第36話.インサニアとモルスマギ
机の上に革袋が置かれる。そこそこな
リカードは、革袋に手を突っ込むと、そこから
「これは?」
アルフレッドが聞くと、リカードは嬉しそうに白い歯を見せる。
「対イーリス向けにロズウェルと開発した新しい武器、
アルフレッドは
形も、
「君の持っている
アルフレッドは首を傾げる。
「それは、これでカティを撃つってことでしょうか?」
「そうだ。もちろん、頭や内臓に当たればただでは済まないから、狙うのは腕や脚だ。それなら、回復薬でも治せるだろう」
なんてことも無いように言うリカードに、アルフレッドは少しだけ腹が立った。いくら死なないからと言っても、大切なカテリーナに銃を向けるなどありえない。
「すみません。いくら、回復薬で治せるとしても、僕にはカティを撃つなんてことできません」
「甘いよ、アル。それを言えるのは、圧倒的な実力差で相手をねじ伏せられる場合だけだ」
アルフレッドの不機嫌さを感じ取ったのか、そうでないかは分からないが、リカードは表情を真剣なものに変える。
「相手は、あのイーリスだ。そんな甘いことを言っていて、前回みたいに逃げられたらどうする?
「それは……」
リカードの言葉は正しい。アルフレッドもそれは分かっているつもりだ。でも、気持ちがついて来ない。
「いいかい、アル」
リカードはそう言うと、先ほどの革袋の中から弾薬を一つ取り出した。
「この弾はね
「相手のマナを乱す?」
「そう、つまり、これをイーリスに当てれば、彼女の得意な魔法を一時的に無効化できるということだ。もしかしたら、
「
アルフレッドは、小さな声でその名前を口にする。カテリーナに魔銃を向けることには、まだ抵抗があった。だが、それと同時に
「これを使うかどうかの判断はアルに任せるよ。ただ、使うのを
「ありがとうございます」
アルフレッドは小さな声で礼を言った。まだ、複雑な気持ちなのは変わりないが、リカードが自分のこと、それからカテリーナのことをすごく考えてくれていることは分かったからだ。
「まあ、これに頼らないでなんとか出来るくらい強くなればいいんだけどね。ただ、今は、そこまで時間が無いから……」
「はい……」
「それに、この
「なるほど」
「イーリスに使わなくても、有用なのは分かってくれたかな?
そう言って、リカードは部屋を出た。
リカードについていくと、射撃場へと入っていった。そこは、部屋の奥行が長く、向こう側の壁の近くにはいくつかの円形の
リカードは、おもむろに
その後、リカードは
「弾丸は?」
アルフレッドが
「リカード様、弾を込めなおさなくても二発も撃てるんですか?」
「うん。これが
得意げなリカードは、まるで宝物を自慢する子供の様に嬉しそうだ。グリップの下部を操作して、弾倉を取り出すと、まだ6発ほど残っているのをアルフレッドに見せる。
「すごいですね。
「アルも、やってみるといいよ」
リカードは、弾倉を元に戻して、
「ここを手前に引くと、新しい弾が装填される」
リカードの説明に従って、アルフレッドは銃身の根本付近についているレバーを引いて、元に戻す。『ガシャン』という音とともに、空薬莢が排出されて地面に落ちる。
「そう、それで次の弾も装填されているはずだ」
アルフレッドは頷くと
「すごい」
アルフレッドは、再び銃身の根本付近についているレバーを引いた。
『ガシャン』『タァーン』
リズムよく、その音が数回、射撃場に響いた。
「リカード様、ありがとうございます。この
「ああ、気に入ってくれて何よりだ。それはアルにあげるから、好きに使ってくれ」
「ありがごうございます」
改めて、アルフレッドはリカードに頭を下げた。
ちょうどその時、射撃場の入り口に、オズワルトが現れた。
「ルーファス様とカルロス様がお見えになりました。訓練場でお待ち頂いております」
「ありがとう。オズワルト。さて、アル。訓練場に行こうか」
そう言って、リカードは射撃場を後にした。
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