書籍発売記念SS・最強と最強9
ずっと違和感は感じてる。だがその違和感の正体には辿り着けない。プリムラはシルル戦から続くモヤモヤが解消されずにいた。
「
襲い来る樹木をとうとう拳と蹴りでも対処し始めたノノンを観察しながら思考する。
明らかに魔法の系統を逸脱した効果が散見される。一つ一つを見れば、刃法や霊法でも不思議じゃない。例えば分裂する斬撃などは刃法だけで再現可能である。実際、ある程度は刃法も使われているのだろう。
しかし、たった今ノノンが繰り出した技はなんだろうかとプリムラは頭を悩ませる。
蹴りで振動が伝わった樹木が硬直したり、殴った枝が捻れて爆散なんて魔法をプリムラは知らない。
「もう少し、分かり易くしましょうか」
大樹の幹を駆け上がりプリムラを追うノノンが呟く。それを耳で拾い、しかし好きにさせると命に関わるのでそれはそれとして妨害は行うプリムラ。
「
明らかにヤバそうな呪文が聞こえ、プリムラはたんぽぽの綿毛と油分の多い花粉をばら蒔いた。総数で言えば
「滅びを
呪文を続けながらも綿毛が危険だと判断したノノンは迂回を試みるが、その前にプリムラが指をパチッと弾いて魔法を使う。
──────轟ッッッッ!
プリムラのフィンガースナップによって発動したのは小さな火花。それに引火し、連鎖し、発生する現象は皆が大好き粉塵爆発。
特定の酸素濃度。爆発下限濃度を超える可燃物。そして火種。この三つが揃うと粉塵爆発は発生する。創作では既に使い古された現象ではあるが、実際に起こりえて大変に危険だからこそ使われるのだ。
爆轟を前に、吹き飛んだノノンを確認して立ち止まるプリムラ。もちろん「やったか?」なんて口にはしない。十中八九やってないだろうし、仮に倒せてたとしてもソレを口にしたら蘇りそうな気がしたから。
「──発動、【屍山血河】」
しかし爆発で吹き飛んだ先で土埃を振り払いながら出てくるノノンはほぼ無傷だった。スカートのフリルが多少は煤けている程度の被害しかなく、プリムラは自分のことを棚に上げて化け物だなぁと感想を漏らす。
「粉塵爆発とはやってくれますね。綿毛、普通に毒とかの搦手かと思ったんですけど」
「ストロングスタイルが使えないとは言ってないぜ」
激突した木の幹から砂埃を払いながら出て来たノノンは、先の呪文で発動したのか黒い霧を纏っていた。やはりそんな魔法を知り得ないプリムラは、いよいよ真面目に考察を始める。
「まずは能力の検証」
周囲の樹木から木の槍を飛ばして様子見をするが、しかしノノンは一切の回避をしなかった。
全てがヒットし、肉を穿ち血が流れ、そんな事お構い無しに足を動かしてプリムラへと向かってくるノノン。
「先にお教えしましょう。私のこの能力は、私が血を流す度に私を強化し続ける物です」
「滅茶苦茶だな」
ダメージに反応するバフ。それ自体は恐らく霊法で再現可能だと思われる。しかし、出血に反応するという言葉通りならば少し意味合いが変わる。そして黒い霧も意味が分からない。
首を両断しようとする剣閃をスウェーバックで回避し、そのまま体重を後ろに預けて足場の枝から落下してノノンと距離をとる。ソレを三角飛びの要領で追い掛けるノノン。
「頭狙いは禁止じゃなかったか?」
「首は頭じゃ無いでしょう?」
それはそう。プリムラはノノンが口にする暴論に納得してしまった。
「抜刀、
「なん、…………はぁッッ!?」
目の前で抜刀され警戒するが、直後に背中で冷気が炸裂して対応に遅れる。
一瞬の隙。それでノノンには十分で、しっかりと二刀を左右から振って殺しに掛かる刹那。
「だったら俺も見せてやるよ!」
背中は凍り、回避不能のタイミングで左右から業物が迫り来る刹那のタイミングでプリムラは鬼札を切る。
「概念領域、展開────!」
漆黒の刀がプリムラの首を刎ね飛ばし、純銀の刀がプリムラのヘソを真横に両断する最中。
「概念魔法、
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