タマ!(タマ視点)
絶対に負けない!
お兄ちゃんにご褒美貰うのはタマだもん!
ポチ兄ちゃんはお兄ちゃんから可愛い服とか沢山貰っててズルイもん! 男の子の分と女の子の分どっちも貰っててズルイもん!
「……んみゅっ、にゃぁぁああ!」
見付けた魔物を思いっ切り殴る。森を走りながら、少しも止まらずに全力で。
「ピギィィイイイッッ!?」
「うるっ、さぃ……!」
殴った魔物がパーンって弾けて、後ろにいた別の魔物が驚いて叫ぶ。煩いから今度は蹴飛ばした。ビンビンって人を探さないといけないから邪魔しないで!
お兄ちゃんから貰った腕輪が凄い。魔力を全然使ってないのに凄い強くなれる。ポチ兄ちゃんが貰ったナイフも同じくらい凄いのかな。
「…………くんくんっ、すんすん」
金髪の匂いを辿る。来た道を辿れば、ビンビンとその他大勢が居るはず。そこから適当にビンビンと数人を攫って帰ればポチ兄ちゃんにも勝てる!
ポチ兄ちゃんはあんまり喋らないけど、頭が良い。タマはあんまり頭が良くないから、グズグズしてたら作戦とかで負けちゃう。
タマがポチ兄ちゃんに勝ってるのは速度! お兄ちゃんに教えてもらった霊法で最初っから最大速度で走り続ければ負けない! これくらいしかタマには分からないから、ずっとこうする!
「んと、…………なんにん?」
ビンビンが五点で、他が一点だから、タマは何人連れて帰れば良いの……?
分かんないけど、抱えられるだけ抱えたら良いよね。サーヴァント作って全員運べば負けない!
「にゅふっ、えへへぇ……♪︎」
お兄ちゃんに何して貰おうかな。一日中抱っこして貰って、寝台でゴロゴロなでなでして欲しいな。
国なんて要らない。お兄ちゃんのそばが一番嬉しい。
「……………………ぉょめ、しゃん」
に、して欲しい。なんてお願いはダメなのかな。お兄ちゃんと結婚したいって言ったら、怒られるかな……?
なんでも良いって言った。お兄ちゃんはなんでも良いって。
ダメかな。良いかな。分かんない。お兄ちゃんのお嫁さんになるのは、国? より大きなお願いだと思う。どうなのかな。
「…………ぅぅぅう、わかんにゃぁぁあ!」
分かんないから魔物を殴った。学校のじゅぎょーで聞いた、これがダプラって魔物だ。じゃぁ獲物は近いのかな? くんくん……。
「…………!?」
殴った魔物がぐちゃぐちゃになって、血の匂いが酷くてよく分からなくなっちゃった。それと、後ろから聞きなれた音がした。
ポチ兄ちゃん、もう追いついて来たの!? やだやだ負けたくない! ポチ兄ちゃんは男の子だからお兄ちゃんのお嫁さんなれないでしょ! 譲ってよ!
「ぜったぃ、まけにゃぁ……!」
走る走る。負けたくないから森を走る。
「…………血! みちゅけたっ」
自分で振り撒いた血の匂いで追跡出来なくなったけど、地面にポツポツと血の跡を見付けた。これを追いかければきっと、獲物が居るはず!
「まけにゃぃ……!」
お兄ちゃんに貰った力を振り絞る。体の全部でぐるぐる回して、力に変える。
お兄ちゃんがバフと呼ぶ強化魔法。ただ力を強くするだけなら基礎の基礎。
だけど霊法はもっと沢山出来ることがある。それをタマはお兄ちゃんに教えてもらった。
筋肉だけを強くする奴は三流ですらない。お兄ちゃんはそう言ってた。
まず強化すべきは骨。人は自分の骨が耐えられない力を出すと勝手に自滅する。
次に強化するのは関節。人が鍛える事が出来ない場所で、人の動きが全部そこから生まれる大事なところ。
骨、関節、筋肉。少しずつ割り振りを変えて、タマに最適な強化を見付け出す。
分散強化!
森の土を踏み締めて、加速する。もっともっと早く走れる。
景色を全部置き去りにして、森の匂いだけがそこにある。
「にゃぁぁああ…………!」
楽しい。お兄ちゃんがくれた力は、ただ走るだけでこんなにも楽しい。
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