第44話.ゴーレム

 通路の一番奥はあんじょうとびらになっていた。


 仕組みは今までと同じで、扉の部分に魔力を流せば開くのだろう。


「いいかい、開けるよ?」


 扉を開ける前にルーファスは後ろを振り返って確認する。この奥には、イーリスが待っているかもしれない。


 アルフレッド達は緊張した表情で、固唾かたずを飲んだ。


 ルーファスが魔力を流すと、扉は音も無く左へとスライドした。その先に広がっていたのは、彼らの想像とはかけ離れたものだった。


「うわぁ。広いね」


「これは、すごいな!」


 リリアーナとアルフレッドが同時に感嘆かんたんの声をらす。


 そこに広がっていたのは、直径50メートルほどのドーム状の空間だった。あまりにも広大こうだいで、ここが地下だと言うことを忘れそうになる。


 ドーム状の部屋の天井は、一番高いところで20メートル以上はありそうだ。


「あれは……?」


 リリアーナが中に入るなり足を止めた。その視線は、広い空間の一番奥に固定されている。ちょうど、ここからは反対側にあたる位置だ。


 同じように、ルーファスとアルフレッドも茫然ぼうぜんと立ち尽くしている。


 そこには、巨大な何かが立っていた。


「ガーゴイル……、いや、ゴーレムか?」


 アルフレッドがかすれる声でつぶやく。


 圧倒的な存在感を放っているそれは、かなり大きく高さは5メートルに届くのではないだろうか?


 人型ひとがたと言っていいのか微妙なところではあるが、それは人の様な形をしていた。


 肩から腕にかけて、異常なまでに太く長い。胸より上もかなりあつい。頭にあたる部分は、首が無くほとんど胸に埋まっているような形だ。


 上半身の大きさに比較して、下半身は異様に細い。骨格だけで成形されているのではと思えるほどだ。


 足の指にあたる部分だろうか。かなり長く三俣に分かれている。それで、がっちりと地面を掴んでいるのだろう。その細さのわりには安定感があった。


 遠くて断言できないが、石で出来ているというよりは、質感は金属のそれに見える。黒に近い色で、表面がやや光沢こうたくをおびているように見えた。


「ゴーレムだろうな。しかし、あれは、でかぎやしないか?」


 カルロスも遠目に見えるその巨体に驚きを隠せない。


「たぶん、あれを倒さないと先に進めないみたいだね」


 ルーファスはあたりを見渡みわたしながら言った。この直径50メートルを超えるほど広いドーム状の空間には、あのゴーレム以外何も無いのだ。


 先に進む通路や扉も見当たらない。


「そうですね。通路も扉も見当たらないし。さすがにあれを無視して先に進むのは無理でしょう」


 と、これはアルフレッドだ。


「あんなおっきいの倒せるのかしら。すごく硬そうだし」


「剣が効かなきゃ特大魔法をぶち込むまでよ」


 リリアーナが不安そうな表情を浮かべる一方で、カルロスが自信ありげな笑みを浮かべる。


「でも、ゴーレムって魔法効き難いんじゃなかったっけ?」


「それを言うなら、物理も効かねぇだろ?」


「うーん。どっちにしても大丈夫かなぁ?」


 ルーファスとカルロスの会話が、さらにリリアーナを不安にさせる。


「まあ、やってみないと分からないし。とりあえず行ってみようか」


 ルーファスはそう言うと、ゴーレムに向かって歩き出した。


 一行がその巨大なドーム状の空間の中央に達したところで、異変は起こった。


 まず最初に、ゴーレムの立っている辺りの床から青白い光が浮かびあがる。その光は、ゴーレムの立っている位置を中心に円を描くように広がった。


 アルフレッド達からは、ゴーレムを中心にゆかから青白い光があふれているように見えた。


 もしも上から見ることが出来たのならば、ゴーレムを中心に青白い光で描かれた魔法陣を見ることが出来ただろう。


 その光に呼応するように、ゴーレムの表面を無数の青白く細い光が走った。


 その光が上まで達した時、ゴーレムの頭の中央にあるひとつの目に青白い光が宿やどる。

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