第12話.招集
イーリスがジリンガムの街に入った時より、少し時間は
カテリーナが
リカードの執務室には入りきらない人数のためか、集められたのは屋敷の
今、リカードの前に集まっているのは八人。
まず、リカードの
その隣に立つのはダニエル・バートン。
続いて、ラルフとダニーと共にS級のパーティを組んでいたのが2人。魔法師のココ・プレストンと治癒師のエミリア。
ココは、その
リカードは数年前まで、この四人と共に傭兵として国内外を旅している。その頃の
だから、この四人のことをリカードは誰よりも信頼していたし、父に代わって領地を治めるようになった今でも、常にそばに置いている。
その四人の後ろに並ぶ者たちの中で、
ルーファスの隣に居るのは魔法剣士のカルロス・ジャリエ。剣と魔法の両方を使いこなすという器用な戦い方をする。そして、彼はルーファスと一緒に任務に当たることが多い。
その隣がジャン・フーリエ。彼もルーファスと組んで任務に当たることが多い。自称、正統派の剣士を名乗っていて、片手剣一本で数々の武功をあげてきた。
そして、最後の八人目がアルフレッドだった。他の七人に比べれば年齢も若く、リカードのもとであげた実績もほとんどない。
ここに来た時に、他の顔ぶれを見て自分がなぜ呼ばれたのか分からなかった。
「皆はもう聞いていると思うが、昨日オーティス家のカテリーナ嬢が魔女イーリスの魔導具により身体を乗っ取られ、行方をくらませた」
リカードは全員の顔を見渡しながら、ゆっくりと話始めた。
「そちらの
その話はそれで済んだと言わんばかりに、リカードは続きを話し始める。集められた一同も、特に質問は
「だが、それとは別の問題が発生した。これは、そこに居るアルフレッドからの情報だが、湖に沈んでいた街の中に魔女イーリスと関係のありそうな屋敷を見つけたらしい。そして、そこには、イーリスゆかりの魔導具が眠っているとのことだ」
「それって、ミズリーノ湖の底に沈む旧魔法文明時代の街の?」
聞いたのはココ・プレストン。魔法師なだけに、イーリスには興味があるのか。もしくは、旧魔法文明の遺跡に詳しいか。いずれにしても、興味のある視線をリカードに注いでいる。
「ああ、そうだ。アルの話によれば、その旧魔法文明時代の街が、湖の水面に姿を現したらしい」
「まあ。そんなことが」
ココは
「そんなわけで、その屋敷から魔導具を回収してきてほしい。カテリーナ嬢の失踪も、イーリスの魔導具が原因だし、放っておくのは危険だからね」
「なんだ、そんなことか。ずいぶんと簡単そうな任務じゃいないか?」
一同を代表して、ランドルフが反応した。主従関係だと言うのにずいぶんと気安い口調なのは、今ここに今ここに集められている者たちは全員、
「まあ、それほど簡単な話じゃないんだけどね。とりあえず、話を先に進めるよ」
リカードも、ランドルフの気安い口調には、まったく気にする素振りも見せない。
「アルの話によれば、その屋敷は何百年も湖の底に沈んでいたというのに、まったくその影響を受けていないらしい。屋敷の中は当時のままと言っても
「すばらしい。すばらしいわ。さすが魔女イーリス」
感心というよりは、
それだけ、彼女にとってイーリスの残した研究成果や魔導具の存在が大きいのだろう。実のところ、リカードやアルフレッドも同意見なのだが、今はそれを表に出すと話がそれるので、そこには
「うん。そのすばらしい魔女イーリスの魔導具が、剥き出しで放置されている状態なんだ。第二のカテリーナ嬢を出さないためにも、早急に回収してほしい」
「分かったけど、今の話のどこに簡単じゃない要素があったんだ?魔導具の回収だけなら、俺たちがわざわざ行かなくても良さそうなもんだが。何か他に理由があるんじゃないか?」
ランドルフはリカードに確認するような視線を向ける。
「ああ、ここからが面倒な話だ。どうやら、この件、魔族が関与している可能性がある」
魔族という単語を聞いたとたん、その場の空気が一気に緊張するのがアルフレッドにも分かった。ランドルフ達の表情がにわかに硬くなり、同時に張り詰めた空気がピリピリとアルフレッドの肌を刺した。
「魔族とは、またやっかいな。これだけの
「まだ、魔族の関与が決まったわけではないんだが、どうにもきな
「それで、どうして魔族が絡んでいると思ったんだ?」
ランドルフの疑問に、リカードは昨日アルフレッドから聞いた話をする。
「シーサーペントに、魔物の急激な増加か。確かに可能性はありそうだな。なあアル。実際に魔族を見たわけでも、その痕跡を見つけたわけでも無いんだな?」
後半は、後ろにいるアルフレッドに向けたものだ。アルフレッドはふるふると首を横に振った。
「なるほどな。まあ行ってみるしかないってこったな」
ランドルフは気安く言うが、その目はまだ真剣な色を浮かべていた。ただ、その
「案内はアル、
「かしこまりました」
「任せておけ」
アルフレッドは、畏まってリカードに頭を下げる。一方、ランドルフは気安い感じで返事を返した。他のメンバーもランドルフに続いて頷いている。
「アル、案内頼むぜ」
緊張した面持ちのアルフレッドの背中を叩いてそう言ったのは、カルロスだった。それを皮切りに、そこにいるメンバーは次々とアルフレッドに声をかけていく。
アルフレッドの魔導具好きのせいか、リカードとは馬が合う。その為、身分は違えどリカードはアルフレッドをずいぶんと可愛がってきた。だから、アルフレッドは
「じゃ、みんな頼むよ。今回、僕は同行できないからね」
リカードは何か思うところがあるのか、少しだけ残念そうな
「
と軽口をたたくのは、やはり一番付き合いの長いランドルフだ。
「さっさと行って、リカード様に土産を持ち帰らなきゃな」
「楽しみに待っていてくださいね。リカード様」
ダニーとココがランドルフに続く。
その後も、しばらくリカードも交えて話をしていたが、やがて一同は、アルフレッドを先頭に湖の底にあった街に向けて出発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます