元の方に置いてきてんのか」
「もしかしたら魔王が死ぬと、僕らコピーの魂的な情報がオリジナルに戻る可能性もあるし? だから、君は僕たちの事を気にせず思いっきりやると良いよ。ノノンちゃんとやり合える君だったら何も問題なんて無いだろうし」
──まぁ、魔王さんとやらを討伐出来たらまたおいでよ。その時僕らが居るか分からないけどね。
オブラートはそう言って席を立ち、タバコに火をつけながら歩いて行った。それを見送ったプリムラは、休憩を切り上げて厨房に戻る。料理の修行はまだ終わってないのだ。
𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸𓂃 𓈒𓏸
以上、SSとは名ばかりのクソ長い番外編でした。
ごめんない全然ショートショートにならなかった。
ただ他作品とコラボするだけでは新規さんがつまらないかと思って、エルムが意味不明なくらい料理上手な理由と、魔王の存在がどれくらい意味不明で理不尽かを補足出来る内容にしてみました。
エルムが「旅の途中で学んだ」とされる料理の大部分はここですね。
そして高校生の癖に、幽霊部員だった癖に植物とかに詳しすぎじゃねって部分の補足もここです。
あとプリムラの剣術がブイズ由来な理由も、ここでの経験が元ですね。高名な剣術家などには教わらず、要は体格が似てる人に教わりゃ良いんだと知ったプリムラは年齢も体格も近しいブイズに教わった訳ですね。
ぶっちゃけると、いつか使おうと思ってたストーリーに処女作のキャラを差し替えてのコラボなので、キャラ差し替えが無いなら無いで問題無い回となってます。
何を勘違いしたのか高尚なお言葉を残す素敵な方もいらっしゃいましたが、あまりに素敵過ぎたので殿堂入りして頂く形で処理しました。
もちろん皮肉です。普通にモチベは下がるしなぁ……。
では、また少し更新が止まりますが、まだまだエルムの冒険は続くのでお待ち頂けたら幸いにございます。
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