第40話.イーリスの隠れ家
アルフレッド達は、フォートミズを出発した六日後に、イーリスの隠れ家と思われる場所に到着した。
カテリーナが
レチェの街から、
かなり険しい山道だと聞いていたので、シルワとフロースをはじめとする馬たちはレチェの街に預けて来た。
街からイーリスの隠れ家がある付近までは、リカードの手の者が案内してくれた。その人は、フランツと名乗る30歳前後の痩せた男性で、気さくな性格の持ち主だった。
彼は
「もう少しで到着します。ここからは静かに行きましょう」
フランツは振り返ると、
その渓谷は、以前は水が流れていたのだろうが、今は
左右の崖は、高さ数メートルにも及び、とても長い年月をかけて、硬い岩石が水で削られて来たことを物語っていた。
しばらく進むと、
「あそこに見えるのは我々の仲間です。ああして、ずっと出入り口を見張っていたのですが、ここ一週間イーリスも含め、人の出入りはありませんでした」
ほどなくして、アルフレッド達も見張りのいる岩陰に到着する。
「異常は?」
「ありません。ずっと見てましたが、誰の出入もありませんでした」
そうであれば、他に出入り口が無い限り、イーリスはまだ中に居るということだ。
アルフレッドは、入り口を探して、見張りが見ていた辺りに目を向けるが、それらしいものは見つけられなかった。
「入り口というのは、どこにあるのでしょう?」
ルーファスも同じことを思ったのだろう。フランツに尋ねていた。
「
道中にフランツから聞いた話によれば、カールフェルトの街で再びイーリスを発見した彼らは、そこからずっと尾行していたらしい。
そのおかげで、この場所を発見出来たのだ。
「それでは、ご案内します。ついてきてください」
フランツはそう言うと、反対側の崖を登り始めた。切り立った崖と言っても、完全な垂直ではないし、手や脚をかけるところがないほど、
難なく崖の中腹まで登ったフランツを追って、ルーファス、カルロス、アルフレッド、リリアーナの順で崖を登る。
その崖の中腹には、人ひとりが通れるくらいの
ちょっと見ただけでは、自然に出来た
だが、アルフレッド達には入り口らしきものは見つけられなかった。
「こちらです」
フランツが
しかし、じっくりと観察してみると、確かに、ちょうど扉の形にも似た長方形の切れ込みのようなものがあった。
「入り口の開け方は我々にも分かりません。というより、試していません。もし開いてしまったらイーリスに見つかってしまうかもしれませんから」
確かにそれが正解だとアルフレッドは思った。
フランツ達は、戦いに関しては素人らしい。そんな彼らがもし見つかったら、それだけで危険だし、尾行がばれれば今度こそ逃げられてしまうかもしれない。
だから、ここを見張っていただけなんだろう。
「ちょっと僕に見せてもらってもいいですか?」
そう言いながらアルフレッドが入り口の前に出た。そして、入り口と思われる岩壁を手のひらでペタペタと触っていく。
「ここかな?」
アルフレッドは、そう言いながら岩壁の右の方を手のひらで触れた。すると、岩壁にある長方形の切れ込み部分が、音も無く奥へと数センチ
「おっ、開いた!?」
「すごいね。アル。どうやったの?」
ルーファスが感心して、アルフレッドの手元を
イーリスの隠れ家なのだから同じである可能性は高いと思っていた。
「扉に触れて、魔力を流しただけですよ」
アルフレッドは、時間経過により自動で閉じた扉の右端のあたりを
「どうして、この程度で開くかは分からないんですけどね。今のイーリスはカティの身体を使っていますから、物理的な
「それは、今の状況を見越したうえでイーリスが用意していたってことだね」
ルーファスが考え込むようにそう言うと、アルフレッドも真剣な表情で深く頷いた。
「しかし、よく見つけたね。アル」
「たまたまですよ」
そう
それを知っていたからこそ、開けられたので、たまたまというわけでもなかった。
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