ポチ!(ポチ視点)



「でも普通に助けるんじゃつまらんよな」


 お兄ちゃんはそう言った。


「よし、この件はポチとタマに任せた! ビンビンが五点、他の奴が一点で連れ帰ったの多い方にご褒美をやろう! 何でもお願いを一つ聞いてやる!」


 お兄ちゃんは、そう言った。


 聞いた時、体がビリビリした。


 なんでも? なんでも良いの?


 妹がお兄ちゃんの服を引っ張る。


「………………なん、でも?」


「おう、何でも良いぞ。国が欲しいなんて願いでも全力で叶えてやる」


 そんな物は要らないけど、どうやら本当になんでも良いらしい。ポチはタマを見て、タマもポチを見た。


 お互いに目で語る。「ぜってぇ負けねぇぞ」と。


 すぐにでも森へ行こうとするポチ達をお兄ちゃんが引き止めた。


「待て待て。当たり前に戦闘が予想されるから、お前らに専用装備をくれてやる」


 お兄ちゃんがスイカズラから材料を取って、二本のナイフと二つの腕輪を作った。


「ハルニレと似たような術式を簡易的に組んだ『ハルニレ・ナイフ』と『インスタント・ベース』だ」


 ポチはお兄ちゃんのハルニレそっくりのナイフを二本貰った。タマは二つのベースを腕に嵌めてもらってる。


 嬉しい。またお兄ちゃんに貰った。凄く嬉しい。


 ハルニレ・ナイフ。かっこいい。お兄ちゃんの剣にそっくり。それが二つもある。


「ちゃんとした術式は帰って来てから改めて付けてやるから、今はこれで我慢しろ」


 文句なんて無かった。お兄ちゃんから貰える物だったら、その辺の石でも嬉しい。ピカピカに磨いて飾っちゃうくらいに。


「…………ポチにぃちゃ、しょーぶ」


「ん!」


 タマも本気だ。お兄ちゃんに何でもご褒美を貰えるんだから当たり前。


 一日中抱っこして貰ったり、なでなでして貰ったり、なんでもお願いを聞いてもらえる。こんなに素敵な事は無い。死にかけてるビンビン達に感謝したいくらいだ。


「よーい、スタート!」


 遊びゲームが始まった。


 ポチはハルニレ・ナイフを一本地面に刺して、サーヴァントに変える。タマは霊法で自分を強化出来るからサーヴァントを使わないと負けてしまう。


 タマを見れば、ベースから木の鎖を伸ばして脚にも装備を作ってる。ああ言うのを脚甲グリーヴって言うんだっけ。もちろん腕に手甲ガントレットもある。


 ポチが小さなスイカズラを作ってる間に、タマは装備を整えたらすぐに森へ突撃して行った。やっぱり発動するだけで良い霊法と、しっかり組み上げないと使えないサーヴァントじゃ霊法の方が早い。


「頑張れよ」


 スイカズラに跨ってタマを追いかけようとすると、後ろかなお兄ちゃんの声が聞こえた。ニコニコしちゃう。お兄ちゃんに応援してもらった。嬉しい。


「…………んっ!」


 お兄ちゃん好き。お兄ちゃん大好き。早くお兄ちゃんのを取ってきて褒めて欲しい。ほっぺがむにゅむにゅしちゃうけど、我慢して森に入る。


 ノルド兄ちゃんが言ってた。ビンビンの旅団は全員で十五人。


 あの金髪の人が抜けて残りは十四。ビンビンが五点だから、最高得点は十八。


 半分にすると九点。引き分けだとご褒美は貰えるのかな?


 ビンビンが五点。他が一点。だからビンビンと雑魚を四人で最低でも引き分けになる。雑魚を五人奪えたら勝ちが決まる。


「…………んひひ」


 十四人全部が生きてるか分からない。だから九点て引き分けなのも予想でしかない。お兄ちゃんに数字の計算を教えて貰って良かった。


 頑張らないと。凄く頑張らないと。


 さっきはダメだった。お兄ちゃんに沢山教わったのに、何も出来なかった。ノルドにぃちゃ達が助けてくれたけど、本当は自分で何とか出来たのに。


 自分が許せない。お兄ちゃんに沢山貰ったのに。何も出来なかった自分が許せない。


 だから頑張る。沢山頑張って、お兄ちゃんに褒めてもらう。


「…………んふふぅ」


 いっぱいヨシヨシして欲しい。たくさんぎゅってして欲しい。


 頑張る。ポチは頑張る。


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