第3話.アルプトラム

 三人はがけから離れると、西側から回り込んで湖に向かった。


「そういえば、課題もクリアしなきゃだよね~」


「そうだな。領内りょうないの魔物討伐。ちょっと忘れてたけど、僕たちそのために来たんだよな」


 三人は並んで歩きながら湖へと続く道を進む。


「魔物討伐って、ノルマ一人十匹だっけ~?」


「そそ。どんな魔物でもいいから討伐して、その魔石ませきを10個持ち帰ること。それが課題の条件ね」


「おっ、さすがは優等生のリリィだな」


 何の迷いも無くすらすらと課題の内容が出てくるリリアーナを見て、アルフレッドが茶化ちゃかす。


「もう、優等生って言わないでよ」


 リリアーナは顔を赤らめる。それが怒っているからなのか、恥ずかしさからきているのか分からないが、たぶん後者だろう。


「ごめん、ごめん。でも、リリィが居るとほんと助かるよ」


「課題の内容くらい覚えておきなさいよね。そんなに難しいことじゃないんだから」


 言葉とは裏腹うらはらに、リリアーナは照れくさそうに頬を染めた。


「それはそうと、アル。その手に持っているのは何?」


 恥ずかしさに耐えかねたのかリリアーナは話題を変えようと、さきほどからアルフレッドが手にしているものをして言った。


 それは、30センチほどの長いつつに、後ろの方が持ち手のように曲がっていて、滑り止めなのか皮のグリップが巻かれている。リリアーナの記憶には無いもので何なのか気になったのだ。


「ああ、これね。これは単発式大口径魔銃たんぱつしきだいこうけいまじゅう、通称アルプトラムと言って、リカード様から頂いた魔導具だよ」


 アルフレッドは、そう言うと魔銃アルプトラムを良く見えるようにかかげて見せた。


「ふーん。リカード様から、また変な玩具おもちゃを貰って来たのね。それで、それはどうやって使うの?」


「まあ、見てなよ」


 アルフレッドはそう言うと、魔銃アルプトラム銃身じゅうしんの付け辺りを動かす。


 すると、カチッという音がして銃身の付け根が二つに折れる。そこには穴があり、ポケットから銃弾を取り出すとその穴に詰めた。


 銃弾はちょうどいい大きさで、その穴にすっぽりと埋まる。


 手首のスナップをかせて銃身を起こすと、ジャキンという小気味こきみいい音がして銃身が元に戻る。


「ちょっと大きな音がするから耳をふさいでいた方がいいかもしれない」


 そう言うと、アルフレッドは右手に魔銃アルプトラムかまえる。狙うのは、20メートルほど離れたところにある木の幹だ。


 左右を見てリリアーナとカテリーナが耳をおおっているのを確認すると、ゆっくりと引き金を引いた。


 その瞬間、周囲にダァーンという大きな音が響き渡る。


 あまりの音の大きさにリリアーナとカテリーナが驚いて体を震わせ、近くの木々から一斉に鳥たちが飛び立つ。


 狙った木の幹には10センチほどの大きな穴が空いていて、魔銃アルプトラムの威力を物語っている。


「うわぁ。びっくりした。まだ耳がキーンってしてるよ~」


 驚きに目を丸くするカテリーナ。その視線は、魔銃アルプトラムと木の幹に交互に注がれている。


「威力もすごいわね。木の幹にあんな穴があくくらいだから、ちょっとした中級魔法よりも強いかもしれないわね」


 リリアーナも木の幹を見ながら感心したように感想を漏らした。


「うんうん。そうだろう」


 自慢げにそう言って、魔銃アルプトラムかかげて見せる。


 その後もアルフレッドは、楽しそうに魔銃アルプトラムの仕組みなどを二人に話しながら湖へと向かった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る