お祈り

白川津 中々

 慎重に選考を進めさせていただきましたが、残念ながらご希望に沿えない結果となりました。



 目を閉じる。心臓が抉られるような思いがする。お祈りメールは何度読んでも慣れない。

 もう何年フリーターを続けただろうか。覚えていないし、数える気も失せる。好きでやっているわけではない。単純に受け入れ先がないのだ。俺のようなできそこないは普通に働く事もできやしない。学生と同じ給料で誰にでもできる仕事をやるだけの、人間の形をした機械だ。

 いっそ開き直ってこのまま生きていければいいのと思う。自分の中のくだらないプライドが、邪魔をする。こんなはずじゃない。もっといい生活ができる。不当な扱いを受けている。根拠のない反骨が頭に響き始めたのはいつからだったか。これもまた、覚えていない。

 

 これまで何通も、何通も見てきた、企業からの拒絶の返事。その度は俺は否定され、人生を終わらせたくなってきた。社会に馴染めない欠落者としての判を捺され、生命そのものを否定されたように思うのだ。

 この想像はあながち間違っていない。人にできる事ができない。人と同じようになれない。それは、社会的な欠落を意味する。つまるところ人間未満。人として生まれたはずなのに人間として劣っているのだからその命に価値などなく、迫害されるのも道理だろう。だが、それが許されないのもまた、社会なのだ。俺は一個の命として生きる事を義務付けられ、働く事を強要されている。如何に欠落者であっても生まれたからには生きねばならず、生きるためには労働せねばならない。その労働に格差がる。俺は、人以下の俺には、金も自由もない、奴隷が従ずるような仕事しか与えられない。


 どうしてこうなったのだろう。誰も答えてはくれない。どうして俺なのだろう。誰も答えてはくれない。俺は一人だ。俺の周りには誰もいない。仕事を命じる人間と、同じく命じられる人間がいるだけ。嘲笑されながら、俺は孤独を強いられている。

 

 死にたいと願う。

 けれど、死ねない。死は怖い。永遠の闇が恐ろしい。想像すると震える。生きていてこれだけ苦しいのに、死さえ救いにならない。生きて、奴隷になるしかない。苦しむしかない。辛い。どうして生まれたのだろう。生まれてしまったのだろう。生まれてこなければ、最初から闇の中だったら、こんなにも苦しく、恐ろしい思いはしなかったのに。


 人並みに生きたい。温かい部屋で眠りたい。美味しいものが食べたい。結婚がしたい。自分の子供を抱きたい。どれもこれも、叶わない夢。人以下の俺には、どれもこれも、許されない。


 

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お祈り 白川津 中々 @taka1212384

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