第45話.ゴーレムとの死闘1

 ゴーレムがゆっくりと動き出す。


 その目が、アルフレッド達をとらえると激しく光をはなった。


「来るよ!!」


 ルーファスが叫ぶと、全員がその場から大きく飛びのいた。


 ドゥッという音がして、ゴーレムの目から光の奔流ほんりゅうが放たれる。それは、一直線に伸びて先ほどまでアルフレッド達が居た場所に直撃した。


 直撃したところの床はえぐれ、そのあまりの熱に、石材が溶ける。


 驚くほどの威力だ。


「あっつ」


 カルロスがその熱気にあてられて叫んだ。


「あんなもん喰らったら一瞬で骨まで溶けちまう」


 悪態をつきながら、カルロスはその場で魔法の準備を開始した。


 アルフレッドは走りながら、単発式魔銃アルプトラムに弾丸が入っていることを確認すると、ガシャンと音を立てて銃身を起こす。


 そして、ゴーレムの右側に回り込むと、単発式魔銃アルプトラムを構えて引き金を引いた。


 ダァーンという轟音と共に、弾丸はまっすぐにゴーレムへと突き進む。


 そして……


 ゴンッという鈍い音を立ててゴーレムの脇腹へと命中した。だが、ゴーレムの脇腹は、ほんの少し陥没かんぼつしただけで、ほとんどダメージは無い。


 アルフレッドの位置からは、傷一つ付いていないように見えた。


単発式魔銃アルプトラムかない!?」


 愕然がくぜんとするアルフレッド。充分じゅうぶんに魔力を込めたのに傷一つ与えられなかった。


 一方、ルーファスとリリアーナは武器を構えてゴーレムに接近していた。二十メートルほどの距離を一気に詰める。


「おおおおおおおお」


 裂帛れっぱくの気合を込めて、ルーファスはゴーレムの足に向かって、短槍たんそう石突いしづきり出す。最初の部屋に居たガーゴイルを一撃でくだいた技だ。


「はあああああああ」


 リリアーナも同じように気合を込めて、魔力をまとった細剣さいけんの突きを放った。


 ギーーンッ


 だが、二人の渾身こんしんの一撃は、どちらもかたいゴーレムの足にはじかれてしまう。あとには、金属のぶつかり合った音だけが残る。


「硬いな」


「硬いわね」


 二人の攻撃した場所も、ほとんど傷らしい傷はついていない。


「二人とも、どけっ」


 カルロスが叫んだ。どうやら、魔法の準備が整ったらしい。天に向かってかかげられたカルロスの手の上には、長さ三メートルにも及ぶ巨大な炎の槍があった。


終焉しゅえんより来たれり破壊はかいの炎よ、我が武器となりて敵を撃て。


 カルロスが力を解放すると、巨大な炎の槍はまっすぐにゴーレムへと突き進む。


 そして……


 ドッゴーンという轟音ごうおんと共に、盛大せいだいな炎がゴーレムを包み込んだ。


「くそっ、効いてないだと?」


 炎から出て来たゴーレムは、多少すすけてはいるがほとんど無傷むきずだった。


 そこへ、再度ルーファスとリリアーナが突貫とっかんする。しかし、結果は同じだった。甲高かんだかい金属音をひびかせただけで、ゴーレムの体を傷つけるにはいたらない。


 そして、ゴーレムの方も黙って攻撃を受けるだけではなない。


 異常なまでに太く長いゴーレムの腕を振り回し、近寄ろうとするルーファスとリリアーナに叩きつける。


 だが、身軽な二人は、それを危なげなくかわし、ゴーレムに接近する。


 接近したところで、ゴーレムの単眼たんがんに光が集まる。それを察知さっちしたルーファスとリリアーナは、急いでその場を離れた。


 ドウッという音と共にゴーレムの単眼から光がほとばしった。


 たった今、ルーファスがいた床がぜた。爆風で飛び散る床の破片がルーファスを襲う。


「ぐぅ」


 いくつかの破片がルーファスに当たり彼の身体を傷つけた。


「ルーファスさん!」


 アルフレッドが悲痛な叫びをあげながら、ゴーレムの注意を引くために引き金を引いた。


 ダァーンという轟音と、ゴンッという鈍い音が響く。


 ほとんどダメージは与えられないが、ゴーレムの気を引くことには成功したようで、単眼たんがんがアルフレッドをとらえる。


「大丈夫だ」


 ルーファスは心配無いと言うように軽く笑みを返した。


「目から出る光線こうせんは要注意だが、動きはそれほど速くない。だけど、この硬さは厳しいな。このままだとジリ貧だ」


 ルーファスの声に焦りが混ざる。


「ゴーレムなら、どこかに『真理』を表す古代文字があるはずです。それさえ見つければ、何とかなります。探してください」


 アルフレッドが、ルーファスの言葉に答えるように叫んだ。


 アルフレッドの言うことは正しい。


 古来よりゴーレム生成にはいくつかの制約せいやくがあるとされている。その中でもっとも重要な制約がゴーレムの体のどこかに『真理』を表す古代文字をきざむことだ。


 この制約は絶対で、これを刻まない限りゴーレムを起動することは出来ない。


 そして、『真理』の古代文字のうち一文字を消すことで『死』を意味する古代文字となる。


 これがゴーレムにおける最大の弱点だった。


 刻まれた文字が『死』を意味する文字になれば、そのゴーレムは活動を停止する。


 これだけ力のあるゴーレムだ。必ずどこかに『真理』を表す古代文字が刻まれているはずだ。


「分かった。手分けして探そう」


 四人は、攻撃することは諦め、ゴーレムの攻撃をけながら、どこかに刻まれているはずの文字を探すことに専念した。

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