引率役。
「ああ、魔法学校の生徒さんなんだね。道理で魔法が上手いわけだ」
「俺と同じレベルを奴らに求めたら可哀想だぞ?」
未だに名乗りあっても無いのに、すっかり意気投合している二人。
エルムはベルンパーティに軽く挨拶をしてからガラス剣の男が居たテーブルに移っている。そもそもエルムはベルン達のパーティメンバーではないのである意味当然なのだが。
流石に今から外に出て魔法武器の試し撃ちなどはやらないが、機会があれば二人ともお互いの武器の性能を見せ合おうと約束する程には親交を深めている。
何度も重ねるが、未だに二人は名乗ってない。ガラス剣のパーティメンバーすらもそれに倣っているのか名乗らない。
それでも不思議と、そのテーブルは旧知の間柄が如く話が弾んでいる。
「えっ!? まって型法ってそんな使い方も出来るのかい!?」
「まぁ一般的じゃねぇかも。だけど知っとくだけで幅が増えるぜ? それで拾う命もあるだろうさ」
専ら喋るのはガラス剣とエルムであり、メンバーはそんな二人を微笑ましそうに見守りながら酒を飲んでいる。
エルムは久方振りに魔法を語り合える相手がいる事に浮かれ、かなり童心に帰ってる珍しい状態になっていた。端的に言うとかなり機嫌が良い。
(そういや、アトゥンの奴ともこうやって語り合ったっけなぁ)
エルムの記憶にあるのは、目の前のガラス剣と同じくらいキラッキラの顔で魔法について語り合った過去の友人。
裏切りに手を貸しただろう一人であり、恐らく最もエルムと言葉を交わした人物でもある。
(アトゥンも転生だか転移だかしてんだっけか。どこにいんのやら……)
まさか少し前に同じ建物で超接近してたなど思いもよらないエルムは、どこか遠い国でまた魔法の研究でもしてるのかと思いを馳せる。
六勇者はなぜか奇跡的に使用する系統が被らなかった上に、全員合わせると全属性だったと言うミラクルなメンバーだった。その中でもアトゥン・オフトゥンは燐法、型法、仌法の
エルムがノルド達に教えた膨張法も元はアトゥンが生み出した訓練法で、それを勇者となる前に世間へと広めた功績があるので、勇者である事を除いても割りと真面目に偉人だったりする。
今エルムがガラス剣の男に教えてる刑法の使い方も、エルムとアトゥンが二人で開発した術式が殆どだ。
「いやぁ、ありがたいねぇ。ここまで独学で魔法を覚えて来たけど、魔法使いとして格上の人から教わるってのは本当に貴重だよ」
「普通は
「ああ、ウチは俺だけだよ。と言うか魔法が使えるのに冒険者なんてやってる奇特なやつなんて早々居ないってば」
「このテーブルには二人も居るけどな」
ガラス剣の男をはじめ、メンバーは全員農村出身らしい。ガラス剣の男は旅の魔法使いから少し教わって魔力の知覚に成功し、そこからは独学だと言う。
エムルもプリムラ時代は似たようなものだったので、そこも親近感が湧いている。
「それにしても、魔法学校の生徒ってことはまた後で会うかもね。俺達は今度の
「…………蛙狩り?」
「あれ、知らない?」
何やら課外授業がまたあるのは知っているが、何かと忙しくてまだ情報に目を通してないエルム。
「一年生って言ってたよね? なら参加すると思うんだけど」
「…………忙しくて話聞いてねぇんだよなぁ」
「ありゃりゃ」
くつくつと笑うガラス剣の男に話を聞けば、どうやら特定の領地で特定の生物が大繁殖する時期が重なってるらしく、魔法学校の一年生は毎年その駆除に駆り出されるのだとか。
その一つが蛙狩りであり、他にも鼠狩りや
「そうなのか。でも三分の一だな」
「蛙狩りは受入人数が多くて半分以上の一年生はここに回されるらしいよ。毎年この護衛を引き受けてるから、今年もそう違わないはずさ」
「なら二分の一か」
人が住んでる場所だからこそ害獣の駆除が必要になるのであって、当然ながら人が住んでるならば受け入れ可能な人数だって場所による。
小さな農村に百人も千人も受入など出来るはずも無いのだ。
だからこそ場所によって受入人数が違い、蛙狩りが行われる場所は最寄りの村が大きく受け入れ可能な人数も多いそうだ。
「ふーん。ちなみにその蛙って食えるの?」
「ああ、食べれるらしいね。その村では主要な食料の一つだって聞いたよ。大きくて食いでがあるってさ」
(となると、ウシガエル系か? 大きいって言うならゴライアスガエルとかかね。どっちも食用に出来る蛙だが)
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